言の葉ひらひら - Wordy Leaves Dancing

「はじめに言葉があった」
"In the beginning was the Word."

「博士の愛した数式」と十字架

2006-02-04 | 本の葉


いい本を読みたいなぁ、と願っていると本のほうからやって来てくれるものらしい。最近友達になった子も本虫さんらしいので、今まで読んだうちで一番好きな本は何かと聞いたら、即座に「博士の愛した数式」と教えてくれた。すると、昨日「渡したいものがあるんです」といってその本を私にくれたのでびっくり。(Aちゃん、送って下さったNさん、ありがとうございました!)早速、一気に読んでしまった。本の中は独特の世界で、そこでの時間の流れは緩やかで暖かく、それに身を任せるのは心地よかった。いつもは平気でしている斜め読みもおこがましく思え、連なるページを一枚づつ味わなければ勿体無い気持ちになった。私は、プロットに引っ張られる話より、あたかもどこかに実在しているような、でもそこにしかいない登場人物、そこに描かれた情景の雰囲気、言葉の選び方やそのリズムなど要素に惹かれるので、すっかりこの本にハマってしまった。読後、車を運転したのだが、現実の世界に戻ってきたのにまだ体がしっくりとせず、一瞬どっちの車線を走ったらいいのかわからないほどだった。(危ない、危ない。)

それは、80分しか記憶の持たない数学博士と彼の家政婦とその息子の物語。博士は、家政婦に直線を引かせて、こう語る・・・(以下抜粋) 「そうだ。それは直線だ。君は直線の定義を正しく理解している。しかし考えてごらん。君が描いた直線には始まりと終わりがあるね。・・・本来の直線の定義には端がない。無限にどこまでも伸びてゆかなけれればならない。しかし一枚の紙には限りがあるし、君の体力にだって限界があるから、とりあえずの線分を、本物と了解し合っているに過ぎないんだ。更に、どんなに鋭利なナイフで入念に尖らせたとしても、鉛筆の芯には太さがある。よってここにある直線には幅が生じている。面積がある。つまり、現実の紙に、本物の直線を描くことは不可能なのだ。・・・真実の直線はどこにあるか。それはここにしかない。」博士は自分の胸に手をあてた。・・・「物質にも自然現象にも感情にも左右されない、永遠の真実は、目にはみえないのだ。」

そういえば私の胸の中にも、まっすぐにのびる二本の直線のイメージが、ここしばらくの間、あるのだ。それは十字に交わり、縦横に無限にのびている・・・ 先週の土曜日にクリスチャンの集まりで、十字架の縦の線は自分と神様との天へ向かうつながりで、横の線は自分と人との地上のつながりを表している、という話を聞いた。現実の生活という紙上に現れている線には限りがあって、それはとぎれとぎれになっているような気さえ、時々する。私の限界によって「とりあえずの線分」になっている。でも、胸の中の線のイメージはすぅーっとまっすぐにどこまでものびているのだ。何にも左右されない真実、それは縦と横にのびる線には切れ目もなく、終わりもない、ということなのだ。博士は私に教えてくれた。「神様の手帳」にはすでに真実が描かれていて、私達はそれを写し取っていくだけなのだ、ということを。

余談になるが、昔TVでこの本の著者の小川洋子さんを見たことがある。確か、爆笑問題の二人が司会する本に関する番組で、「大人の哀しみ」についてのトークをされていて、なかなか興味深かったのを覚えているなぁ。

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3 コメント

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Unknown (めぐんちゃん)
2006-02-08 02:21:55
あー、日本語の本なんだね!すごく読みたいし一緒に読んで欲しい人がいるんだけど、英訳なんてきっとないよね。そういう本を訳すのは、大変だけど楽しそうだな。
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英訳はないみたい・・・ (kuriks)
2006-02-08 17:07:06
だね。残念。めぐんちゃんが頑張ってみる?日本語版、今度お貸ししましょか?めぐんちゃんの本もお願いね!
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found it! (kuriks)
2007-10-11 03:28:15
I found it! It's titled "The Gift of Numbers" and was released in 2006. (ISBN-10: 031242597X
ISBN-13: 978-0312425975) It seems currently unavailable though... At least it exsists somewhere. Hope you can get a copy. I want to give it to my co-worker (English/Math teacher) too.

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