映画を見ながら株式投資

今の時代に起きていることを正しく認識し、自分なりの先見の明を持つ。

アパートの鍵貸します

2010-02-25 00:03:17 | ★★★★★★★★★★
監督 ビリー・ワイルダー
キャスト ジャック・レモン、シャーリー・マクレーン、フレッド・マクマレイ、レイ・ウォルストン、ジャック・クラスチェン
1960年 アメリカ
ジャンル:コメディ

【あらすじ】
上役の情事の為に自分のアパートを貸しているしがない会社員バド。それもみんな出世のため。だが、人事部長がつれ込んできたエレベーターガールの女性フランは、バドの意中の人だった。出世か、それとも恋人か、最後にバドが選んだ答えとは……?

【感想】
洗練された脚本と演出に脱帽するしかありません。熟練した職人技の域に達している。

セットから役者達の会話、しぐさの一つ一つに至るまで細部にまで注意が払われていて綿密である。シナリオ上、さほど重要ではないと思われる部分に対しても手が加えられていて意味があるのがわかる。

主人公バクスターがニューヨークの労働者の数を一の桁まで正確に記憶していることをオープニングで紹介するので几帳面な性格であることがわかります。これは終盤においてもどんなに急いでいてもエレベーターに乗る前にきちんと帽子を取るという些細な演出につながっています。またテレビをつけて名画を見ようとするとCMが入って思わずチャンネル変えてしまうのも性格なのでしょう。一見すると何もない光景の中にも細かい演出が数えたらきりがないほど詰まっている。一度きりの鑑賞では全てを理解できないと思う。

ビリー・ワイルダーお得意の小道具の使い方も健在です。ラケットでパスタの水切りをするシーンはビリー・ワイルダー以外の映画監督だったら失笑物になってしまうことでしょう。

役者ではシャーリー・マクレーンの掴み所のない性格がいいですね。バクスターが新調した帽子を被った姿をフランに「似合う?」と尋ねた時の彼女のそっけない表情が忘れなれない。これも大して重要な場面ではないのですが・・・。おかげでバクスターは出世目当てであっても、どこか憎めない、不憫な人という印象が強かったです。

ラストの急展開は少女漫画的で批判もあるようだが、これこそが魅力なのだと思う。私はこの部分が一番好きです。物語の最後におけるジェフとの会話の中でフランが土壇場でバクスターの気持ちを察する。すると彼女は何の躊躇もなしにバクスターの元に向かう。少し鈍感なフランに対するそれまでのもどかしさを一気に開放してくれました。しかも再会した二人はお決まりのラブシーンではなく大の大人がトランプのゲームをして終わる。こんなラストの映画は観たことがないです。このトランプのゲームが何を意味しているのか?二人のこれからの関係は必ずしも順風満帆ではないのかもしれないと捉えることもできるでしょう。

ホテルに行けばいいじゃないかというレビューを見たことがあるが、そういう人は本作を語る資格はないです。あくまで洗練されたコメディであって現実社会における人間模様をリアルに描いた映画ではないです。評価する尺度を勘違いしている人が多いのは残念。文句なしに満点です。

お薦め度:★★★★★★★★★★

アパートの鍵貸します [DVD]

20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント

このアイテムの詳細を見る

最新の画像もっと見る