川本ちょっとメモ

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安倍研究 (1) 政治の混乱の中で生まれた安倍総理就任記者会見

2015-04-02 23:06:34 | Weblog




2011年(平成23年)3月11日、東北地方太平洋沖地震が発生しました。原発事故という未曽有の人災に多くの人々が恐れおののき、大津波という未曽有の自然災害に多くの人々が亡くなりました。この東日本大震災に、日本中が深い悲しみに沈みました。

2010年(平成22年)9月7日、中国漁船が無法にも海上保安庁巡視船に体当たりするという事件が発生しました。この事件によって、日本人の対中感情と中国人の対日感情が共に悪化しました。2012年(平成24年)9月11日、尖閣諸島のうち魚釣島、北小島、南小島の3島が国有化されました。これ以後、日中関係が悪化します。


<短命内閣、六代つづく>

国内政治では、5年半つづいた小泉内閣のあと第1次安倍内閣が成立し、それ以後は短命内閣がつづきました。

  第1次安倍晋三内閣 平成18年9月26日~平成19年9月26日
  福田康夫内閣    平成19年9月26日~平成20年9月24日
  麻生太郎内閣    平成20年9月24日~平成21年9月16日
  鳩山由紀夫内閣   平成21年9月16日~平成22年6月8日
  菅 直人内閣    平成22年6月8日 ~平成23年9月2日
  野田佳彦内閣    平成23年9月2日~平成24年12月26日

小泉のあと、安倍~福田~麻生への内閣たらい回しにあきれた民心が、清新な政治を求めて民主党を選びました。その民主党の最初の鳩山総理が実現可能性のない「普天間基地県外移設」案で、余りにも軽い挫折の姿を見せて国民の失望を買いました。民主党外交の未熟な姿です。

菅直人内閣は不運にも東日本大震災に遭遇し、その対処に忙殺されるままに内閣の生命を終えました。菅第2次改造内閣の前原誠司国土交通大臣も、中国漁船による海上保安庁巡視船体当たり事件で、中国人船長を検挙しておきながら釈放するという一貫性のない未熟な外交の姿を見せました。野田内閣は尖閣国有化で日中関係を先鋭化させるという失敗を犯しました。外交だけでなく民主党内部の不統一などによって、国民の民主党への失望は大きいものでした。


<第2次安倍内閣スタート、安全保障への意欲強し>

上に掲げた6代の短命内閣への国民の失望を受けて、日本を再生させるべく第2次安倍内閣が誕生しました。

安倍首相は当初から大きな危機意識を持っていました。2012年(平成24年)12月26日の内閣総理大臣就任記者会見で、次のように述べています。

「国家、国民のために目前の危機を打ち破っていくという覚悟において、本日、危機突破内閣を組織いたしました。」

就任記者会見における総理冒頭発言の内訳は――
  ① 前置き部分     667文字  
  ② 日本海側大雪対策  193文字
  ③ 東日本大震災復興  375文字
  ④ 経済        388文字
  ⑤ 日米同盟・安全保障 502文字
  ⑥ 教育        202文字
  ⑦ 国土強靭化     162文字
  ⑧ その他       424文字
           計  2913文字

「最後に、繰り返しになりますが、この政権に課せられた使命は、まず、強い経済を取り戻していくことであります」。――安倍首相は、総理就任記者会見においてこのように語っています。

しかしながら、就任当初から安倍首相が真に危機感を抱き、強い関心を抱いているのは、「日米同盟・安全保障」の分野であることが上の文字数から読み取れます。

そして、2013年(平成23年)7月参議院選挙で自民党が勝利を得て後には、「日米同盟・安全保障」への傾斜に拍車がかかります。

   ◇   ◇   ◇

<安倍内閣総理大臣 就任会見 冒頭発言> ※官邸ホームページより
 2012年(平成24年)12月26日

 本日、第96代内閣総理大臣を拝命いたしました。先般の総選挙の結果を受けて、自民党、公明党で連立政権を樹立いたしました。今回の総選挙の中において、全国を遊説で回りながら、国民からの期待として、この政治の混乱と停滞に一日も早く終止符を打ってもらいたい、そういうひしひしとした期待を感じました。一方、まだまだ我が党に対して、完全に信頼が戻ってきているわけではない、政治全般に対する国民の厳しい目が続いていることを実感いたしました。その中で、内閣を発足し、一日も早く結果を出していくことで信頼を重ねていきたい、信頼を得ていきたい、そういう緊張感で今いっぱいであります。

