Kaorism

演劇・映画感想&稽古場・スタジオ日誌

潜水服は蝶の夢を見る

2008-03-31 02:15:37 | Weblog
芝居が終わって気分転換に観たかった映画をまず1本観て来ました。
これが思った以上にノックアウトされるすごい作品でした。
『潜水服は蝶の夢を見る』、フランス映画です。2008年度アカデミー賞監督賞他3部門ノミネート、ゴールデングローブ賞の監督賞と外国語映画賞受賞、カンヌでも監督賞他評価された作品なので、今更・・・感はあるんですが、あんまり感動したので。
 
 不思議なタイトルですが、作品を見るとその意味がよく解ります。
日本でも有名なファッション雑誌ELLE編集長のジャン=ドミニク・ボビーという実在の人物が脳梗塞で倒れ、その後不自由な身体になりつつも、言語療法士が考えた、彼の身体で唯一動く左目の瞬きを使ったコミュニケーション手段を使って書き上げた伝記を元にした作品です。

 何年か前に「海を飛ぶ夢」という、やはり全身麻痺で寝たきりになった実在の男性の人生を描いた秀作がありましたが、あれよりもこの作品の主人公は悲惨な状況に置かれています。意識があって明晰な理解力と記憶が残っているのは同じですが、ジャン=ドー(主人公の愛称)は喋る事ができません。動かせるのは左目のまぶたと目玉のみ。もし自分がこんな状況下に陥ったら・・・全く想像できません。自殺する事さえ出来ないそんな状況を、ジャン=ドーは潜水服に閉じ込められたと表現しています。自分の思いを伝えられなくなって初めて、妻や子供達にあまり構ってやれなかった事や、友人や愛人へ伝えてない言葉や、想いが洪水のように溢れて来る様子がユーモアを交えながら綴られています。

 監督のジュリアン・シュナーベルはアーティスト出身、そのおかげか、物凄く映像が綺麗なんです。綺麗といっても前半は主人公のぼやけた視力や、左目だけの視界のみでほとんど表現されていきます。あまり予備知識を入れないで観始めたのですが、この監督は天才だ!と思っちゃいました。映像の断片が繋がっていって段々にジャン=ドーの倒れる前後がわかっていく手腕は、アメリカの映画でも最近よくありましたが、何とも言えず穏やかで流れるようなフランスっぽい感じで新鮮でした。

 監督の構成力もさることながら、一番感動したのは、主人公の父親役のマックス・フォン・シドーの演技です。私なんかはついついマックス・フォン・シドーというと一番に『エクソシスト』を思い浮かべちゃいますが、今回は年老いた父親の威厳と不器用な愛情表現を目一杯なにげなく、でも信じられないほど的確に表現していました。観ながら涙が止まらない中、こんな演技がしたいんだよっ!と心の中で叫んでおりました・・・・この間の私の芝居を観てくれた先輩に「役者の想像力がたりない。これは戯曲を読んだほうが想像力が広がるな、と見てる側に思わせるような演技ではだめだ」と言われたのが、この映画を観て、しみじみ反省しました。この題材で、こんな撮り方の映画を作る凄さ、ほんのちょっとした息使いで心の痛みを感じさせる演技・・・こうじゃなくちゃあだめなんですね!


 主人公はかなりなプレイボーイ(まあELLEの編集長ですからもてるでしう・・・私も美容院で熱心にこの雑誌読んでます。自分では買えませんが)なのですが、まわりの女性が皆すごい美人なんです。特に病院関係者。言語療法士や理学療法士(こちらの女優さんはなんと監督の奥さんだそう)が綺麗なオネエサンたちで最初見分けがつかなくて困りました。主人公の奥さんも愛人も編集者もみんな美人、ハリウッド系ではない、年齢の中にあるしっとりした美人さんたちで、アップになったときの目じりのしわがとても素敵で、中年といえる年齢の女優さんをこんなに綺麗に撮って描けるのはフランス映画の持つ力だなと思いました。うらやまい・・・あんな風に撮られるならアップもコワくないかもしれません・・・(いや、素材がいいのか、やっぱり)

 映画でしか表現できない作品だと思います。そして映像や芸術性にばかり走ることなく、ちゃ~んとエンターティメント性もしっかり持った素敵な作品だと思います。この映像の美しさはぜひ映画館で観る事をお薦めします。

 大学生の頃、友人達とヌーヴェル・ヌーヴェルバーグの作品ばかり見まくっていた時期があるんですが、最近めっきりフランス映画を映画館で観る事が減っちゃいました。レオス・カラックスやリヴェットの作品は今でも好きですが、最近のオゾン監督とかは苦手で・・・いや、でも久しぶりにフランス映画の素晴らしい作品を観ました。観に行ってよかった。DVDも買っちゃうかもしれませんが、ちょっと重い題材なので早々見直すとは思えず・・・やっぱりまずは「パンズ・ラビリンス」を買おうっと。

