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わたしが明日殺されたら

2011年07月17日 09時22分06秒 | 人物伝、評伝 (自伝含)

フォージア・クーフィーの半生記。

フォージア・クーフィーはアフガニスタン次期大統領候補とされる女性。1975年アフガニスタン北部のバタフシャン州生まれ。父親には7人の妻がいて、子供は総勢23人、その19番目にあたる。生まれたとき女児であるため、炎天の屋外に放置され危うく死にかける。
 子供をそんな目に遭わせたことを母親は後悔し以後彼女の教育に熱をいれ、アフガニスタンの女性には極めて珍しい高等教育を施す。
 内戦により父や兄弟を殺され、タリバン支配下で夫も拉致拷問のすえ病におかされ、死亡。彼女自身も幾度も死地を潜り抜けてきた。
 2002年から2004年までユニセフで児童保護担当官として働く。2005年アフガニスタン国会の下院議員選挙に立候補して当選。下院副議長に就任した初めての女性となる。2006年にはアメリカにわたり、当時のファーストレディのローラ・ブッシュやコンドリーサ・ライス氏と会談。

今までに、イスラム教圏内で活動してゐる「団体」に関する本を読んだ。その団体とは世界から「テロリスト」と言はれてゐる団体で、ジハアドといふ考えを持ち、異教徒を追い出し攻撃することに力を注いでゐる。 そして、それらの本の主役は男性であり書き手も男性であつた。イスラム教では、「主役」となる男性である。

が、女性の考えで書いたものは見たことがなかつた。イスラム教と言ふと、女性はブルカといふ黒い布で全身を覆い、顔も目だけを出して隠し、親戚の男性を伴はないと外出も出来づ、選挙権や発言権も無く教育も望むやうに受けられない・・・といふイメエジがあつた。女性で顔を出してゐるイスラム教の人を観ると、その宗派の違ひが如何なるものなのか興味があつたが、本人にあれこれ訊くことはできづ、不思議な宗教だといふイメエジがあつた。

なので、この本を手にしたのは
 女性がイスラム教圏での生活をだう過ごしてゐるのか
 女性はイスラムの教えをだう捉えてゐるのか
がわかるのではないかと思つたからだ。

本書を読んで、いかにアフガニスタンに対して「誤つた」情報といふかイメエジが伝達されてゐるか・・・といふことであつた。

タリバン支配下に於いて、元の政府下で警官を勤めてゐた筆者の兄は逃亡を図る。しかし、タリバンは筆者の家に訊問に来て(その訊問のやうすも、かなり非人間的)、帰宅してきた夫をいきなり逮捕し連行する。その後、夫は3度ほど逮捕・拷問を受けることとなる。

 その他、タリバンは博物館の略奪アフガニスタンの歴史を反映する多くの遺物を破壊、バーミヤンの大仏を吹き飛ばす。
 次にタリバンは学校や大学を焼き、書物を燃やし、文学作品を発禁にした。一瞬のうちに、カブール市民が当然と思つてゐた生活の多くが失はれる。公共の場での結婚式も禁止し、結婚式が行なはれてゐる場に乗り込み、破壊行為と暴力行為に及ぶ。また、ブルカを着用せづにヘツドスカアフしかかぶつてゐない女性を殴つたり、白を着てゐる人々を殴つた。(白はタリバンの色とするため)

このやうすは「第Ⅱ部 戦う、生きる、生き抜く」(P133-226)に詳細が書かれてゐる。イスラムのイメエジがこのタリバンによつて、かなりゆがめられてゐることがわかつた。筆者は娘たちに手紙を書き、それを収録してゐるがその手紙で興味深い記述がある。 

「わたしたちの信仰は平和で、忍耐強く、愛情にあふれていて、人間すべてに権利や平等を認めるものなの。女性としてわかつていてほしいことがあるの。真のイスラムの教えはあなたたちに政治や社会についての権利を認めています。あなたたちには尊厳と自由が与えられているの。教育を受け、夢を追いかけ、自分なりの人生を生きる自由がね。イスラムの教えはまたあなたたちに、礼儀正しく、つつしみ深く、すべての人に親切にふるまうように求めていますけれど。この教えは地上の世界で正しく生きるための真の手引きなのよ。お母さんは自分をイスラム教徒と呼ぶことを誇らしく思います」(P147) 

ここを読んで、自分のイスラム教の知識がかなり間違つてをりイスラム圏で女性は卑下された存在ではないのか・・・・・と考えた。この人の兄たちも、この人が学校に行くことを反対してゐない。非イスラム教徒から見ると違和感を感ぢることが多いのだが、異教徒があれこれ口出しすることではないのだ、と思ふこととした。

そして別の手紙や筆者の体験でも表れてゐるが、アフガン女性の勇気がすごい。これは、イスラム教の大切な教えの一つ「だれであれ戸口にやってきた人を決して追い払ってはならない、なぜなら、あなた自身がいつ他人の戸口で慈悲を請うことになるかわからないからだ」(P164)に従つてゐることの表れなのだらうか? 筆者の兄がタリバンに追はれてゐたが、「顔見知り」の間柄でも匿ふことを承知する。

タリバンといふ人たちは、一体イスラムの教えの何を理解してゐるのだらう?と本書を読んで思つた。ただ、コーランとイスラムの教えを利用し「神の名」を利用してゐるだけではないのか?としか思へない。

この人の行動がタリバンの気に入らないため、タリバンは筆者を殺さうとしてゐる。今までにも攻撃や脅迫をしかけてゐる。しかし、この人は屈しない。本書の原書の題名は「Letters to  My Daughters」であるが、この人はきつと、いつ自分が死んでもいひやうに子供たちに学んでほしいこと、これからの生き方への道しるべの気持ちで書いたのだらう。この本はこの人の娘さんたちだけでなく、他の人たちの道しるべにもなると思ふ・・・ 



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