亀田司法書士ブログ

越谷市の亀田司法書士事務所のブログです

委任状は自筆でないと無効?(2)

2016-09-30 17:14:12 | 遺言・相続

私の思う偽造防止に有効な方法は,委任状による申請の場合には,その中から無作為に,委任状による申請があった旨を委任者本人宛に通知することを,申請者(受任者)に警告することです。もちろん,委任状には実印押印,印鑑証明書添付が望ましいのですが,この方法では申請人の負担が大きすぎます。


以上の方法によっても偽造を全部防ぐことはできません。しかし,本人宛通知され,その時に偽造が発覚することを偽造者は認識するのですから,相当の牽制になると思います。


さて,委任状を自筆で書いてもらうメリットは,筆跡鑑定等により,後で本人が委任した旨を否認できなくなることで,これは自治体よりむしろ受任者側にメリットが有ります。


仮に委任を受けていない場合,自治体が署名の委任状の交付を求めても,その書類に本人の署名がされることはありません。

ですから,いくら署名による委任状を求めても偽造を防ぐことにはなりません。むしろ,病気等により署名が困難な人の,委任行為を閉ざしてしまうことにもつながります。


要式行為でない委任契約に署名を求めることは,法律の規定にないことを強いることになり,適正とはいえません。
また,交付を求められた自治体に,法律の範囲を超えてまで偽造を防ぐ義務を負わせているとも思えません。


ですから,自署による方式を強制するのではなく,偽造防止には,一定の限界があることを踏まえた上で,最も有効な偽造防止手段を考慮してみてはいかがでしょう。


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委任状は自筆でないと無効?(1)

2016-09-20 15:53:02 | 司法書士の日記

個人情報の有用性と保護を目的とする個人情報保護法が2005年4月1日から施行されました。これ自体は,時代の流れに沿ったものだと思います。ところが,この運用につき過度に神経質になり混乱も起こりつつあります。

さて,私達司法書士は,不動産の所有権移転登記を受任することが多く,その際は,固定資産評価額証明書の取得が必要になります。

通常,評価証明といっていますが,一般の方が交付申請することはめったにありません。そこで,その交付及び受領の委任を受けて,交付申請をすることになりますが,最近,自筆の委任状を求める自治体が散見します。

ただ,根拠は何なのでしょう? 民法643条の委任の規定には,法律行為の委託と受諾により効力を生ずるとなっていて,それ以外の要件は記載されていません。

例えば委任者の氏名住所等が全文印刷されていて,これに認印が押印されたものでも法律上有効なはずです。すると,そんなものでは,誰でも作成できるから,真に委任したかどうか証明できないのではと思う人が出てきます。

では,署名してあれば,真に委任したことの証明になるでしょうか?委任者が署名したものであれば,後日筆跡鑑定等により本人の作成は確認できます。

ところが実印と異なり,各人の署名を保存している自治体は皆無でしょう?ですから,署名したものであっても誰が書いたかが,その場では確認できません。

ですから,署名していても,100%本人の委任意思を証明するものとはいえないことになります。では,どのような方法が有効と思われるでしょうか? (続く)

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民事執行法改正へ

2016-09-13 14:05:22 | 司法書士の日記

世の中には,裁判で支払えとの判決を受けても,支払わない人が相当数います。判決を得ながら債権回収ができなかったことがあると答えた弁護士は,全体の8割もいたそうです。

債務者が任意に支払わなければ,民事執行手続を行わざるを得ないのですが,勤務先とか銀行口座を知っている場合は,差押申立書を容易に作成できるのですが,知らない場合は,債務者の財産を自ら調査して特定する必要があります。

債務者の財産を明らかにする方法として,財産開示手続の申立制度が設けられましたが,これに応じない場合の罰則(過料30万円以下)がゆるく,実効性がないと言われていきました。

そんな中法務省は,支払わない債務者の預金口座情報を,裁判所が銀行などに照会できる制度の検討を始めたそうです。

仮にこの制度が施行された場合,一定の資産があると思われる債務者に対しては,執行が奏効する可能性が高くなり,これにより,裁判の利用価値も高まります。

今までは,裁判を起こすにあたり,払わなかった場合の差押えるべき資産は,判明していますかと聞いていましたが,これからは,少しこのハードルが下がった感じがします。

但し,資産がほとんど無い人に対してはどうにもなりません。「ない袖は振れない」 という格言そのままです。

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