 実はタイトルを「蝶は潜水服の夢を見る」だと覚えていて、一生懸命携帯サイトで上映情報を調べようとして「ないじゃん!終わってんの、もしかして?」と一人悪戦苦闘していたワタシです・・・

ミッドウィンター終了

2008-03-29 18:52:14 | Weblog
無事幕を閉じました。かれこれもう一週間前ですね・・・
毎回芝居が終わると、疲れと打上げの二日酔いでボッ~っとすること1日、地獄のように散らかった部屋を片付け、荷解き、洗濯などで1日、気分転換に1日と再生するのに少なくとも3日かかるんですが、今回は1週間かかりました・・・微妙に身体の具合が悪い気がするのを押して、ついつい年末やらなかった大掃除に手をつけ、よけい具合が悪くなり整体行って寝込みました。その後治って頑張ってジムに行ったら、また疲れてダウン・・・

 というわけで観に来て下さった皆様ありがとうございました。・・・というお礼が本当に遅れてゴメンナサイ・・・

 今回、自分の拙さを実感する難しい役でしたが、いい経験でした!今まで驕ってたり、諦めてたりした部分を見つめなおせたおかげで、何だか色々芝居に対して貪欲に向き合えそうな気がします。


 セットもなかなか好評でした。美術家岡田志乃嬢の布使いが面白いオレンジの舞台装置・・・欠点は皆オレンジになることです。手も衣裳も靴の裏も。でも衣裳は段々そのオレンジがいい感じに汚しになっていって、私は好きでした。お金をかければオレンジにならずにすんだんでしょうが、お金を掛けずにセンス良くセットを考えるって、すごく責任重大だと思います。セットってかなり芝居の印象を支えてますから、やっぱりあまりにショボイと観に行ってがっかりしちゃいます。主にセンスの問題なのではと思います。お金掛けたセットでも芝居がつまんないと腹が立ちますが、無駄にお金にモノを言わせたセットは更にむかっ腹がたちます。先日見た友人の企画公演ではトイレットペーパーを上手く芝居とからめて装置の一部に使っていて、へえ~と感心しました。センスがいいとチープな材料でもかえってかっこよくなると思います。今回はそんな事を感じさせる良いセットだったなあと思います。

 ちなみに今回の私の衣裳もお金かかってないですよ~。スカート、インナー、カーディガン、コート全部合わせて1350円也。よく行く古着屋さんの冬物処分セールでゲット。そういえば、『召命』の衣裳もここで買ったんだった・・・

 私は今回の役、いつもと雰囲気が違うとお客様何人かに言って頂きましたが、先日お会いした劇団の大先輩の女優さんに、「あの役の髪型すごく似合ってた。いつもああしたら?今日はワイルド(芝居のときは前髪と横の髪をあげてましたがこの日は何にも手を加えないパーマ頭でした)じゃない?あの髪型だと大人しく見えるから。ああしてなさいな」とにっこり言って頂きました。いや、こういう意見は以後ちゃんと取り入れようと思います。大人しく見えたほうがいいときは特に。いっそ前髪を作って、イメチェンしようかな・・・?
 髪型って印象随分変わりますからね。男性で言えばヒゲもそういう要素の一つですね。
 今回の芝居では戦争直後の設定で、男性陣はヒゲ面でした。私の相手役のトリちゃんは1週間の間に5回も職務質問を受けたそうです。昼間にです。・・・打上げ会場に来る途中も呼び止められたそうです。
 私は男性の長めの髪と無精ヒゲのセットがかなり好きです。なのでヴィゴ・モーティンセンが「ロード・オブ・ザ・リング」後、他の映画に出ていても全くキャ~とはなりません・・・(アラゴルンをやる前も全然でした、そう言えば・・・)レゴラス君はひげはなかったですが、金髪長髪でなくなるとドッと魅力が半減しますね。コマーシャルを見るたび思います。

 というわけなので、ワタクシしばらく大人しく見える髪形で生きてみようかと思っています。
 
 

