迷宮入りの連続殺人事件に関わった男たちを描く。
「ゾディアック」とは結局なんだったのか?時代を巻き込んだ恐ろしく複雑怪奇なパズルのような現象であった、としか言いようが無い。
ある結論に達するとそれが「真ではない」という結果が出てしまう。そしてまた振り出しに戻る。メディアに事件が登場することによって捜査する側も犯人側もメディアを利用しようとする。困ったことに事件には関係のない第3者もそれに悪乗りしてしまうのだ。
したがって真犯人とそうでない人たちの共作による「ゾディアック」像がいつのまにか出来上がってしまう。多くの矛盾を含んだ犯人像がそうやって出来ていく。あるいは複数犯を単独犯と錯誤することから生じる矛盾なのかもしれない。
事件に人生を狂わされた記者、刑事、そして最後まで喰らいついていた新聞社の風刺漫画家をじっくり描く作風は、これまでのフィンチャー作品とは趣が違うものの堪能できた。