建築弁護士・豆蔵つれづれ

一級建築士・弁護士・豆蔵自身の3つの目線で、近頃の建物まわりネタを語ります。

駆け込み民法改正対策

2020年03月11日 | 法制度

建築弁護士の豆蔵です。

新型コロナウィルス対策でイベント・会合のほとんどが中止になる中、民法改正セミナーは意外なほどに無事、開催していただいており、改正直前の時期ならではの空気を感じます。
(もちろん参加者数は想定より激減していると思いますが)

民法改正の注目度は非常に高く、既にあちこちのセミナーをハシゴして、今回が何回目、という方もいらっしゃるほど。

建築関係では請負の話が中心となりますが、法律の細かい話を聞くのはなかなかツライらしく、こちらも、どの塩梅でお話をするのがよいか、毎回悩むところです。

法律の話は基本的な枠組みをシンプルに、あとは具体例をたくさん盛り込んで、眠気防止対策を図っています。

 

さて、表題の駆け込み対策について。

とりあえず民間連合や中建審などの標準約款を使っていれば、民法改正に合わせた改定版を使うということで、慌てなくてよいでしょう。

契約書は元請から提示される、という下請の会社さんにとっても、HPで公開されている約款の変更点はとても参考になります。

オリジナルの約款を使用している場合も、もちろん改正に合わせて改定するのが望ましいですが、契約の条項が民法に優先することからすれば、とりあえず古い約款でしのぐという判断もあり得るところです。

 

問題は、慣習として発注書・発注請書だけの契約が横行していて、又は契約書そのものがなく、細かい事項が何も決まっていないうような場合。

改正の影響を直接受けることになります。

特に、瑕疵担保期間が、契約不適合責任の消滅時効(引渡しから最長10年)に変わる点は、注意したいです。

 

一方、契約書・約款があれば安心、というものではありません。

結局のところ、契約で一番大事なのは、契約内容、つまり責任範囲を明らかにしておくことだと思うのです。

形式的な契約書はあっても、定型文言がやたら羅列されているばかりで、個別契約で意味のある事項が何もない、という契約が(大きな企業さんも含めて)非常に多い。

契約に適合するか否か(契約不適合責任)の基準となり得る具体的な事項を、設計図書の特記仕様書でも、業務委託書でも、見積条件でも何でも、明記しておい欲しいのです。

 

駆け込みで行うべき、かつ一般にあまり出来ていない民法改正の準備は、この点に尽きると思います。

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