 この3年間、民主党政治の結果として、経済においても外交・安全保障においても、あるいは教育、暮らしにおいてもさまざまな課題が山積をしておりますが、過去を振り返っても、あるいは前政権を批判しても、今現在、私たちが直面をしている危機、課題が解決されるわけではありません。我々は過去を振り切り、今から未来に向かって力強く第一歩を踏み出していきたい、こう考えています。

 国家、国民のために目前の危機を打ち破っていくという覚悟において、本日、危機突破内閣を組織いたしました。総裁や代表経験者あるいは次世代を担うリーダー候補に入閣をしていただきました。人物重視、実力重視の人事を行いました。危機突破のために十分にその力を発揮していただきたいと思います。

 この危機突破内閣の発足に当たって、全ての閣僚に対しまして、経済再生、復興、危機管理の3つに全力で取り組むよう、指示をいたしました。

 特に危機管理に対しましては、現在も北日本の日本海側では劇的な大雪となっており、大きな被害の発生も懸念されます。先ほど内閣危機管理監に対して、人命の保護を第一に警戒対応に万全を尽くし、今後の大雪対策に万全を期すべく、対策室の設置を指示いたしました。政権を担うことになった以上、その瞬間から、油断することなく、全力で危機管理に当たる責任があります。そのことを閣僚全員に徹底をいたしました。

 東日本大震災の被災地は、2度目の寒い冬を迎えています。いまだに32万人の方々が仮設住宅などで避難生活、困難な生活を強いられています。復興の加速化が何よりも重要であると認識をしています。被災地、とりわけ福島の現場の声に精通をした方に復興大臣になっていただきました。被災地の心に寄り添う現場主義で、復興庁職員の意識改革、復興の加速化に取り組んでいただきます。特に福島については、除染や生活再建など、課題は山積でありますが、新設をした福島原発事故再生総括担当大臣を中心に、関係省庁の力を結集して、国が前面に立って、国の責任において、福島の再生に取り組んでまいります。閣僚全員が復興大臣であるという意識を共有し、あらゆる政策を総動員してまいります。これにより、単なる最低限の生活再建にとどまらず、創造と可能性の地としての新しい東北をつくり上げてまいります。

 強い経済は、日本の国力の源であります。強い経済の再生なくして財政再建も日本の将来もありません。長引くデフレによって、額に汗して働く人たちの手取りが減っています。歴史的な円高によって、国内で歯を食いしばって頑張っている輸出企業もだんだん空洞化しています。強い経済を取り戻す、これはまさに喫緊の課題であります。経済再生の司令塔として、日本経済再生本部を創設いたします。経済財政諮問会議も再起動いたします。新たに経済再生担当大臣、デフレ脱却・円高対策担当大臣、産業競争力担当大臣を設けて、きめ細かな政策実施に向けた体制を整えました。

 内閣の総力を挙げて、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略、この三本の矢で経済政策を力強く進めて結果を出してまいります。頑張った人が報われる日本経済、今日よりも明日の生活が良くなると実感できる日本経済を取り戻してまいります。

 そして、国益を守る、主張する外交を取り戻さなければなりません。日中関係、日韓関係、そして日本の外交・安全保障の基盤である日米関係にたくさんの課題があります。

 アメリカ、ロシア、インド、ASEAN諸国など、世界地図を俯瞰するような視点で戦略を考えていくことが必要であります。総合力としての外交を戦略的に展開してまいります。

