とね日記

理数系ネタ、パソコン、フランス語の話が中心。
量子テレポーテーションや超弦理論の理解を目指して勉強を続けています!

4次元生物に目はいくつ必要か?

2007年12月10日 23時21分13秒 | 学校で教えてくれないコト
人間の体に「2つ」が多い理由」という記事で書いたように、僕たちには目が2つついている。

目が2つあるおかげで人間は距離を感じ取ることができ物を立体視することができる。目の網膜は2次元の面なので足りない「距離」という1次元情報を2つの目でおぎなえているわけだ。3次元空間だから目が3つ必要になるというわけではない。

4次元空間があったとしても3次元に住む僕たちからは4次元の方向がわからないのは仕方のないことだが、もしそこに4次元生物がいたとしたら彼にはいくつの目が必要だろうか?4次元生物が4次元空間を知覚できるために最低必要な目の数のことだ。4次元生物の目は4次元のどの方向にある対象物でも見ることができるのは言うまでもない。

答は3つだろうか?それとも4つだろうか?

次の2つの考え方からはじめてみよう。

考え方1)
目が2つでは足りない。4次元方向の距離を知覚するためにもうひとつ目が必要だ。よって合計3つ。

それとも

考え方2)
目は4次元のどちらの方向も向くことができ、足りないのは距離に関する情報だけなので2つの目があれば距離がわかる。よって目の数は2つで足りる。

2つでいいのか3つでいいのかわからなくなってきた。

2次元生物の目のことから順番に次元を増やして考えれば解決の糸口が見えてくるかもしれない。2次元生物とは2次元空間(面)の中に住むぺちゃんこな生物のことだ。絵に描いてみればわかるが彼らの目は人間の目の断面図のような形をしていて、その網膜は1次元の曲線だ。

そして2次元生物でも距離を知るためには2つの目が必要なことがわかる。(余談であるが1次元空間(線)に住む1次元生物の場合は目がいくつあろうが距離を知覚することはできないのはすぐわかるだろう。彼らが見れる方向は前と後ろの2方向しかないからだ。)

もし2次元生物の目を3次元生物に付けたらどう見えるだろうか?

1つの目だけではいちどに3次元空間の全体を見渡せないことに気がつく。まわりの景色のうち横(視覚器官の並んでいる方向)の線しか見えないからだ。1次元に配置された視覚器官では景色を絵のように面として知覚できないのだ。

2つの目で見ると距離はわかるようになるが、景色を面としてとらえられないことに変わりはない。景色は2つの線をつなげたように見えるだけだ。そのような目で3次元空間を見渡すためにはブラウン管テレビの走査線のようにスキャンして、視覚情報を脳で再構成しなければならない。この方法だと景色を面や立体として一瞬に見たことにはならない。

2次元の網膜(面)を持つ人間の目を4次元生物に取り付けても同じことが言えるのがわかる。人間の目1つでは4次元の景色をくまなく見渡すことができないのだ。ここで言う4次元の景色とは1つ次元を落とした「3次元映像」のことである。人間の目1つでは4次元空間のうち2次元部分の景色を見れるにすぎない。そのような目を2つ付けても、2次元+2次元=4次元にはならない。あいかわらず2次元の景色が見えるだけである。悲しいかな、人間の目の構造ではどんなに工夫しても4次元の景色を見ることができないのだ。

4次元の景色(4次元空間の表面)をくまなくとらえるためには、網膜は立体的(3次元構造)でなければならない。そうすれば4次元の景色から「3次元映像」を知覚することができる。そのような目というのはどういう構造を持つのだろう?目の器官自体は4次元構造で、網膜は3次元構造である。そういう目がそもそも考えられるだろうか?焦点を調節する目のレンズはどのようになるのだろう?「4次元レンズ」が必要になるのだろうか?

