『中国 危うい超大国』
スーザン・L・シャーク NHK出版 2008/3/30
・著者は、現代アメリカを代表する中国政治の研究家。
<弱い中国のほうが危険な理由>
・外から見れば中国は強力な蒸気機関車か何かのように見えるかもしれないが、指導者である胡錦濤の目には、脆弱で貧しく、国内問題の重量で今にもつぶれそうな国にしか見えないーそんな国をアメリカとしては恐れる必要などない、という理屈である。
<国際社会にとって危険なのは、中国の増大する国力ではなく、国内的な脆弱さなのだ。>
・最も可能性が高いのは、危機に直面した際に、中国の指導層が敵に対して威嚇を行い、その威嚇の虜となってしまうことである。一般市民に弱いリーダーだと思われないために威嚇を引っ込められなくなり、中国にとっても大惨事になっているとわかっている軍事行動に突っ走るのだ。
したがって、将来にわたって米中戦争を避けるためには、中国とアメリカ双方の政策当局者が、中国の国内的な危うさを理解しなくてはならないのである。
<中国が抱える国内問題>
・1億人以上の農民が都市部に流れている。労働力の4分の3は、すでに民間部門に雇用されており、政治的な監督はないも同然だ。また、2005年だけで、3千万人の中国人が海外旅行を行っている。
・大学卒の資格を持つ中国人の9割が、インターネットを通じて情報を入手しているということも共産党にとって問題となりうる。
・富裕層の絢爛たる生活ぶりと、貧しい農民や都市流民の悪戦苦闘の対照も、凄まじいものである。貧困層は、子供の学費も医療費も払えないのだ。この格差に多くの中国人が心底腹を立てている。しかし、一般市民は現在の中国で金持ちになるには、一生懸命働くことよりも、役人になって賄賂を受け取る方が早道だと考えるようになっている。歩行者に接触した高級車が、怒った都市群衆に襲撃されるという事件が頻発している。
・経済の市場化にともなって、かっての医療システムは、ほぼ解体してしまった。ところがほとんどの中国人は、医療保険など入っていない。かっては賞賛の的だった公衆衛生制度も崩壊状態にある。
・工業排水で河川が汚れたという理由で抗議デモがあちこちで起きている。大規模な環境被害は、大暴動をもたらすだろう。
・国営工場からレイオフされた労働者の抗議デモは、毎日のように報道される。農村の騒擾も広がっている。
・歴代の王朝が農民反乱によって崩壊していることをよく理解している共産党は、農村部に投入する資金を増やして、農民の生活状態を少しでも改善しようと必死だ。
・中国の指導層は、このナショナリズムの熱狂をうまく制御できなくなれば、政府は世論に尻をたたかれるようにして戦争に突入するか、それとも清や中華民国と同様、崩壊の運命をたどることになるだろう。
・共産主義がイデオロギーとして機能しなくなっている現在、中国は愛国主義と民族主義の電流が流れるような具合になっている。
・経済成長が損なわれれば、あっという間に何百万という数の労働者が職を失い、都市部でも農村部でも暴動が頻発するようになるだろう。
<中国はどうすれば事態を改善できるのか?>
1、 党と政府は攻撃的なナショナリズムの促進をやめる
2、 友好的なナショナリズムを促進する
3、 民間企業の発言力を強める
4、 軍に対する文民統制を強める
5、 マスコミに対する党の指導を弱める
6、 台湾政府と対話する
私が思うこと、聞いたこと、考えること
・21世紀の前には、メディアには「第3次世界大戦の予言」ものがかなり幅をきかしておりました。しかし、その予言がすべて誤りの結果となりマスコミも全く沈黙してしまいました。当時は米国とソビエト連邦との東西冷戦中の核戦争シナリオでした。その懸念もキューバ危機で最高潮に達したようです。赤の広場をパレードするソ連軍の核兵器ミサイルは圧倒的でした。
・その後、ソビエト連邦の経済の崩壊に伴い、ソ連は多くの国に分割され、米国だけが唯一の超大国になりました。ロシアの西側諸国への対決姿勢も弱まっているようです。
・またそろそろ「第3次世界大戦」の予言の書籍が、出てくるようになり始めました。やはりイスラエルとの中東情勢の懸念が言われております。また、中国発の第3次世界大戦の懸念もささやかれています。近未来では発展途上国への核兵器の拡散もすすむと思われますので、その危険性は一層、高まるようです。
・「米中戦争」の可能性は、よく議論されているそうです。昔は中国にはかなり強硬な軍幹部もいて、戦争恫喝をよくしていたそうですが、今はどうでしょうか。かなりの損害も覚悟していたようです。現代では米中軍事交流もすすんでいるようで、軍事衝突の懸念も表面化していないようです。しかし、「中国軍の制服組トップ、『戦争を準備せよ』と檄、尖閣、南シナ海の領土・領海問題で」ということで、米中決戦を準備しているのかもしれませんが。「人民解放軍は米軍と軍事衝突をする事態になれば必ず核兵器を使う」といわれているそうです。「シリウス星人の地球支配があまりにも巧妙なので戦争がしょっちゅう起きる」そうですが。
・米中戦争のシナリオとしては、中国の国内問題が先鋭化して内乱などの騒擾が激しくなると台湾侵攻などの対外戦争で国内のナショナリズムを高めて、国民の関心をそらす手法が使われる可能性があるようです。その際に米軍と対峙して、通常兵器の戦闘から、核ミサイルを使用する全面核戦争に突入するというシナリオです。
・「最も可能性が高いのは、危機に直面した際に、中国の指導層が敵に対して威嚇を行い、その威嚇の虜となってしまうことである。一般市民に弱いリーダーだと思われないために威嚇を引っ込められなくなり、中国にとっても大惨事になっているとわかっている軍事行動に突っ走るのだ」と著者が述べているように、シナリオは描かれているようです。今までの米中間のやりとりは、私たち一般人は分かりませんが、どのようなものだったのでしょうか。
・「核兵器を使えば人類が滅ぶ。核兵器は使えない兵器だ」という合理的な思考は、解放軍にはないようで、使える兵器として、戦争シナリオを描いているそうです。13億人を食わせるという膨大な人口の重圧がそのようにさせるようです。13億人を食わせられないから対外戦争に打ってでるという戦争シナリオとは?内乱を抑えるために米中戦争もするという『19世紀の国家』中国とは人類の難題なのでしょうか?!もちろん米軍も対抗の戦争シナリオを準備していることでしょう。
・現在、中国では暴動が頻発しているようですが、この騒擾が内乱になるようでしたら、危険性が高まるようです。大衆の恨みが共産党に向けられる前に、対外戦争に打って出る危険性があるそうです。経済的にうまく回転しなくなり、失業者が増えて社会不安にいたる恐れがあるそうです。武装警察の数もかなりのもののようですが、抑えきれるのでしょうか。経済的にうまくいっていないことは、誰の目にも明らかになったようなのですが。暴動の頻発は、共産党に対する民衆の怨念がいかに凄まじいかが窺われるそうです。
・中国の富裕層や支配階層の一族が、多額の資金を持って海外への移民を試みているという報道は、中国でこれから起こることの前兆として見るべきなのかもしれません。
・「内閣が11月24日に発表した『外交による世論調査』によると、中国に対して「親しみを感じない」と答えた人は、「どちらかというと感じない」を含めて前年比9.2ポイント増の80.6%となった」そうですが、一般市民も国際政治の動向から『中国 危うい超大国』を敏感に感じ取っているのでしょうか。
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