そろそろ、麻衣ちゃんの話を書いてくれと、何人かに言われたので、書くことにする。私が心からおすすめするクラリネット奏者、佐々木麻衣子氏。今ライス大学の博士課程に在籍中。元気にしているらしい。
私が麻衣子と出会ったのは、私が大学3年、彼女が院2年生のときだ。学生オペラの打ち上げで、たまたま隣に座って、互いに自己紹介した。その晩、仲間の家で酔っ払いを介抱しながら、朝まで、二人で喋り続けた。たまたま、お互いの「好きな人」が、お互いの知り合いだったのだ。夜が明けたときには、もう10年も前から友達だったような気がしていた。
彼女に出会うまで、私は「クラリネット」について、「黒い、縦に構えて吹く笛」という以上の知識は、何もなかった。大体、オーボエとの違いも知らなかったし、オーケストラのどの辺にいるのか、考えたこともなかった。
ところが、我が家にクラリネットがあったのだ。父が何年か前に酔狂で買ったもので、ケースの中でずっと眠っていた。せっかくクラリネット吹きと友達になったのだ、ぜひ一度音を出してみよう。私は麻衣子に電話して、頼んだ。「クラリネットのつなげ方、教えて!」彼女は吹き出した。私は「組み立て方」と言うべきだったらしい。
数日後、私は意気揚々と楽器ケースを下げて、彼女の大学の練習室に行った。麻衣子は、なるべくキーに圧力をかけないようにして「組み立てる」方法を教えてくれ、マウスピースの歯が当たる部分に透明のシールを貼ってくれた。それから、薄いリードをぺろっと舐めて、楽器にくくりつけると、「はい、吹いてみ」と言った。私が息を入れると、非常にムーディーな、サックスの音が出た。
家に帰って、一人で少し楽器を触ってみた。管楽器を吹くのは、小中学校のリコーダー以来だ。指を離していくと、高い音が出る。大体同じようなものだろう。うちにあったクラリネットはB管だったので、私はまずB-dur(変ロ長調)の曲を吹いてみようと考えた。思いついたのは、チャイコフスキーのアンダンテ・カンタービレだった。
しばらくして、麻衣子が家に遊びに来たので、さっそくアンダンテ・カンタービレを吹いて見せた。数段吹いたところで、彼女は目をまん丸にして飛んできた。「それは、何?」「半押さえ。」私はリコーダーと同様、穴を半分押さえれば、半音が出せると信じていたのだ。「リコーダーとは違うの。クラリネットは、半押さえは、ないよ」麻衣子は、必死に笑いをこらえながら、告げた。私は納得した。「通りでうまく音が出ないと思ったよ」
そして、またしばらく吹いていると、またしても麻衣子が飛んでくる。「その指は?!」私は指が短いので、とりあえず届く指でキーを押していたのだが、どうやらぜんぜん違ったらしい。「っていうか、はじめて吹くのに、その選曲・・・。君らしいよ」彼女は、私の無謀さに笑いながら、運指表を置いて行った。結局自分で楽器を吹くことは、1ヶ月で挫折してしまったが、それ以来、私の人生にクラリネットの音色が響き始めたのである。
私が麻衣子と出会ったのは、私が大学3年、彼女が院2年生のときだ。学生オペラの打ち上げで、たまたま隣に座って、互いに自己紹介した。その晩、仲間の家で酔っ払いを介抱しながら、朝まで、二人で喋り続けた。たまたま、お互いの「好きな人」が、お互いの知り合いだったのだ。夜が明けたときには、もう10年も前から友達だったような気がしていた。
彼女に出会うまで、私は「クラリネット」について、「黒い、縦に構えて吹く笛」という以上の知識は、何もなかった。大体、オーボエとの違いも知らなかったし、オーケストラのどの辺にいるのか、考えたこともなかった。
ところが、我が家にクラリネットがあったのだ。父が何年か前に酔狂で買ったもので、ケースの中でずっと眠っていた。せっかくクラリネット吹きと友達になったのだ、ぜひ一度音を出してみよう。私は麻衣子に電話して、頼んだ。「クラリネットのつなげ方、教えて!」彼女は吹き出した。私は「組み立て方」と言うべきだったらしい。
数日後、私は意気揚々と楽器ケースを下げて、彼女の大学の練習室に行った。麻衣子は、なるべくキーに圧力をかけないようにして「組み立てる」方法を教えてくれ、マウスピースの歯が当たる部分に透明のシールを貼ってくれた。それから、薄いリードをぺろっと舐めて、楽器にくくりつけると、「はい、吹いてみ」と言った。私が息を入れると、非常にムーディーな、サックスの音が出た。
家に帰って、一人で少し楽器を触ってみた。管楽器を吹くのは、小中学校のリコーダー以来だ。指を離していくと、高い音が出る。大体同じようなものだろう。うちにあったクラリネットはB管だったので、私はまずB-dur(変ロ長調)の曲を吹いてみようと考えた。思いついたのは、チャイコフスキーのアンダンテ・カンタービレだった。
しばらくして、麻衣子が家に遊びに来たので、さっそくアンダンテ・カンタービレを吹いて見せた。数段吹いたところで、彼女は目をまん丸にして飛んできた。「それは、何?」「半押さえ。」私はリコーダーと同様、穴を半分押さえれば、半音が出せると信じていたのだ。「リコーダーとは違うの。クラリネットは、半押さえは、ないよ」麻衣子は、必死に笑いをこらえながら、告げた。私は納得した。「通りでうまく音が出ないと思ったよ」
そして、またしばらく吹いていると、またしても麻衣子が飛んでくる。「その指は?!」私は指が短いので、とりあえず届く指でキーを押していたのだが、どうやらぜんぜん違ったらしい。「っていうか、はじめて吹くのに、その選曲・・・。君らしいよ」彼女は、私の無謀さに笑いながら、運指表を置いて行った。結局自分で楽器を吹くことは、1ヶ月で挫折してしまったが、それ以来、私の人生にクラリネットの音色が響き始めたのである。
まさか、オーボエとクラリネット区別もつかなかった牧菜から、数ヵ月後には「そのGの音低い」と鋭いご指摘をいただくとは思わなかったさ。(笑)
もうすぐアメリカに来てまる3年。加藤家とその仲間たちから得た教訓がとても役に立っています。みんなに会いたいよ~!