とっちーの「終わりなき旅」

出歩くことが好きで、趣味のマラソン、登山、スキーなどの話を中心にきままな呟きを載せられたらいいな。

「韓国人と日本人~その本質を探る~」呉 善花(オ・ソンファ)さん

2013-07-26 23:09:20 | 社会人大学
第6回目の社会人大学の講師は、初の外国人講師だ。講師の呉善花さんは、韓国済州島生まれで、日本評論家、教員、言論家の肩書を持つ。大東文化大学(英語学専攻)卒業後、東京外国語大学地域研究研究科修士課程を修了。現在は、拓殖大学国際学部教授であり、韓国籍から日本に帰化した知日派でもある。

会場に到着し受付をすると事務局のT子さんが今日はいい話が聞けるよと、わざわざ言ってくれた。いままでそんなことを言われたことがなかったので、どんな話が聞けるかと大いに期待して席に着いた。講師席には、小柄だがきりっとした眼差しの美しい女性が座っていた。

事務局長の紹介のあと、呉善花さんの話が始まった。まず、日本語の発音が難しいという話から始まった。朝鮮語には濁音が元からなく、どうしてもうまく発音できないという。この為、自分の名前の日本語読みの「ご・ぜんか(呉善花)」を上手く発音できないので、朝鮮語読みのまま「オ・ソンファ」と名乗っているとのことだった。

今回の講演の主たる内容は、韓国人と日本人の本質を探るということで、いろいろ興味深い話が次から次と出てきて、飽きることがなかった。このところ韓国では、日本を過激に批判している様子が伝えられ、従軍慰安婦問題、竹島問題といたずらに対立を煽るような報道が絶えない。なぜそこまで、韓国人は日本人を嫌うのか理解できない部分も多かったが、今回の講演でかなり理解できたような気がする。

呉善花さんが来日して最初の一年は、日本人のおもてなし精神に支えられ日本は素晴らしい国だと思ったという。しかし、それは最初の一年だけで2~3年目になると、次第に日本人がおかしい、理解できないという思いにとらわれるようになったという。何故そういうふうに思うようになったのは、ほんの些細なことの積み重ねによる。例を挙げると、敬語の使い方が韓国とは違うという。韓国では、身内に対して敬語を使うが、日本では身内に対してはへりくだった言葉を使い、身内以外のものに敬語を使うというのが大きなカルチャーショックだったらしい。また、玄関から座敷に上がるとき韓国では、靴の向きはそのままだが、日本人はわざわざ靴の向きを外向きに変える。靴の向きを変えるということは、韓国では早く帰れという意味になるという。またご飯茶わんは、日本人は左手に持つが、韓国人は左手を使わない。鍋料理の時、日本では一人一人に取り皿を出すが、韓国では各自鍋に直接箸を出す。日本では、客人に割り箸を出すが、韓国ではそんなことはしない。等など、大した事でもないともいえるが、文化が違うということで“おかしい”“変だ”という気持ちが増幅され、耐えられない状況になっていったという。現在の韓国の日本嫌いの風潮は、この2~3年目の状況と同じだという。日本に3年いた韓国人は、これで日本が嫌いになって、韓国で日本批判を繰り返している人も多いという。しかし、彼女はそれを乗り越えると、逆にますます日本が好きになっていったという。つまり日本の文化の違いに慣れ、日本を理解できたからこそ改めて日本の良さを知り知日派として現在に至っているというわけだ。日韓のビジネスマンとの通訳・翻訳のアルバイトをしながら、東京外国語大学在学中に発表した滞日韓国人ホステスに関するルポルタージュ『スカートの風(チマパラム)』が話題を集めベストセラーにもなっていたのだ。

ただ、彼女の日本での活動の状況は、韓国では良く思われていないようだ。『スカートの風』が日本で評価されたのに対し、韓国では、呉善花は実在せず日本人がなりすましたのだという説が流れ、呉善花探しが行われたが実在することがわかりその話は立ち消えになった。2007年には、母の葬儀で母国に帰郷しようとしたところ、日本での「反韓国的な活動」が理由で韓国当局から入国禁止措置が取られたこともあったという。韓国では、彼女は親日派と呼ばれ、ほぼ売国奴と同じ意味で扱われているというから、韓国での日本嫌いは、異常なまでの盛り上がりなのだということを知って驚きを禁じ得ない。特に最近の安倍総理は韓国では軍国主義の権化であり、大手放送局や新聞社でも悪魔呼ばわりしているというのを聞き、唖然とする。確かに安倍総理の発言は、日本人でも軍国主義に傾斜している言動が見られ、先行き不安の要素はある。だが、ここまで他国の国家元首を悪魔とよびつけるようなことが国レベルで行われていたとは。今後の日韓関係の修復の難しさを際立たせているような気がした。

未だに、韓国は来日2~3年目の留学生レベルの認識でしかないのである。韓国人もそうだが、日本人もお互いの文化の違いを認識し、相互に理解を深める事をしなければ、いつまでたっても関係改善は望めないだろう。そんな中で、韓国と日本のそれぞれを知り尽くした呉善花さんのような人の存在は大きい。今までにも、何冊も日本人研究の本を出されているそうだが、後半の話では日本の素晴らしさを大いに取り上げてくれた。

いま世界で一番注目されているのは、「日本人」というブランドだという。中国人も韓国人も表向きは日本を嫌っているが、日本のモノは大いに売れているのである。化粧品、酒、和牛、カラオケ、アニメ等枚挙にいとまない。安くて大量にある中国製品、韓国製品よりも高くても精巧で緻密にできている日本製品は金持ちの間では飛ぶように売れているのだ。このようなものを作れるのは、世界において日本だけしかない。日本人はサービス精神に適し、秩序が保たれている(東日本大震災時の日本人の秩序ある行動は外国人には信じられないのだ。略奪、暴動があって当たり前な出来事なのだ)、日本人はモノに魂を吹き込むといった事が、日本人の特徴であり、出来上がったものはどれも外国人は真似できないものばかりなのだ。

日本は、山紫水明の国であり、海や山、森、沢、湖、川等ちょっと移動するだけで美しい自然が至る所にある。そして、あらゆるものに神が宿り畏敬の念を与えるものが多いということが、世界にも比類ない民族が出来上がった所以ではないだろうか。大きな山や、巨石、古木にも神が宿り敬うという精神が、受け身の思想を導き、和を重んじる国民性が生まれたのではないかという説も納得できる。

これほど韓国の人から日本の良さを挙げれらと、いささかこそばゆい気持ちになるが、改めて日本の良さを教えてもらったことはとてもいいことだった。やはり、日本人は日本のことをもっと良く知っておく必要がある。外国人と接するときには、日本の文化や歴史について自信をもって話してほしいと事務局長が案内文に書いていたが、まさにその通りだ。そんなわけで、今回の講演は今までにも増して素晴らしい講演内容だった。いつもは、帰りに講師の本を買って帰る事はほとんどなかったが、今回だけはしっかり購入し、サインも頂いた。本の感想も、時間があったら記事にしてみたいと思っている。