初日

2008-03-22 12:41:52 | Weblog
昨日やっと初日が開いたと思ったらもう中日です。なにせ3日間しか本番ないので仕方ないですが。昨日は怒濤の幕開けでした。今回うちを含めて5作品連続上演なので、過密スケジュールの中仕込みをしてテクリハをしてゲネをして本番… 昨日私は初めて舞台上で頭が真っ白になって、ポッカリ半ページ位台詞とばしちゃいました。
今まで台詞ミスをしても真っ白になったことはなく、本番に強いと自分で思ってたのでショックでした。お客様にはばれなかったのですが、演出家には「冷や汗が出ました!」と言われました…終演後劇団の先輩達と飲んだ時に「そういう年になったんだよ」と言われてショックでしたが少し納得…まあ、私だけでなく皆普段間違えな
い台詞をミスったので何か魔物がいたのかもしれません。子役君に「皆稽古中間違えないとこばっかり間違えるからびっくりしました」と楽屋で言われてしまいました。今回彼が出演者の中で一番冷静です。転換も手伝い、暗闇で目が見えない私の介助もしてくれてます。稽古中は私達が台詞に詰まるとプロンプまで入れてくれました
。人の台詞を正確に聞き覚えていてびっくりです。いいなあ、若いって…

信じられないけど・・・

2008-03-19 00:16:25 | Weblog
明後日本番です・・・
今回は今までやった中で一番難しい役だと思う、と言ったら、「それ毎回言ってるよね」と夫に言われ、もっと時間が欲しいと言えば共演者に「今まで万全の調整でぴったり稽古に合わせて板の上に立った事ってあります?」と真顔で質問され、もうもうどうにもあがくしかない今日でした・・・

稽古期間中、私的に色々アクシデント続きでしたが、そんなのは言い訳にはなりません。後は明日の通しを全力でやるだけです。

今回は登場人物が少なく、皆出てないシーンは転換をやってプロンプをやるか、転換をやって次の場の準備をするかで忙しく、もうホームページ用に写真をとってる暇も余裕もありませんでした。

いいや!とりあえず本番にむけてガンバロウ!!!!

本番間近

2008-03-14 23:20:36 | Weblog
もうすぐ本番です、「ミッドウィンター」。
シアターχにて3月21、22、23日、金土は7時開演、日曜は2時開演です。全席自由席、3000円です。当日券もあります。

台詞がやっと入ったと思うのもつかの間、色々な仕掛けを試さなくてはならず、覚えたつもりの台詞もぽっかり飛んで行ってしまったり・・・
通し稽古中、台詞につまると、プロンプよりも早く、子役君が抜群の記憶力で、ボソッと台詞を呟いてくれます。いいなあ、若いって、脳の容量が沢山あって・・・

ノアちゃんがいない生活に少しづつ慣れてきました。
メルモはちょっと性格が変わってきて、前よりよくニャーニャー言うようになり、前よりちょっと甘えんぼになりました。(前から甘えんぼでしたが・・・)
最近凹む事が多い私の唯一のよりどころです・・・
明日は通し稽古2回!頑張らなくちゃ。


近況

2008-03-05 22:16:08 | Weblog
先週の水曜、2月27日に、飼い猫の一匹、黒猫のノアが亡くなりました。
全くの突然死でした。

朝、8時過ぎ、畳を引っかくような音で目が覚め、布団の足元を見ると、ノアちゃんが横たわり苦しそうにあえいでいました。慌てて抱き上げ人工呼吸をしてみたり、さすったりしたのですが、見る見るうちにぐったりとなってしまいました。
その日は教えている某養成所で指導している卒業公演の当日で、どうしても行かないわけには行かず、バスタオルでくるんで、側でウロウロしているメルモに後ろ髪を引かれながら出かけました。

 何が何だかわからず、涙も出なくて、ただひたすら生徒の卒業公演のゲネと2回の本番をやりとげ、8時過ぎに家に帰りました。

 そこからは涙が出て泣けて泣けてしかたがなかったです。
昼間ネットで調べた所、猫の突然死はよくあるそうで、原因は特定が難しいらしく、私と同じような経験をした人の話がたくさん載っていて、少し慰められました。確かに去年、嘔吐が止まらなくなって病院に連れて行ったことがあり、その後も時々吐いていました。もともと身体が小さく、拾ってきた時はびっこで、手術をして治した少し弱い子だったのですが、もっときちんと健康診断してあげていればよかったかな、と悔やまれます。


 3日間手元に置いて、夫と二人で近くのペット葬祭場に連れて行って、お骨にしてもらいました。今は大好きだった出窓に骨壷を置いています。

 もっともっと一緒にいられるものだと思っていたので、ショックでした。もっといっぱい写真を撮っておけばよかった、もっといっぱい撫でてあげればよかったという思いもありますが、ようやく少し気持ちの整理がついてきました。

 メルモとノアを拾ってきて11年目、多分姉妹の二匹ですが、これからはメルモと三人の生活が始ります。
 今日は亡くなって1週間目なので、小さなティーローズを買ってきて出窓に飾ってあげました。

 そんなこんなでこちらもHPも全く手が付けられなかったのですが、ようやく
少し元気になってきたので、心機一転頑張ります。