Cafe de Kerm ~毒味ブログ~

物言いにも、珈琲にも、もれなく毒が混入している可能性が無いこともないです。

初心者との溝

2004-08-19 21:39:50 | PC
 私はもうPCに関しては初心者ではないし、もしそう言い張ったとしても知人は誰もが冗談だと思うだろう。別にこんな事は自慢でも何でもないし、むしろPCを快適に使うためには、いつまでも自分を初心者という殻に閉じこめておいていいことは何もないという事情もある。
 しかし、だ。私が初心者ではないといっても、この記事は恐ろしい代物だ。


パッチ未適用のWindowsシステム、「生存時間」は約20分--米調査


 冗談じゃない。たった20分ではWindows Updateすら満足に行えない。ブロードバンドと言われる環境でもサービスパックをダウンロードしている間にマシンがやられてしまうだろう。
 PCはインターネットという起爆剤によって、爆発的に普及した。それによって、使う人間は10年前に比べて天文学的に増加した。PCのハードメーカーも、ソフトメーカーも”初心者と呼ばれる人たち”に対し、ずっと配慮してきた。そのおかげでPCはずいぶんと初心者に優しくなった・・・

 そんなはずは、なかった。

 世の中はPCベンダーが思うほど進歩していない、使う人間も本当の意味で”ユーザー”になっている人間などほんのわずかだ。ほとんどの人間にとって、未だPCについてくる分厚いマニュアルは、ヒエログリフの集まりにすぎない。
 ファイルの概念だって怪しい(わかっていない)初心者に対して、今あるほとんどのソフトは敷居が高すぎる。そもそもCD-Rが焼けるかなんて聞くだけ野暮だろう。

 つまり、これだけ爆発的に普及したにもかかわらず、PCに関しては未だ大きな溝があると言える。

 今月号の月刊アスキーに「”我々”は全PCユーザーの0.0005%にも満たない」というArthur C.Kyle氏のコラムが載っていた。つまり”我々”以外の人間は、99.9995%もいると言うことになる。
 ”我々”以外の彼らはPCを再インストールしたときに、パッチをダウンロードするだろうか?
 仮にダウンロードしたとしても、彼らはダイヤルアップを使って、一日がかりでアップデートという苦行に耐えられるのだろうか。
 そもそも再インストールするのか?と言う疑問はさて置いて。

 そんなもの”我々”には関係ない?
 Kyle氏は言う。
 以下イタリックは全て月刊アスキー2004年9月号P181からの抜粋。アスキーの回し者ではないが、一読をおすすめする。

 残念ながら、こうした人々の災難は、私たちとも無縁ではない。彼らのような人々のマシンはハッカーの標的とされ、スパムメールを送るゾンビとなり、ウイルスやワームをまき散らすのである。

 さらに彼はこう続ける。

全ての原因は、こうした普通のユーザー(中略)にまで、それ以上の存在になることを要求する、コンピュータテクノロジーの非情さにある。

 これを読んで、私は雑誌等にパッチ掲載を許可しなくなったマイクロソフトの戦略を思い出した。


 かつて、”我々”が普通のユーザーだった。
 しかし、今はもう”我々”は普通のユーザーではなくなった。
 普通のユーザーは道具には興味を持たない。
 興味があるのは道具を使った結果だけ。
 かつて、道具そのものに興味を持った普通のユーザーは、
 今の普通のユーザーに取って代わられた。
 そして、我々は”我々”になった。