そういう「立体網膜」- 立体受光器官を持つ4次元生物がいたとしたら、その目は4次元のどの方向にも向けられるので、あとは対象物までの距離がわかればよいからもうひとつ目が必要になるだろう。つまり目は2つあれば十分なのだ。

このような目を2つ持った4次元生物も、自分のいる空間すべてを知覚できているわけではない。3次元空間に住む人間が物を立体視はできるものの、物の内部や裏側を見ることができないのと同じだ。人間の目がもし3次元空間全部を把握できるとすれば、壁の裏に隠れているゴキブリも見逃すこともない。CTスキャナのような装置を使ってはじめて物の内部が見れるようになる。4次元生物も4次元物体の「3次元表面」を見ているにすぎない。4次元物体内部を見るためには「4次元版CTスキャナ」が必要だ。

さらに5次元生物、6次元生物の場合はどのようになるだろうか?これまでの説明が理解できていればもうおわかりであろう。


人間は目が2つあるから立体を見ることができるというのは本当だが、3次元空間のすべてを見ているわけではなく、自分をとりまく空間内にある物の2次元的な表面を見ているにすぎない。表面だけ見てその人物のことを「美人だ!」とか「カッコいい!」とか言っているわけだ。人間も含めて「物」は空間の一部を構成する3次元領域であるからそれを外側から見ていることになる。

外側から見ている限りその内部の様子を目で見ることはできない。見えたら大変だ。他人の体の中の臓器も見通せるということになるのだから。たいていの人は相手の顔は気にするが、その人の内臓の形はどうでもよい。「いや~、君の心臓はほれぼれするような形をしているねぇ。」などと言って喜ぶのは医者くらいだ。

また、自分がいる空間内を見渡すときは空間を内側から見ていることになる。障害物がない限り内側からだと3次元空間はすべて見渡せる。このように僕たちは3次元空間をいつも同時に内側からと外側からの2通りの方法で見ているのだ。人間が2つの目でしている「立体視」とはこのようなものだ。

ところで2次元生物は、お互いを見るとき相手を「線」としてしかとらえていない。僕たちは彼らを3次元空間から見るから「ぺちゃんこ生物」のように見えているのだ。でも、それは彼らの体の内部を見ていることになる。同じように4次元生物が僕たちを見ると彼らは僕たちの体の内部を全部見ていることになる。見るだけじゃなく直接触ることだってできる。想像すると気持ち悪くなってくるが。

さて、4次元生物が2つの目で4次元空間を「超立体視」するとはどんなイメージだろうか?

彼の住んでいる4次元空間には4次元の物や生物がいて、彼がこれらを見るときその対象物(物や生物)の外側だけを見ていることになる。「対象物の外側」とは3次元物体のことでその「外側も内部も」- つまり3次元物体を構成するすべての物質が4次元空間に露出している状態だ。すべて露出されているといっても3次元物体を構成する各部分のもともとの形や配置はそのまま変わらないという不思議な見え方だ。4次元の物や生物は4次元のあらゆる外側の方向からこのような「3次元物体」に覆われている。

仮にこの3次元物体が自分(人間)であるとしよう。4次元生物に心臓をもぎ取られてしまうと大変なので、彼に嫌われないように笑顔であいさつして好意を伝えることにする。人間の顔の表情は2次元の曲面の形と色で表され、4次元生物から見ると露出した3次元物体全体の境界のところに2つの目で彼を見ようとしている何かがあるのに気付くだろう。(人間の目は4次元の方向を見れないので、4次元生物と目が合うことはない。)

その「何か」は人間にとってそれは笑顔であっても4次元生物にとってはそれが何かは理解できない。人間が2次元人の表情から何も読み取れないのと同じだ。2次元人の表情は「曲線の曲がり具合と線の色」でしかないのだから人間にはそれが「表情」なのかすらわからない。。人間がいくら微笑んで好意を伝えようとしても4次元生物には「????」である。4次元生物には体中の細胞全部を移し換えながら表情を示さないと好意は伝わらない。彼にとって表情とは立体的に、というより3次元領域全体を使って感知するものなのだ。

これが4次元生物が「物や生物を外側から見る」という意味である。

彼が自分をつつんでいる4次元空間を内側から見渡すとき、途中に障害物がない限り4次元空間をすべて見渡すことができる。このように4次元空間に露出している3次元物体を外側から見ているのと4次元空間を内側から見ているのを同時に行いながら彼らは「超立体視」しているのだ。


さて、4次元生物の目の個数や構造について、別の考えやアイデアをお持ちの方はコメントください。(「立体網膜」や「4次元 目の数」などで検索したが、答が得られなかったので。)