 何よりも、日米同盟の信頼関係を再構築しなければなりません。先日、オバマ大統領と電話会談をいたしました。その際、長期にわたって関係を構築していくことで合意をいたしました。日本外交の基軸である日米同盟の絆を改めて強化していくことが、日本の外交・安全保障立て直しの第一歩であると認識しております。

 総理として、国民の生命、領土、美しい海を守り抜いていくという決意を示していきたいと思います。今、この瞬間にも、尖閣諸島沖では、海上保安庁や自衛隊の諸君が日本の海や空を守っています。日本の安全保障は人ごとではなく、今、そこにある危機であります。新たに国家安全保障強化担当大臣を設けました。司令塔となる国家安全保障会議の設置など、内閣を挙げて、外交・安全保障体制の強化に取り組んでまいります。

 現在、子供たちの命と未来が危機的な状況にあります。いじめや学力の低下など、さまざまな問題により、危機に瀕している教育の再生は政治の責任であります。さきの安倍政権時代に教育基本法を改正いたしました。改正教育基本法のもとで公教育の最終責任者たる国が責任を果たしていく仕組みづくりなど、より具体的な改革を進めてまいります。子供たちに世界トップレベルの学力と規範意識、歴史や文化を尊重する態度を育んでまいります。

 一つひとつの国民の暮らしの不安を払拭していかなければなりません。安心社会をつくり上げることも安倍内閣の重要課題であります。笹子トンネル事故は、高度経済成長時代につくり上げられたインフラの老朽化に対する国民の皆様の不安を高めました。国民の命を守るため、また、日本の競争力を高めていくためにも、国土強靭化対策を進めてまいります。

 持続可能な社会保障制度の確立も喫緊の課題であります。三党合意に基づきまして、社会保障・税一体改革を継続してまいります。また、女性活力・子育て支援担当大臣を設置いたしました。女性が活躍をし、子供を産み育てやすい国をつくっていくことも安倍政権の使命であります。まず、隗より始めろとの精神に基づいて、党の4役のうち2人を有能な女性にお願いをいたしました。今回の人事でも、実力本位で、積極的に女性を登用いたしました。

 最後に、繰り返しになりますが、この政権に課せられた使命は、まず、強い経済を取り戻していくことであります。人口が減少していくから成長は難しい。確かに難しい条件ではありますが、成長をあきらめた国、成長していこうという精神を失った国には未来はないと思います。我々は、決断し、そして、正しい政策を実行することによって成長していく。明るい未来を目指して国民一丸となって進んでいく国づくりを目指していきたいと考えております。

 私からは以上であります。


<安倍研究シリーズ・リンク>
2015-04-02
安倍研究 (1) 政治の混乱の中で生まれた安倍総理就任記者会見
2015-04-03
安倍研究 (2) 日本防衛の対象は遠くインド・中東、アデン湾・ホルムズ海峡・インド洋・太平洋・南シナ海まで
2015-04-06
安倍研究 (3) 安倍首相の「積極的平和主義」は「強い日本」を志向する
2015-04-07
安倍研究 (4) 「積極的平和主義」への安倍首相の使命感は自衛隊に向う
2015-04-08
安倍研究 (5) 首相外交演説で「祝詞(のりと)ことば」! そこに安倍晋三の本性を見る
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安倍研究 (6) 東京育ちの長州人――敗戦で滅びた明治維新型日本のリメーク版をめざす
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2015-06-17
安倍研究 (12) 安倍「神道」政権そのもの――日本会議をご紹介
2015-06-23
安倍研究 (13止) アトランダムなまとめ――天皇と伊勢神宮を精神世界の頂点に置く


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<私のアピール>
2012年末の安倍政権成立以後の短年月、武器輸出3原則を廃し、特定秘密保護法の新設、憲法9条解釈変更の7・1閣議決定(集団的自衛権ほか)と、先行き不安な政策ばかり急激に推進されています。安倍内閣の政治手法は民主主義下の独裁と見えて、危険です。安倍総理退陣まで、来夏参議院選挙で自民党に“No”を。

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