★★★★
監督:ハル・アシュビー
主演:ジャック・ニコルソン、ランディ・クエイド、オーティス・ヤング
1973年 アメリカ
アメリカ海軍の将校バダスキーとマルホールは、ある水兵をノーフォーク海軍基地から、ポーツマスの海軍刑務所まで護送する特別任務を受けた。気がのらない任務であったが、報酬はあるし時間の余裕もある。早めにすませて遊ぶことも可能だ。
くだんの水兵はメドウズという18歳の若者。少々おつむの良くないメドウスの罪は、基地の慈善用募金箱から40ドルの窃盗未遂。この程度の罪で8年の刑を宣告されたことに二人は同情する。加えて純朴なメドウスに好感を持った二人は、刑務所に入る前に人並みに遊ばせてやろうと、バーで飲酒させたり、まだ女を知らないメドウスに筆下ろしまでさせてやる。
その最後のいい思いが仇となり、俗世間への欲が芽生えたメドウスは、二人を裏切って脱走を図るが失敗する。力ずくでメドウスを捕まえたバダスキーらは、ポーツマス海軍刑務所に引き渡した。後味の悪い任務であった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
お偉方の都合で至極理不尽な量刑を言い渡された若い水兵に、気のいい二人の将校は同情する。まして盗癖はあるものの、すごく純ないい奴なのだ。何より世間の楽しみをまだまるで知らない。
ニコルソン演じるバダスキーの品はないが、気のいい中年おやじがすごくいい。兄のように、父親のようにメドウスを心配し信頼する。彼の教える「いいこと」は法律的には「よからぬこと」ばかりなのだが、過酷なことで知られる海軍の刑務所生活を知っているだけに、情けをかけずにはいられないのだ。
しかしその情けが仇になり、メドウスは俗世間の誘惑に目覚めてしまう。途中で出会った妖しげな日蓮宗信仰者たちとの出会いも良くなかった。(若きナンシー・アレンが!)気がいい奴でも、正義感ではないのでこのままメドウスを解放してやるわけにはいかない。
心ならずも力ずくで護送する苦い任務となってしまったのだが、18歳からの8年間を刑務所で過ごすことになるメドウスが、その直前で知った「堕落への一歩」なる経験。それがどんなに素晴らしいものであるか、経験させてくれたバダスキーらの友情と共に思い知るであろう。少なくともあのまま世間や、人の情けも知らずに刑務所で重労働させられるということは、なんともこの気のいいだけの青年には残酷である。
ありがちな最悪の事態に安易にいかなかったエピローグも(二人には後味悪いであろうが)、一種のさわやかさを感じることができる。
冬のかもめ・・・水兵服っていうのはとても寒そうだ。冬の厳しさがメドウスの今後を暗示しているようで、心痛む。
監督:ハル・アシュビー
主演:ジャック・ニコルソン、ランディ・クエイド、オーティス・ヤング
1973年 アメリカ
アメリカ海軍の将校バダスキーとマルホールは、ある水兵をノーフォーク海軍基地から、ポーツマスの海軍刑務所まで護送する特別任務を受けた。気がのらない任務であったが、報酬はあるし時間の余裕もある。早めにすませて遊ぶことも可能だ。
くだんの水兵はメドウズという18歳の若者。少々おつむの良くないメドウスの罪は、基地の慈善用募金箱から40ドルの窃盗未遂。この程度の罪で8年の刑を宣告されたことに二人は同情する。加えて純朴なメドウスに好感を持った二人は、刑務所に入る前に人並みに遊ばせてやろうと、バーで飲酒させたり、まだ女を知らないメドウスに筆下ろしまでさせてやる。
その最後のいい思いが仇となり、俗世間への欲が芽生えたメドウスは、二人を裏切って脱走を図るが失敗する。力ずくでメドウスを捕まえたバダスキーらは、ポーツマス海軍刑務所に引き渡した。後味の悪い任務であった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
お偉方の都合で至極理不尽な量刑を言い渡された若い水兵に、気のいい二人の将校は同情する。まして盗癖はあるものの、すごく純ないい奴なのだ。何より世間の楽しみをまだまるで知らない。
ニコルソン演じるバダスキーの品はないが、気のいい中年おやじがすごくいい。兄のように、父親のようにメドウスを心配し信頼する。彼の教える「いいこと」は法律的には「よからぬこと」ばかりなのだが、過酷なことで知られる海軍の刑務所生活を知っているだけに、情けをかけずにはいられないのだ。
しかしその情けが仇になり、メドウスは俗世間の誘惑に目覚めてしまう。途中で出会った妖しげな日蓮宗信仰者たちとの出会いも良くなかった。(若きナンシー・アレンが!)気がいい奴でも、正義感ではないのでこのままメドウスを解放してやるわけにはいかない。
心ならずも力ずくで護送する苦い任務となってしまったのだが、18歳からの8年間を刑務所で過ごすことになるメドウスが、その直前で知った「堕落への一歩」なる経験。それがどんなに素晴らしいものであるか、経験させてくれたバダスキーらの友情と共に思い知るであろう。少なくともあのまま世間や、人の情けも知らずに刑務所で重労働させられるということは、なんともこの気のいいだけの青年には残酷である。
ありがちな最悪の事態に安易にいかなかったエピローグも(二人には後味悪いであろうが)、一種のさわやかさを感じることができる。
冬のかもめ・・・水兵服っていうのはとても寒そうだ。冬の厳しさがメドウスの今後を暗示しているようで、心痛む。