読者への宿題:「4次元生物に耳はいくつ必要か?」
目のと耳のときでは考え方は違ってくる。少し考えれば面白い発見があることに気がつくはずだ。これについてはこちらをクリックしてほしい。(クリックする前に自分で考えてみよう。)

余談: 1次元空間や2次元空間には光は存在できないことを言っておかなければならない。光は電磁波であるのだし、電磁波はこのような形で電場と磁場が交互に90度に交差しながら進む横波なのでこれが伝わっていくためには3次元以上の空間が必要なのだ。だから1次元世界や2次元世界は真っ暗で何も見ることはできない。こんなことを言い出すと3次元的な存在である「原子」も1次元空間や2次元空間には存在できないのは当然であるが、この記事ではあくまで数学的な仮定として1次元生物や2次元生物を例に出したので、目の数や構造についての話の筋道としては間違いではない。

余談の余談:3次元空間を伝わる光についてすごい記事を見つけた。

光が伝播する3次元の様子の動画像記録・観察に世界で初めて成功
http://www.jst.go.jp/pr/announce/20071017/index.html

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三脚がしっかり立っていられる理由
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8 コメント

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Unknown (s)
2009-07-14 02:07:50
4次元空間で電磁波はどうなるのでしょうか?
4,5,6、、と進んだ先が大統一理論?
sさんへ (とね)
2009-07-14 09:43:35
sさんへ

興味深いご質問ありがとうございます。

電磁波は以下の記事でわかるように3次元的な広がりをもった存在なので、4次元空間でも3次元のものとして存在すると思います。それは平面的に縄が振動するような2次元の波が私たちの3次元空間に存在していることを考えれば、たとえ話としてわかりやすいかもしれません。

2次元世界は暗黒空間だ!
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/b75de7ce574f473dd9f72d07c2a35803

次元の数を増やしていった結果に大統一理論があるかどうかはわかっていません。しかし超ひも理論では次元は10次元または26次元だと考えられています。この次元については面白いことがわかっていますので、よろしければ以下の記事をお読みください。

キス数:
http://blog.goo.ne.jp/ktonegaw/e/3fff2b46269846dff3db22e01744d085
Unknown (ウキ)
2012-06-06 21:38:13
臨死体験者の360度視野はどの次元に該当するのでしょうか?
ウキさんへ (とね)
2012-06-06 22:09:35
コメントありがとうございます。

臨死体験者からの話を聞いたり、読んだりしたことがありませんので、残念ながらどの次元なのかはわかりません。

ただ、臨死体験時にも人間の感覚は生前のものをそのまま継承するということが成り立つのならば3次元以上の空間は知覚できませんので、臨死体験時に見る空間も3次元だと思います。
笑顔 (放浪)
2014-08-08 05:14:50
四次元生物に三次元生物の笑顔はわかるはず。
だって紙に生物の絵を書いた場合、それが女子だったら
微笑んでいるようにも書けるし、怒ってるようにも書ける、
それを我々三次元生物(だとする)は知覚できる。
だとすると四次元生物には
なんか絵に書いたような笑顔の範囲で
三次元生物の笑顔を解るはず。
そして四次元生物の笑顔は
なんだかよくわからない方向が付加されているが、
三次元方向に修正されて三次元的に
普通にしか見えないはず。
二次元から見た三次元の笑顔は
二次元にしか知覚できない二次元人には
後ろから前に移動する頬の筋肉の動きは
下からななめ上に表面を移動する動きでしかない笑顔
四次元の動きはやはり三次元生物には知覚できない。
もしかしたら四次元的動きをして
四次元的笑顔をしているのに、
我々はそれを三次元とでしかとらえられていないのかも。
Re: 笑顔 (とね)
2014-08-08 13:02:52
放浪さま

コメントありがとうございます。
3次元生物の笑顔は4次元生物から見えてはいるのですが、それを笑顔だと判断することができないのです。

1つ次元を落として考えてみましょう。

2次元に描かれたドラえもんの絵は私たち3次元生物からはドラえもんの顔に見えます。
でも2次元生物にとってドラえもんの顔は「内蔵」のCTスキャン画像なのです。2次元生物にとって顔の表面とはそのドラえもんの形をした面の外側にある境界線(曲線)なのです。その平面世界の中にもう一人2次元生物がいるとしましょう。2人の2次元生物たちはお互いを真横から見るので相手のことが「線」に見えます。そしてその線は曲線ですから、相手の線の一部は近くにあるように見え、線の他の部分は遠いところに見えます。2次元生物は自分自身の境界線の形を変えて表情をつくるしかありません。それは3次元の生物である私たちには曲線の変化としかわからず、それが笑顔なのか怒り顔なのかということが理解できません。曲線の形の変化を表情の変化だと理解しあえるのは2次元生物どうしになるのです。

