my favorite things

絵本の話を中心に、好きなもの、想うことなど。

さようなら、中央図書館

2006-04-04 17:32:27 | 日々のこと

 東京近郊のこのあたりでは、ちょうど今、桜の花が満開です。

 この時期は年度が変わることもあり、別れと出会いの季節でもありますよね。今頃に合わせて開く桜の花は、もうタイミングが良過ぎるというか、桜以上に、この季節にふさわしい花があるかしら、と思ってしまいます。うちの娘は新4年生なので、ちょうど小学校生活の折り返し。いましばらくは、「大きな別れ」とは縁がなく、穏やかな気持ちで、ただ桜を楽しむことができそうです。


 3月31日でお別れだったのは、私が子どもの頃より親しんできた「K市立中央図書館」。うちから歩いて5分程のところにあり、とても便利でした。K市の再開発事業で、駅から直結の施設に「新中央図書館」が出来る事になり、おそらく建物も老朽化しているため、従来の図書館を移すことが決ったのだと思います。駅からすぐなので、通学通勤をしている方には便利だし、2フロアを使うので、今よりずっと大きく、使い勝手もいいことでしょう。けれど、私の中では、図書館という言葉は、=ここの中央図書館だったので、移転並びに閉鎖が決ったことは、とても淋しく残念なことです。

 初めて図書館に行ったのは、いつだったでしょう。
 たぶん、小学校の3年生くらいの時だったと思います。友だち3人と遊んでいたら雨に降られ、その雨宿りのために入ったのが最初だったような・・・。(その時の印象が強いので、それ以前を忘れているのかもしれませんが)児童用の閲覧室の椅子に座って、濡れた靴下を脱ぎながら「図書館で、こんなことしていていいのかな」と思ったことを、よく覚えています。

 雨と言えば・・・
 中央図書館は、2方向からの階段を昇った2階にあり、長い間、入口のすぐ横が喫煙スペースになっていました。雨の日に階段を昇っていくと、煙草を吸っている人の、その煙が、紫に薄くたなびいているのが見え、「煙草の煙は紫色」ということと「雨の日には煙がよく見える」の2つを、ここで知りました。(だから、煙草を吸うのなら雨の日がいい、と10代の私は思ったものでした)

 私がここへ「通って」いたのは、大学生の時でした。時間が、いつの時よりも余っていたのでしょうね。大きな書棚の部屋の壁沿いにある机に座り、ブラインドの隙間から時折外を眺めながら、いつまでも本を広げて座っていました。
 ある時、(それは本当にあったことなのか、それとも夢で見たことなのか、今ではどちらなのか自分でもわかりませんが)窓からの一陣の風で、書棚の本の紐のしおりが、いっせいにはたはたと揺れ動いたことがありました。書棚は上から下まで何段あって、何冊の本が、その窓からの風の範囲にあったのかは知りませんが、それはとてもきれいな眺めでした。水槽の中で泳ぐ金魚が、その尾を振りながら自由きままに泳いでいるような、そんな美しさがそこにはあったように、思います。

 そんな大学時代を終えてしばらくの間、K市を離れていたせいで、図書館へ行くこともなくなりました。しかし、かれこれ10年くらいを経て、再び図書館を訪れてみると、そこには、よく知っている「私の図書館」がありました。 

 
娘が生まれて、「だっこひも」でだっこして連れて行ったこと。歩けるようになって、親子3人、娘を真ん中にして歩いて行ったこと。(私が腕を精一杯伸ばして、娘も懸命に手を伸ばして、それでやっと手を繋げるくらい小さかったことを、よく覚えています)階段を、一段づつ、足を揃えて昇って行ったことなど、どれも懐かしい思い出です。


 最後に本を借りに行ったのは、3月29日でした。
 好きだった書棚の間を通り、次の図書館では、ここにある本がどんなふうに並べられるのか、その様子を思い浮かべてみました。ちょっと、友だちの新居を想像するような気持ちで。
 最終日の31日金曜日にも、時間があったら来てみよう、できればもっと長い時間を過ごしたい・・・いろいろ考えているうちに、月末の金曜日は慌しく過ぎ、気がつけばその週も終わっていました。でも、今はそれでよかったと思っています。

 「新中央図書館」のオープンは7月中旬の予定です。それまでは、自転車で(たぶん)20分の、駅向こうにある「Y図書館」まで通うつもりです。

コメント (8)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ちくちく【その5】 | トップ | そのドアを開けるまで »
最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (京女。)
2006-04-04 20:36:21
どんな施設でも、老朽化していても、自分の幼い頃から馴染んだ施設が取り壊されるのはとても寂しい気分がしますね。

まるで、自分の思い出も一緒になくなってしまうようで…。

これからは新中央図書館でたくさんの思い出を作ってください。。。

返信する
レトロ (まみいご)
2006-04-05 00:09:27
こんばんは♪

写真の雰囲気がとても レトロで・・・。

そんな図書館がなくなってしまうのは残念なですね・・・。

図書館が移転しても 建物は何かに生まれ変わってくれたらまた 楽しいのですけどね・・・^^

ところで・・・↓の上履き、体育館履き・・の記事。北海道もたいていは 上履き一足です。しかも 北海道の学校は 廊下もすべて建物の中 なので・・・(わかりにくかったらごめんなさい・・・)上履きは本当に室内履きの運動靴・・・というか・・・

