劇団ひとり「陰日向に咲く」

　しまった、不覚にも泣いちまったじゃないか・・・。
そして裏表紙を閉じて帯を見たら「泣いてもいいですよ」と書いてあった。
なんだいいのか・・・

私は今までの人生において、あるひとつのものに起因する「涙」をとてもとても避けて生きてきた。いや卒業とか失恋とかそういうのは全然いいのだ。実際じゃぶじゃぶ泣いてきた。私が意識してとても避けてきた「涙」は親子の情にまつわる涙。なんでかというと、つまりそれが実は私のど真ん中なんだよな。割と自分を茶化して生きている私の、心の中の一番やわらかく生暖かく弱い部分なんだ。
そしてそこに、劇団ひとりはストレートを投げてきた。

ここには、それ以外にも様々な関係が見事にリンクされて描かれているのだが、ここに登場する人間達、はっきり言ってダサい。辛気臭い。冴えない。もうやめてよ！って思う。そして痛いほど純だ。
そして誰もがふと気付く。自分じゃないかこれは・・・と。誰もがきっとそうなのに取り繕ったり隠したり、すかしてる生き様を、すーっとレントゲンみたいに映し出している。絶妙なさりげなさを装って。

ひとりさん、私はあんたがモーゼに見えてきたよ。ハードボイルドもいいけど、生卵も嫌いじゃない。