新記録！

　先日行ったラーメン屋さんのメニューで「替え玉　９つで新記録！」とありました。「替え玉」とはラーメンの「麺」のおかわりで、９つで新記録ということは過去に８つまでは食べたことがある人がいるということです。スープの関係もありますが単純に８玉ということはラーメン８杯分ということでしょうか…はじめの１杯も計算に入れると替え玉８つを達成した方は計９杯のラーメンを食べたことになります！僕には考えられない量です。一体どんな大食漢がこの偉業を達成したかも気になりますが、しかし僕が一番気になるのはその「量」よりも替え玉８つ目の時点でのラーメンの「状態」でした。

　お店によっては替え玉をする時点でスープも足してくれるところもあるみたいですが、基本的には麺のみが追加されます。となるとスープの方はどんどん冷めていくことになります。替え玉２つ目くらいまでならスープの熱さも保たれているでしょうが冷めたラーメンなんて不味そうです…その上食べれば食べるほどスープも減っていくはずです！熱々のスープをすすりながらの麺がおいしいラーメンなのに、替え玉８つ目ではぬる～いちょびっとスープという状態なのではないでしょうか？食べれば食べるほど味の状態が悪くなっていくという状況の中で追加できるという精神力に僕はまず脱帽です！「チャンピオン」はこの時、最終的には「つけ麺」の様なざるラーメンみたいにしてこの替え玉に挑んでいたのでしょうか？当時メニューに書かれていたであろう「替え玉　８つで新記録」という文字に対抗意識を燃やし、最後は限界を超えた胃袋に不味いラーメンを流し込む大男、店内には鈍い「ズルッズルッ」という音だけが響き、その額には脂汗がにじむ…僕はそんな姿を想像し、食べる前からちょっと気持ち悪くなりました。

　しかし僕の予想に反し、食べるスピードが驚異的でスープの冷める間もなく「あっ！」という間に記録を達成されたのかもしれません！周りのお客さんもそのスピードと食べっぷりに目を丸め、替え玉８つ目完食時には店内スタンディングオベーションで新記録達成を称えたのかもしれません！！紙吹雪の代わりに店内を舞う餃子の皮、胴上げされるチャンピオン！でも重たくて少しも持ち上がらないその男…調子を崩した胃袋を少しでも回復させようとこんな想像もしてみましたが、僕の頭の中はすぐに嫌いな給食を食べ切れなくて放課後になっても残されている子供みたいにラーメン鉢に挑む男の姿で一杯になってしまいました。

　こんな事を考えながら、いざ出てきたラーメンはとてもおいしく、気持ち悪かった気分もすぐにやわらぎました！目の前のラーメンに餃子と白ご飯という黄金トリオに気を良くした僕はここで一つの疑問を確かめてみようという気になりました。その疑問とはこの店の「替え玉」の出し方です。先述したように麺のみの替え玉が一般的ですが、スープもつぎ足してくれるなら替え玉８つもまだおいしくいただけたであろうという推測ができます。普段あまり沢山食べる方ではないですが勇気を出して追加注文です！「替え玉一つ！」

　胃袋は僕に「大丈夫かよ！？」と声をかけますが、まだスープは熱々でたっぷりと残り、こちらにはまだチャーシューも一枚控えています！ラーメンのもう一玉くらいどうってことないはずです。しかしながら「さあ来い替え玉！俺の胃袋においしく納めてやるっ！！」と意気込んでいたのははじめの数十秒で、替え玉を待つ１分を過ぎた辺りから僕の胃袋は急に満腹感を覚え、「ほらー！！」と言っているようです…どうも追加注文した時点で僕の欲求はすでに満足したようで、とどめのように「麺のみ」の替え玉が出てきた時、僕は完全にKOされました…今回一つはっきりしたことは、替え玉の味はやはり始めの一杯よりは落ちたように思われましたがその原因はスープどうこうというよりも完全に精神的なものということでした…「腹八文目」とはよく言ったもので、物をおいしく食べるには程々が良いって事が良く分かりました！２７歳にして…