以前 広島の方で主人の母校を訪れた時、

教室の引き戸が外からも見えて、

「え~~~!??教室でたら 外なの~~???」と叫んだ私です・・・(*/∇\*

気候によってこうも違うので本当に面白いですね♪
返信する
図書館の思い出 (くっちゃ寝)
2006-04-05 10:42:25
図書館って不思議な空間ですよね(春樹氏の小説ではありませんが)。

わたしの住む町では、図書館が3度引越ししました。

ちょうど結婚した頃新しいのが建って、夫婦で家族でよく通ったものです(雨の休日は家族で図書館通いでした)。



でも、私の思い出の図書館は大学の図書館かなあ。

ひとつの建物が全部図書館で1~5Fまでありました。

英米文学から歴史、美術書といろんな蔵書があって、空いた時間にそこで時間をつぶすのが好きでした。

何を読んだというわけでもなく、様々な本に囲まれている贅沢を味わっていたのでしょうね。

思い出して、とてもなつかしくなりました。



返信する
Unknown (まつかぜ)
2006-04-05 11:53:35
rucaさん、こんにちわ。

新しい図書館のどこかに、写真の看板(?)を置いて欲しいなぁと思ってしまいました。素敵ですよね。

『本当にあったことなのか、それとも夢で見たことなのか』のお話、なんだかミステリアスで、美しい情景ですね。繰り返し読んでいたら、まるで私も同じ情景を見ていたような錯覚が。。。

その一瞬がコマ送りの映像のように目に浮んできました。
返信する
京女。さんへ (ruca)
2006-04-06 18:48:30
こんばんは。コメントありがとうございます。

ずっとこの図書館に馴染んだいたので、どれくらい

「古く」なっていたのか、考えた事がありませんでした。

自分で「老朽化が進んで」と書いて始めて、そうだよね、

かれこれ40年近く経っているはずだから、とあらためて

思いました。床や壁は、補修をされているので、私が

子供の頃よりだいぶきれいになっていましたが、

たしかにトイレなどは‥昔のままでしたね。



新しい図書館で、新しい思い出。もう多感な時期も、

子育てママの時期も過ぎようとしているので(笑)、

どれだけの「思い出」ができるかわかりませんが。

あ。

あらたに出会うたくさんの本との、思い出ができますね。
返信する
まみいごさんへ (ruca)
2006-04-06 18:58:27
こんばんは。こちらでは、桜が散ろうとしているときに、北海道では(札幌だったかも)雪が降ったと聞きましたが…。

日本はほんとに縦長ですよね。



ご心配頂いた?図書館の建物自体は、なんということも

ない建物なのです。言われなければ、たぶん図書館だと

いうこともわからないような。



ところで、上履きの話。

ほんとに色々なんですね。うちのほうで言う「上履き」は

前にゴムがついていて、「体育館履き」はそれよりもちょっと

運動靴に近い感じなんです。あんまり差はないように

思うのですが。

廊下が外に直結している話は、「渡り廊下」(校舎と

校舎の間を結ぶ、あるいは校舎と体育館とか)のことかな

と推測しますが…。
返信する
くっちゃ寝さんへ (ruca)
2006-04-06 19:10:51
こんばんは。



>様々な本に囲まれている贅沢



そうなんですよ。まさに図書館の楽しさは、この一言に

凝縮されています!!

大学の図書館でその気持ちを味わっていたとは羨ましいです。

私の大学図書館は「書庫式?」だったので、多くの本を

好きに手にとったりすることも、その背文字を追うことも

できませんでした。



勉強したり、真剣に本を読んだりするよりも、何にもしないで、ただぼんやりしていたいですよね、図書館では。



新中央図書館がオープンした後には、家のPCから

予約や延長を申し込んだりできるように、ついに、

なるらしいので、そのあたりに期待しています。
返信する
まつかぜさんへ (ruca)
2006-04-06 19:18:38
こんばんは。



写真に撮った図書館の看板?は、階段の上についていて、

結構大きいものだったので、きっと保存も保管もされないと

思います。新しい図書館に飾られることも、もちろんない

でしょう。

でもね、あんまり寂しくないんです、看板に関しては。

私が子供の頃には、ついてなかったと思うのです。外から

見たら、あそこが図書館だってことがわからないような

図書館でしたから。それがいつの頃からか、ああいうのが

ついていて。たぶん、同じ時期に、K駅にも、ああいう

鋳物で作ったような「それらしい」看板がついたのだと

思います。そっちのほうもだいぶたってから気がついたの

ですが。



風になびく本の栞は、ほんとうに不思議な光景でした。

けど、よく考えてみると、書棚全部の本に栞がついて

いるはずもなく、まして、それが風にはたはたと

なびいたりは、きっとしないので、夢でも見たのでしょうね。

返信する

コメントを投稿

日々のこと」カテゴリの最新記事