「都会のアリス」「さすらい」と並んで表される ヴィム・ヴェンダース監督 ロード・ムービー三部作の一本。
『まわり道』 を観た。
作家志望なのに人間嫌いの主人公ヴィルヘルムは 何かを書きたいのに書けない、そんな焦燥感にかられる日々を送っていた。
そんなヴィルヘルムに母親は、
「作家になろうと思ったら、憂鬱と不安は失わない方がいい。自分を追い詰める為の旅をしろ。」 と助言する。
可愛い子には旅をさせろとはよく言ったものだ。
そしてその旅まもなくして、大道芸人の老人ラエルテスと口のきけない少女ミニョン、
美しい女優テレーゼ、若い詩人ベルンハルトと行動を共にする。
彼等と様々なことを語らいながら気ままな旅を続けていくヴィルヘルム。
やがてヴィルヘルムはテレーゼと愛し合うようになるが、ふとしたことで諍いを起こした一行の旅は
終わりに近づいていたのだった。
一行と散り散りになったヴィルヘルムは、ツークシュピッツェの山頂に登り 1人奇跡を待った。
当然だが 何も起こらず、
思わず 「無意味なまわり道ばかりしているようだ。」 と呟き、物語は終わっていく。
なんだろな、そもそも“まわり道”なんてもんは、目的地からこれまでの自分の道程を振り返って見たときに気が付くものであり、
未だ小説が書けていないこの男がこのセリフを吐くのはまだ早い と、アタシは思うわけで…
しかし、1970年代の西ドイツの情勢は 見事にこの主人公の心情と重なりあっているような気がする。
序盤より、耳障りにも思えた不安をあおる様な劇中の不協和音。
それと共に進められていく旅の先々での出会いと出来事。
それは この主人公にとっては必然な出会いとドラマだったのだろう。
ラストでは心地よくすら聞こえだした和音が アタシにそう思わせた。
決して無駄では無い“まわり道” そう思いたい。
そうそう、この映画には まだ無名時代のナターシャ・キンスキーが出演している。
これがデビュー作、まだ14歳だというのに この色気。
映画『テス』での美しさ、そしてエキゾチックな妖艶さはすでにこの時点で完成形。
彼女の少女時代を拝めただけでも 観た甲斐アリの作品でした。
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