BLOG 思い遥か

日々新たなり/日本語学2020

音義と形

2021-11-26 | 日本語学21

漢字に意味の役割を、仮名文字に発音の機能を説明する。わたしたちが巧みに使い分けすることについて、国語学の立場の論説である。

>かやうな點から見ると、漢字をむやみに制限して、之を假名にかへる事は容易に贊成しがたいのであつて、かやうな事については、もつと廣い處から考へて十分の思慮を必要とするのである。
http://www7b.biglobe.ne.jp/~w3c/kotoba/HASHIMOTO/NIHONNOMOJI.html
日本の文字について ──文字の表意性と表音性── 橋本進吉

上記、文章を次にも見る。
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http://books.salterrae.net/tuyuzora/html/HASIMOTO005.html
橋本進吉
> 漢字と假名とが文字としての性質を異にし、それぞれ獨特の長所を有すること上述の如くである。さうして、我國では現今この二種の文字を共に用ゐ、同じ文の中に之を混用してゐる。これはどんな意義を有するものであるか。
 現代の文に於て、主として漢字で書く語と、假名で書く語とは概していへば、その文法上の性質をことにしてゐる。即ち品詞の違ひによるといつてよい。助動詞、助詞及び用言の活用語尾は常に假名で書くのが原則であり、其他の品詞は主として漢字で書くのがならはしになつてゐる。助詞や助動詞及び活用語尾は、古く「てにをは」といはれたものであつて、いつも他の語に伴つて付屬的に用ゐられるものであり、其他の品詞は、比較的獨立性のつよいものであつて、「てにをは」の類を付屬せしめるものである。助詞や助動詞や活用語尾は、語と語との關係や、或は斷定、願望、要求、咏歎のやうな意味を言ひあらはして文の構成上極めて大切なものであるが、それは、其他の品詞のあらはす主要なる意味に付帶してあらはされるものであり、その上、いつも他の語の後に付くものである。その主要なる意味をあらはす語を、その意味をあらはすに適當な極めて印象的な漢字で書き、之に伴ふ意味をあらはす「てにをは」の類をその下に假名で書くのは、これらの各種の語の性質に適つたものであるといふべきである。かやうに漢字と假名とが適當に交錯し、さうして意味から見ても又音から考へても、漢字とそれに伴ふ假名とが一團となつて、その前後に區切りがあるのであつて、假名から漢字に移る所が、自然、音と意味との切れ目となつて、特にわかち書きをしなくとも、わかち書きをしたと同樣の效果をあげることが出來るのであつて、讀むにも甚便利に容易になるのである。これは極めて巧妙な方法であるといふべきである。かやうに考へて來ると、現今普通に行はれる漢字假名まじりの文は、一見複雜にして統一がないやうであるが、國語の文の構造の特質を捉へて漢字と假名との長所を巧に發揮させたもので、我が國民の優れたる直覺と適用の才とのあらはれを見る事が出來るといつて過言ではないであらう。

底本:「文字及び假名遣の研究」、岩波書店
   昭和45年01月31日(改版)

橋本進吉博士著作集〈第3冊〉文字及び仮名遣の研究 (1949年)

http://books.salterrae.net/all/author_200.html
作家情報:No.200
作家名: 橋本進吉
公開中の作品
タイトル
1 表音的假名遣は假名遣にあらず
2 「萬葉集は支那人が書いたか」
3 國語假名遣研究史上の一發見 -- 石塚龍麿の假名遣奧山路について --
4 國語音韻の變遷
5 日本の文字について――文字の表意性と表音性――
6 「盛者必衰」
7 國語史研究史料としての聲明
8 國語に於ける鼻母音
9 語義の解釋と文意の解釋
10 駒のいななき
11 上田秋成の靈語通と徳川宗武の假名遣説
12 「さふらふ」か「さうらふ」か
13 ふりがな論覺書
14 萬葉集語解三則
15 假名遣について
16 萬葉集の語釋と漢文の古訓點
17 允恭紀の歌の一つについて
18 上代に於ける波行上一段活用に就いて
19 奈良朝語法研究の中から
20 辭書さまざま「とほしろし考」餘談
21 國語の表音符號と假名遣
22 國語と傳統
23 國語學と國語教育
24 國語の音節構造と母音の特性
25 三百餘年前の日本の方言に關する西人の研究


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