玄倉川の岸辺

悪行に報いがあるとは限りませんが、愚行の報いから逃れるのは難しいようです

李方子妃を描いたドラマ「虹を架ける王妃」

2006年11月25日 | テレビ鑑賞記
嫌韓派や大日本帝国の悪を糾弾したい人たちには物足りなかっただろうが、私は気楽に楽しめた。

虹を架ける王妃~朝鮮王朝最後の皇太子と方子妃の物語~
日本の皇族から初めて異国に嫁いだ、方子女王(菅野美穂)。
留学という名のもとに11歳という幼さで日本に連れてこられた悲運の朝鮮王朝最後の皇太子・垠殿下(岡田准一)。
明治、大正、昭和という激動の時代、日韓の相克する渦の中で"日鮮親善"の美名のもとに政略結婚といわれて結ばれた運命的な縁を、真実の愛にしようと生きた二人。しかし、各地での抗日運動、垠の父親・高宗皇帝の急死、方子と垠の長男の急死、関東大震災、太平洋戦争終戦後の皇族地位剥奪など、様々な辛苦が二人を襲うのだった。
歴史の渦へと巻き込まれた美しく切ない恋の物語を、世界文化遺産、重要文化財などでのロケを交え、壮大なスケールで描いていく。

菅野美穂と岡田准一が上品で美しかった。史実の方子妃と垠殿下にはあまり似てないけれど。
菅野のか細い声がお姫様らしくていい。女優の声はルックスと同じくらい大事だ。
2003年に常盤貴子が愛新覚羅浩を演じた「流転の王妃・最後の皇弟」は好評だったらしいが、自分には常盤の声が興ざめだった。

セットと衣装が豪華で目を楽しませてくれた。テレビドラマとしてはずいぶん努力したのだろう。
豪華な李王家の屋敷やきらびやかな韓国の宮廷衣装に見とれてしまう。
結婚パレードや雪の降るシーンでのCG合成がチャチなのはご愛嬌。

映像の美しさは充分に合格点だけれど、物語は念入りにアクを抜いてずいぶんと軽いものになっていた。
歴史ドラマというよりラブストーリーを意図して作ったのだろう。フジテレビのコピーも「二夜連続・奇跡の夫婦愛スペシャル」だ。
「日本帝国主義」も「朝鮮民族主義」もごくあっさりと描かれ、ヒーローも悪党も出てこない。
結果として誰にでも見やすいドラマに仕上がっている。
それなのに定説とは言えない「高宗毒殺説」をすらっと出してきたのには驚いた。一体どういうつもりだろう。
戦後の困窮や韓国に帰国が叶わなかった事情を完全にカットしたのは各方面への差しさわりを配慮してのことか。
見ている間ずっと「今日は前編で、明日は戦後の苦闘と韓国での福祉活動を描いた後編が放送されるのだろう」と思い込んでいたので、昭和20年でドラマが途切れいきなり菅野が老女になったのに驚いた。できればあと一時間は方子妃の生き方を見たかった。


参考リンク
    流転の王女==李 方子(り まさこ/イ・パンジャ)
    李方子
    JOG(178) 日韓の架け橋・李方子妃

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2 コメント

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私も良いできだったと思いました (安部奈亮)
2006-11-26 22:33:15
 二つの民族の対立に翻弄される垠殿下と方子妃の一大叙事詩を期待していた向きにはちょっと拍子抜けだったと思いますが、なるべく多くの人にお二人のことを知って頂く導入版としては良くできていたと思います。

 本来は大河ドラマや朝のテレビ小説でやっても良いくらいボリュームがある話なんですよね

 方子妃の人生は本当は戦後に韓国に渡ってからの方が感動的であるのですが、これを描こうとすると、夫妻が韓国政府から冷遇されて垠殿下が命を縮めてしまったことや、韓国で障碍者が痛く差別冴えていたことを明らかにしなければならないので、まだ難しかったのかもしれません。

 土曜日に流れた蜂谷さんの方も感動的でした。
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さしさわり (玄倉川)
2006-11-28 19:16:55
「皇族」「日韓関係」さらに「障害者」とうかつに手を出すと広義が殺到する問題がありすぎて、戦後篇は作りにくいのでしょうね。
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