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潜入ルポ アマゾン・ドット・コム

2014年02月01日 16時47分21秒 | 社会・報道・警察・教育

横田 増生氏の著書。

横田氏は1965年福岡県生まれ。関西学院大学を卒業後予備校講師を経て米・アイオワ大学大学院に留学。ジャーナリズム学部を卒業。
93年に帰国後、物流業界紙で編集長を務める。著書に「アメリカ『対日感情』紀行」「フランスの子育てが日本より10倍楽な理由」など。

本書は2005年に単行本で出たものに加筆をし2010年に発刊された文庫版。

横田氏がジャーナリストの身分を隠して、しかし本名でアマゾンの物流センターにアルバイトとして潜入したルポ。 

中々興味深いものだつた。 2005年と言へば今から9年前であり、その頃の就業形態がどのやうなものだつたのか今覚えてゐないのだが、
現在では「当たり前」のやうな感覚にとらわれる「非正規雇用」の実体が文庫版の前半に書いてある。

低賃金・長時間労働、長くそこに勤めるといふ感覚を企業に持たず、いやなら辞める・・・突然辞めても誰も何も思はない・・・

そんな世界の集大成のやうなアマゾンの物流センターといふ感じを受ける。そこでは、若い人だけでなく年齢も結構いつてゐる人も働いてゐるやうだ。

数年前に、企業が派遣切りをして寮から退出し行くところがない人達が大勢ゐた。その中に40代、50代の人もゐたりして、それがかなり衝撃だつたのだがそのやうな人がこの物流センタアにもゐるらしい。 取材当時の時給は900円。しかし取材途中で時給が50円下がつてゐる事が新人アルバイトの契約書で明らかになる。 

このルポを読んでゐると、19世紀だかの白豪主義の植民地支配の思想をまざまざと感じる。植民地であれこれ搾取し、自分達は金を得てその還元を植民地にはしない、その白人思想がそのままアマゾンの物流センタアに表れてゐるやうに思ふ。 

会社の収益が上がらうと、アルバイト雇用にして(しかも契約期間が2か月更新)時給を低く設定してゐればかかる費用は抑える事ができる。しかし、アルバイトに対し管理はデータで行つてゐる。本の配送に携はつてゐる人間には、その人が1分間に何冊集荷したかのデータが表示される。目標値にあまり達しないと契約更新が無いといふわけなので、いやならすぐに辞めればいいし続ける状況であれば多少は頑張らないと続けることが難しい、といふことになる。

当初アルバイトに残業をさせてゐたが、残業代は時給の割増になる。それを避けるべく、2シフトにして残業代を発生させないやうにする・・・・等々、「会社の収益をいかに従業員に出さないか」を次々に実行していくアマゾンの思想は、全く植民地に来て現地人を酷使させた白人の思想を代表するものだ。

本書でも指摘があるが、その「米国思考」を90年代に経団連やらが絶賛して「企業が利益を生み出せる」として採用を始めた。その結果、「正社員としていい給金を得、福利厚生が整つてゐる会社に入社する」ことがまれになつてきた。「正規雇用」「非正規雇用」といふ壁を作りだし、わけのわからない格差社会になつてきた。

私は物を知らないなりに、これがどのやうな影響を生み出してきたのか考えてみた。

正規雇用の数を減らす会社が多くなり、非正規雇用の数を増やし会社の利益を上げやうとすると:

収入の格差が大きくなるわけだから、誰もがこれまでのやうに「値の張る物」を買へるわけではない。非正規雇用の人が増えれば増えるだけ、安いものが売れるやうになる。が、品質が悪いと売れない。安くていいものを作るにはだうしたらいいか?

コストを下げる事である。 それには、日用品などの製造は日本国内で製造すると割りが合はなくなつてくる。
工場を海外へ移転し、人件費の安い国で造る。 
日本国内の工場は閉鎖になる。 
失業者が増える。 失業しなくても、会社の出費を抑えるためにボオナスや残業代等を削る。
職があつても金が貯まらなくなつてくる。出費を抑える。
単価の高いものは買へないから景気は悪くなつてくる。デフレになる。
失業者が増えて、失業保険やらで社会福祉の出費が増える。 
景気が悪いから、税収も伸びない。
なのに社会福祉の出費が増える。
増税をしないと成り立たないと言ひだす財務省、議員。
増税を言ひだされてただでさえ出費が増えるから、余計に買ひ物をしなくなる。 
ますます金がまわらず景気が悪いまま、デフレから抜け出せない。

それが、ちょうど20年デフレの日本と重なるのである。

戦後、日本のこれまでの習慣や文化はすたれてきた。代りに米の食品やら思想やら風習やらが傾れ込んできた。 米の企業もたくさん入つてきた。つまり、「本国が利益を得るための白人思想」が入り込んできたのである。

結果、日本の労働者が非常な被害を受けてゐるのが現在ではないのか? 共働きで稼ぐ必要が出てきた。それにより、子供を育てる余裕もなくなつてきた。少子化になつてゐる。 託児所だのなんだの十分な用意が出来てゐないのに「女性の活用」と騒ぎ女性を外に出させやうとする議員。それでゐて少子化対策? ここまで考えてきて一体日本が何をしたいのか全くわからない。 

日本政府は、「日本を取戻す」とするならばまず「非正規雇用」「正規雇用」の部分からやり直して納税者がゆとりある暮らしを出来る方法を考える事が一番ぢゃないの? 植民地思考の企業など、日本に不要だらう。 

この一冊を読みながらこんな事を考えた・・・・