my favorite things

絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

太鼓の音・太古の音

2006-04-06 15:39:56 | 好きな絵本

 1月だったか、2月だったかの「絵本カレンダー」で、知って以来、この本が
ずっと気になっていました。表紙の絵にとても惹きつけられたのです。
アフリカの音


『アフリカの音』 

 沢田としき・作

 


 これを本の表紙ではなく、1枚の絵としてみていると、LPレコードのジャケットのように
見えてきませんか?全体の縦横の比率や、レイアウト、日本語と英語のバランスの
取り方などのせいかもしれませんが、とても完成されていると思います。
この絵を見ているだけで、澄んだ空の向こうから、太鼓の音が聞こえてきそうな気がします。

 表紙、見開きの次に出てくる「扉」。そこに描かれた絵が、またいいのです。 
ろばがひく、簡単な作りの荷車の台に、赤い帽子をかぶった男が座り、そばには、
その荷台にゆるく肘を乗せている、オレンジ色のシャツを着た男が立っています。
左側に描かれた木の下には、白い服の男と少年が一人。誰の表情もはっきりとは見えませんが、
静かな語らいと、ゆっくりとした時間の流れが感じられる絵です。
気持ちは「レコードジャケット」から、今度は「映画」に移っていきます。期待をこめて
見つめるスクリーン上に、今タイトルが現われたような、そんな錯覚を覚えます。 

 すっかり絵に魅せられてしまいましたが、遠い遠い昔から、アフリカの地でジンベと
呼ばれる太鼓とともに生きてきた人たちのお話を語るには、これくらい力強く
「語りかけてくる」絵が必要だったのだと思います。 
 西アフリカに暮らす人たち(バンバラ族、マリンケ族、スス族など)は、生活や人生の
あらゆる場面で、ジンベを演奏し、その周りで踊ることで、収穫、結婚、誕生を祝い、
時には自然や祖先、魂や精霊の世界とコミュニケーションを図り、結びついてきたそうです。  

 私は、話の始まりの、この部分がとても好きです。  

   かわいた風にのり
   どこからか   
   タイコの音が   
   きこえてくる   

   木をくりぬいて   
   作られた タイコには   
   一頭のヤギの皮が   
   はられている   

   ヤギは死んで 皮をのこし    
    音になって また生きる 

 
生身の生は終わろうとも、また別のものに変わって生きていく。音を生み出す器となって、
いつまでも生が継がれていくところに打たれます。(モンゴルでも、スーホがかわいがっていた
馬から馬頭琴を作り、そしてその音が人々の心をとても潤しました)  

 繰り返しの中で、多くのことが受け継がれ、人の血も受け継がれていきます。
目を閉じると。太古の時より吹いてきた風に髪をなびかせ、乾いたタイコの音に心を乱され、
早く踊りだしたくてたまらない両足をなだめている、自分の姿が見えるような気がします。 
 人間のルーツがアフリカにあるからなのか、それとも、リズムを刻み続ける私の鼓動が、
タイコの音に重なるからなのでしょうか。 



 作者の沢田としきさんは、今年の4月号より、福音館書店の「おおきなポケット」
表紙絵を担当されています。和田誠さんの描く表紙が大好きだったので、はじめは
がっかりしたのですが、新たな趣向が凝らされていることを知り、それからは沢田さんの
表紙がとても楽しみになりました。 
 表紙には楽器を持っている動物の絵。裏表紙にはその楽器の音が記されているのです。
5月号はアルプスの谷間の村(?)で、キリンがアルプホルンという楽器を吹いている絵でした。
沢田さんの表紙。沢田さんの絵本。これからも注目していきたいです。     


コメント (4)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« そのドアを開けるまで | トップ | うつくしいとおもえるこころ »
最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
太鼓の音 (はらぺーにょ)
2006-04-06 16:53:07
rucaさん、私もこの絵本を読んだ時は、

本当に太鼓の音が聞こえてきそうな

力強いエネルギーを感じました。

文も絵もとても素晴らしいですよね。

そうそう、4月から『おおきなポケット』を

購読してみようと思って、福音館の注文用紙を

いつも持ち歩いているのに、結局まだ注文して

ないのですよ。

表紙が沢さんなんですねえ。気になります。



返信する
とんとん・・・ (ぱたぽん)
2006-04-06 23:20:30
って太鼓の音が聴こえてきそうですね。

私、沢さんの絵、好きです。

本当にレコードかCDのジャケットみたいですよね

・・・ということは、こういうレイアウトにすれば、そのように見えるということですよね!

 なにかの本でありませんでした?

  とんとんぱっとん とんぱっとん 

  それでも・・・なんとかかんとか・・・

 すごく印象に残っているのに、全文が思い出せません。

 ドアの開け方、、、息子たちは大丈夫か不安になってきましたよ
返信する
はらぺーにょさんへ (ruca)
2006-04-10 16:09:36
こんにちは。はらぺーにょさんのところは新学期、始まりましたか?わたしのところは、今日からでした。あいにくの曇り空ですが、娘は2年生の時と仲良しとまた同じクラスになれたので、喜んでいます。



おおきなポケット。娘が2年生になった時から購読しはじめ、今年で3年目に入りました。和田誠さんの表紙でなくなったのをきっかけにやめようかなあとも思いましたが、娘に聞くと「まだ読みたい」と言うし。それに連載ものの行方も気になるし、で、もうしばらく続けてみるつもりです。沢田さんの表紙の「ひみつ」も知ってしまったので、また新たな楽しみも増えたことだし。
返信する
ぱたぽんさんへ (ruca)
2006-04-10 16:17:18
こんにちは。お返事遅くなりました。



ぱたぽんさんが気になっているという本・・なんのことを指しているのか、ちっともわからないのですが~。ごめんなさい。ある日、「あっ」と気がつくかもしれませんが、もしそれより前にわかったら、教えて下さい。



物語のドアを開けるかどうか、そのドアの向こうで楽しめるのかどうか・・ほんとに心配になりますよね。

でも、ぱたぽんさんのところの双子さんは絶対大丈夫だと思います。だって、あんなふうな絵やマンガが描けるのですもの。それって、もう「物語」の世界を自分で作っているってことですよ。安心してOKだと思います。それにしても、すっごく絵が上手・・というかおもしろいですよね。
返信する

コメントを投稿

好きな絵本」カテゴリの最新記事