テーブルの上に10円玉と5円玉を置いて観察してみてください。私たちには10円や5円の文字が見えますが、10円玉生物から5円玉生物を見ると、真横から見ているだけですから相手の外側の縁が「厚みをもった線」として見えるだけであることがわかると思います。
Unknown (まんまる)
2023-01-21 10:58:28
同じことを考えていてこのブログにたどり着いたのでコメントしておきます。

はじめ私も4次元生物は3次元的な視覚をもち2つの目で立体視すると考えました。
これはこれで正しいと思いますが、実際のところ私たちの目が2つなのは立体視をするためではなく、身体の鏡像対称性に由来します。
ヒトデやクラゲのような生物にも光を感じる目がありますが、彼らの体は回転対称で目も2つではありません。

異次元生物を考えるにあたって、細かいことはさておき、私たちの3次元世界と同じような物理法則を仮定することにします。
重力によって物質が凝集し、核融合によって星が輝くとします。
惑星表面に海があり、その中のアミノ酸から生物が誕生するとします。
重力の向きである鉛直方向は、2次元世界でも4次元世界でも同様に意味のある方向です。
なぜなら光量や水圧が生存に影響するからです。
あまり動かないヒトデやクラゲのような生物にとっても鉛直方向は大きな意味をもちます。
進化の過程で運動能力を発達させると、新たに進行方向(前後)が生まれます。
水の抵抗があるので流線形の体が発達します。
異次元生物にとっても鉛直-前後平面は意味をもち、この面内において非対称な体を発達させますが、それ以外の方向についてはそうではありません。

私たち3次元生物が鏡像対象な体をもつのは、鉛直でも前後でもない左右方向が生存に影響しないためです。
むしろ左右対称でないほうが生存に不利かもしれません。
この観点に立つと、2次元世界には身体の対称性を許すような余分な次元が一切ありません。
おそらく2次元生物は鉛直軸対称な体を発達させ、それを倒して水平移動するようになるでしょう。
陸上に上がるのは難しいかもしれません。
一方で4次元世界には鉛直-前後平面に垂直な2つの余分な次元があります。
未知の物理現象や不可思議な進化傾向の可能性を排除するならば、この2つの方向を区別する理由はありません。
彼らは鉛直-前後平面を中心とする回転対称な体を発達させることでしょう。
そうなると目が2つである必然性もありません。
彼らが目をいくつもつかはコストとゲインのバランスの問題と言えますし、あるいは単に偶然の問題とも言えます。

N次元生物にとって鉛直・前後以外のN-2の方向は区別する必要がないので、その分だけ対称性を残す余地があります。
2次元世界にはその余裕がなく、3次元世界では鏡像対称だけが許されますが、4次元以上の高次元世界では高次元の対称性が許されます。
それだけ自由度が高いわけで、想像もつかないほど多様な生物相になっていると思います。


ところで、光(電磁波)が3次元的な現象であることと私たちのこの世界が3次元であることは偶然なのかという疑問がありますね。
N次元世界はN-1の未知の場から成り立っているのかもしれず、電磁波に似たN次元的波動現象が存在するかもしれません。
あるいは単一の場の波としてもN-1種類の波動現象があることになります。
もしそうであればN次元生物はそれだけたくさんの感覚器官をもつのでしょうね。
光子 (hirota)
2023-03-31 19:25:44
超弦理論では光子は10次元に存在するゲージ粒子=開弦。
時空がコンパクト化された状況では電磁波の形態をとるにすぎない。
次元が変わってもそれなりに存在する。(偏光の種類が変化)
目は2次元の網膜に投影する器官。
両眼視差を利用して1次元追加した3次元を知覚してるが左右視差しか使わず情報を無駄にしている。
独立な2次元射影2つを利用すれば4次元を知覚できる。

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