★★★
監督:スティーヴン・フリアーズ
主演」ヘレン・ミレン、マイケル・シーン、ジェームズ・クロムウェル
2006年 英・仏・伊
時は1997年イギリス。若き労働党の党首、トニー・ブレアが圧倒的多数でイギリスの首相に就任した。彼は筋金入りの改革派。
エリザベス女王は、親子ほども年の違うブレアを、複雑な思いで首相に任命する。
その年の8月、英王室のやっかいの種、ダイアナ元皇太子妃がフランスで恋人と自動車事故に遭い死亡した。チャールズと離婚した後も、メディアの話題の中心はダイアナだった。その人気は死後ますます絶大になり、彼女を苦々しく思っていた皇室の、静観の姿勢にマスコミやイギリス国民の非難が集中する。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
未だその死の真相がいろいろ取りざたされる、ダイアナ元妃。そこにスポットが当てられるでもない。(当然といえば当然だが)悲しんで狼狽えてみせるチャールス皇太子が、とっても白々しく見える時点で、これはなんの映画なのだろうかと大いに疑問が残る。ダイアナ以外は現存しているのだから、(立場上)取材に応じるなんてことあり得ないわけで、となると憶測で作られている映画なわけだ。
にしても、この辛辣な皇室の描き方は驚き。日本では到底考えられない。フィリップ殿下なんて、人間として最低ではないか。こんな風に描いて大丈夫なのかと心配になる。(英国に比べれば、日本はまだまだ皇室批判はタブー視されている)
フィリップ殿下は貶めながら、結局は女王は擁護しているような印象も受けるが、それも見る人によって取り方も様々に異なるだろう。
「ダイアナは生きていても死んでもやっかいだ」という言葉の恐ろしいほどの冷たさ。ダイアナが嫌ったという鹿狩りは、英王室では崇高な伝統なのだろうか。夫の浮気ぐらい大目に見るのが、皇太子妃の務めなのだろうか。人の心を持たぬ嫁が望みなら、これほど愚かしく、人を馬鹿にした結婚はない。
ダイアナにも我慢ならぬ落ち度や、配慮に欠けた部分が多々あったとしても、死者にむち打つ姿勢に共感することは到底できない。
劇中、唯一秀逸だった大鹿との対面シーン。その孤高な姿に自分と同じ境遇を見たとも解釈できるが、今までその命をうばって来た事に無関心であった女王が、初めてその崇高なる「命」と対面した瞬間だった。女王が今まで見てこなかったもの、見ようとしなかったもの、その美しくも気高い姿に言葉を失う女王。今まで絶対だと信じてきた何かが、女王の中で揺らいだ瞬間。
「お逃げなさい」と鹿を庇った女王は生身の人間としての素直な感情を見せた。しかし大鹿は皇室の伝統により殺され、無惨な姿を女王の前にさらす。複雑な思いを胸に秘め、客人に祝辞をと言わざる得ない女王は、確かに不幸な女性なのかもしれない。
一見誰の事も擁護していない描き方に、女王の悲哀と理解するブレアのシンパシーでちゃんちゃん、のような終わり方だったが、こんな家庭(と言っていいのか)ではろくな子供は育たんと普通に納得。
監督:スティーヴン・フリアーズ
主演」ヘレン・ミレン、マイケル・シーン、ジェームズ・クロムウェル
2006年 英・仏・伊
時は1997年イギリス。若き労働党の党首、トニー・ブレアが圧倒的多数でイギリスの首相に就任した。彼は筋金入りの改革派。
エリザベス女王は、親子ほども年の違うブレアを、複雑な思いで首相に任命する。
その年の8月、英王室のやっかいの種、ダイアナ元皇太子妃がフランスで恋人と自動車事故に遭い死亡した。チャールズと離婚した後も、メディアの話題の中心はダイアナだった。その人気は死後ますます絶大になり、彼女を苦々しく思っていた皇室の、静観の姿勢にマスコミやイギリス国民の非難が集中する。
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未だその死の真相がいろいろ取りざたされる、ダイアナ元妃。そこにスポットが当てられるでもない。(当然といえば当然だが)悲しんで狼狽えてみせるチャールス皇太子が、とっても白々しく見える時点で、これはなんの映画なのだろうかと大いに疑問が残る。ダイアナ以外は現存しているのだから、(立場上)取材に応じるなんてことあり得ないわけで、となると憶測で作られている映画なわけだ。
にしても、この辛辣な皇室の描き方は驚き。日本では到底考えられない。フィリップ殿下なんて、人間として最低ではないか。こんな風に描いて大丈夫なのかと心配になる。(英国に比べれば、日本はまだまだ皇室批判はタブー視されている)
フィリップ殿下は貶めながら、結局は女王は擁護しているような印象も受けるが、それも見る人によって取り方も様々に異なるだろう。
「ダイアナは生きていても死んでもやっかいだ」という言葉の恐ろしいほどの冷たさ。ダイアナが嫌ったという鹿狩りは、英王室では崇高な伝統なのだろうか。夫の浮気ぐらい大目に見るのが、皇太子妃の務めなのだろうか。人の心を持たぬ嫁が望みなら、これほど愚かしく、人を馬鹿にした結婚はない。
ダイアナにも我慢ならぬ落ち度や、配慮に欠けた部分が多々あったとしても、死者にむち打つ姿勢に共感することは到底できない。
劇中、唯一秀逸だった大鹿との対面シーン。その孤高な姿に自分と同じ境遇を見たとも解釈できるが、今までその命をうばって来た事に無関心であった女王が、初めてその崇高なる「命」と対面した瞬間だった。女王が今まで見てこなかったもの、見ようとしなかったもの、その美しくも気高い姿に言葉を失う女王。今まで絶対だと信じてきた何かが、女王の中で揺らいだ瞬間。
「お逃げなさい」と鹿を庇った女王は生身の人間としての素直な感情を見せた。しかし大鹿は皇室の伝統により殺され、無惨な姿を女王の前にさらす。複雑な思いを胸に秘め、客人に祝辞をと言わざる得ない女王は、確かに不幸な女性なのかもしれない。
一見誰の事も擁護していない描き方に、女王の悲哀と理解するブレアのシンパシーでちゃんちゃん、のような終わり方だったが、こんな家庭(と言っていいのか)ではろくな子供は育たんと普通に納得。