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抹殺された日本軍恤兵部(じゅつぺいぶ)の正体 この組織は何をし、なぜ忘れ去られたのか?

2019年08月12日 12時41分13秒 | 政治関連・評論・歴史・外交

押田 信子氏の著書。

押田氏は中央大学経済研究所客員研究員。出版社勤務を経てフリー編集者として活動。
専門はメディア史、歴史社会学、大東文化研究。

「はじめに」で説明して下さつてゐるのだが、「恤兵(じゅつぺい)」とは
国民から兵士慰問のための恤兵献金品を募集し、戦地に娯楽・嗜好品を送ったり
文化人、芸能人による慰問部隊を派遣するなど、戦争を後方で支え続けた
陸海軍の組織である。

そのやうな部署があつたのかと、今更ながら驚く(自分の無知、戦後教育で戦争=日本=悪
の構図ばかりの教育を行つてきた政府、さうした報道ばかり続けてゐるメディアにも)。

押田氏が書いてゐるやうにこの「恤兵」といふ漢字は「りっしんべんに血」といふあまり
美的ではない文字から、何か忌まわしい感情がつきまとふが実際は「兵士への慰問・献金」
を募ることだつた。

その歴史は大東亜戦争以前の、日清・日露戦争から始まつてゐたといふのも驚きだ。
さらに驚くのは、「恤兵」について賛同し献金・慰問袋などを軍に持つて行つてゐた
総額である。ものすごい金額が寄せられてゐる。戦時中に生活が苦しかつただらうに、
その一部か全部か不明だがそれを差し出してゐる国民と、さうするやうに「煽動してゐた
新聞」の存在にも驚く。

今、あれだけ反戦・日本悪を歴史捏造までして行つてゐる朝日新聞は戦時中に戦争を
散々煽つてゐたが、恤兵に関しても大きく美談として取り上げてゐる。(朝日だけでなく
読売・毎日等も)

そのやうすを見ると、毎年この時期になると捏造してまで日本悪、戦争はゐけないと
防衛と戦争をごっちゃにしてまで、日本批判を一斉に行つてゐるTV・新聞は絶対に
信用してはならないとまで思ふほどである。(SNSが出て以来、信用してゐないが)

毎年「戦争の反省」番組を行ひ、自分らが正義のやうなツラをしてゐるのであれば、
一度でいいから戦時中の自分達の記事を発表・検証し報道の在り方、国勢による世論・政府
の行動・心情の研究等を行ひ、自分達の反省を盛り込んだ内容を放送すべきであるが
戦時中の報道について取り上げた番組を見た事がない。

この本で当時の世間・新聞・芸能界の様子を知り、あざ笑ふ人もゐるかもしれない。
それくらい、今では「批判の対象としかならない」実情が描かれて居り、さうした時代があつた
のもまた、事実である。

第八章では「証言 恤兵で戦地に行つた私」として、内海 桂子師匠と中村メイコさんの
証言について記述されてゐる。内海桂子師匠はお子様、ご両親の生活もかかつてゐた。一方
中村 メイコさんは小学生で状況もよくわからない状態で母親と一緒に行つてゐる。
その年代の違ひから受けた印象や恤兵に対する考へ方も違つてゐるのだが、今日では
想像がしがたい時代である。押田氏が書いてゐる「桂子さん、メイコさん、このおふたりの
体験を、私たちは断じて、未来永劫、無駄にしてはいけないと考える」(P320)に
同感である。

「おわりに」で押田氏が書いてゐることに全く賛成である。
「『貧者』『同調圧力』『メディアの偏向報道』・・・あの恤兵が動員システムとして、
作動していた時代と、現代はよく似ていないだろうか。(中略)
システムにメディアの力が加わると、同調圧力が高まり、上からの強制に抵抗できなくなる
のは、過去の戦争が嫌というほど教えてくれる。(中略)我々は何をなすべきか、いや、
何をなさざるべきか。
そのためには過去を直視し、そこに現れている事象、言説を自ら検証し、進むべき道を選び
取るべきだと思う」(P326-327)