昭和少年漂流記

破壊、建設、発展と、大きく揺れ動いた昭和という時代。大きな波の中を漂流した少年たちの、いくつかの物語。

第三章:1970~73年 石ころと流れ星  86

2012年07月24日 | 日記
三人のセクトの仲間と順に会い、京子がそのうちの二人とも関係があったことが分かった。上村に言わせると、高校の後輩が“僕の彼女です”と三枝のアパートに連れてきた京子を、彼らが泊まったその夜に三枝が自分のものにしてしまったことから、すべては始まったという。 京子は、異変に気付いた恋人に、翌朝小さな鋭い声で詰問され、なじられた。泥酔し眠りこけていた彼と、彼がそばにいることを巧みに . . . 本文を読む

第三章:1970~73年 石ころと流れ星  85

2012年07月05日 | 日記
残った4人を沈黙が支配すること10分。上村の「今夜はもうええか。進展なさそうやし。三枝さん帰ってきいひんやろうし」の言葉で、一気に解散となった。 桑原君も腰を上げようとすると、「あ、ちょっと待って、桑原君」と京子の声が引き留めた。 「先、行くで」と待つ気もない上村たちに手を振り、「なんですの?」と振り向くと、京子の手に一冊の本があった。 「読んでみたら、って言ってたでしょ?“セブ . . . 本文を読む

第三章:1970~73年 石ころと流れ星  84

2012年07月04日 | 日記
「小杉さんの気配には会えたんやけどな。本人には結局、一度も会われへんかってん」 ドヤ街に行った目的がすり替わっていくのを自覚しつつ、桑原君は自分の居場所を小杉さんとの接点に求めていた。 「いつもすれ違いなんや、あの人とは」 桑原君は、溜息をついた。 「京子のことも、聞いて欲しかったんやけどなあ」 桑原君は、もう一度溜息をついた。今度の溜息は深かった。 僕は、桑原君を探して僕の住み込みの . . . 本文を読む