建築弁護士・豆蔵つれづれ

一級建築士・弁護士・豆蔵自身の3つの目線で、近頃の建物まわりネタを語ります。

重層長屋の新しい規制について

2018年06月15日 | 法制度

建築弁護士の豆蔵です。
すっかり更新が滞っており、すみません。

最近の東京都の建築ニュースで気になったところ、重層長屋の新しい規制についてです。

現在、東京都のHPにて、「東京都安全条例に基づく長屋に係る建築基準等についての見直しの考え方(案)」というものに対するご意見募集が掲載されています。

東京都報道発表

長屋と共同住宅の違いは、建築物の部分(外ではない)に共用部分があるかどうかです。
現代版の長屋、特に重層長屋といわれる別の住戸が2階以上縦に積みあがるタイプのもの(⇔縦に積まないのがテラスハウス)は、実質的に、使用状況が共同住宅と変わりません。
ところが、長屋は、特殊建築物の規制を受けません。
防火・避難に関する制限が緩く、旗竿地(接道条件が悪い敷地の一種)であっても建てられる、目いっぱい容積・戸数を詰め込める、という特徴があります。
例えば、投資物件としては、非常に効率が良いのです。

都心の密集かつ狭小地には大規模重層長屋が続々と誕生し、近隣や確認申請をめぐるトラブル(最高裁平成211217日判決・新宿たぬきの森事件、確認の取消)も少なくありません。
個人的には、建築物の制限=私権の制限は過度であるべきではない、と考えていますが、
この種の開発については、市民の一人として、また、建築に関わる一人として、ストレートに胸が痛むというのが正直なところです。

旗竿地における大規模長屋の規制は、既に平成24年より世田谷区で始まっていますが、敷地が300㎡未満や戸数14戸までは対象にならないなど、多くが規制にかかりません。
今回の安全条例改正(予定)も、同様に、中大規模なものの規制に止まります。
現在予定されている建築基準法改正によって、接道の規制を条例で上乗せできるようになりますが(例えば、3階建以上、行き止まり道路に接する150㎡超の長屋など)、規制の網をすり抜ける物件はまだまだ減らないのでしょう。

ご意見募集に寄せられた都民の声、きちんと聞いて欲しいですね。

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