ジャン・アレチボルトの冒険

ジャンルを問わず、思いついたことを、書いてみます。

舞台『PLUTO』は鉄腕アトムたちロボットの物語も、人間の心の光と闇を描いた秀逸なダンス演劇 [01Feb15]

2015-02-01 19:30:00 | 芸能
注目の乃木坂メンバー出演予定番組

毎週、水曜夜10時!
2月4日(水) 22 : 00 ~ フジテレビ『残念な夫。』第4回
生田絵梨花が出演する連続ドラマ。
『残念な夫。』の公式サイト

次の土曜日、夜11時30分
2月7日(土) 23 : 30 ~ 23 : 59 NHK BSプレミアム『AKB48SHOW!別冊 乃木坂46SHOW!』
(再放送) 2月8日(日) 10 : 30 ~ NHK BSプレミアム
シリーズ第5弾。今回も見どころ満載で、ファン必見、必録の内容!

生田絵梨花がアルバム収録のソロ曲「あなたのために弾きたい」をピアノで弾き歌いするようで、西野七瀬の「ひとりよがり」と共に、テレビ初披露です。

さらに、前回好評の『かわいいメイド』コントは、宅配ピザ編で、秋元真夏、星野みなみ、伊藤万理華、堀未央奈、井上小百合の5人が、再び、六角慎司に襲いかかります(笑)。

何と言っても、テレビでほぼ初めてみなみの芝居が流れ、個人的にも、絶対に見逃せません。まりっかの当たりの強いツンデレ、指でご主人様の口元に付いたケチャップを掬い取る堀ちゃんと共に、期待感が野放図に膨らんでいて、念のため、再放送も録画しようかとすら、考えています(笑)。

番組公式サイト
詳しい内容予告を掲載。また、『かわいいメイド』コント出演者へのインタビューなど、動画も充実していて、すでに、このサイト自体が楽しい。



昨日、渋谷BUNKAMURA、シアターコクーンで上演中の『PLUTO』を観てきました。

今回の記事は、その感想がメインで、乃木坂要素は少量です。

ただ、最後に、生田絵梨花の主演ミュージカル『虹のプレリュード』の話が出てくるので、乃木坂ファンの方はその辺を楽しみにして頂ければと(笑)。


『PLUTO』は、浦沢直樹氏が手塚治虫原作の『鉄腕アトム「地上最大のロボット」』をリメイクした作品で、「ビッグコミックオリジナル」に2003年から09年まで連載され、850万部を越える売り上げとなった、彼の代表作のひとつです。

アトム外伝とでも言うべきストーリーで、実際に、戦闘シーンが出てきますが、それがメインというよりは、悲しみや怒りの感情を理解し始めたロボットたちを通し、人間が持つ心の光と闇をえぐるような、シリアスな心理ドラマの側面が強い。

また、一般市民を巻き込んだ戦争が、憎しみの連鎖を生むというテーマが中心に据えられていて、大量破壊兵器の保持を理由に始められたイラク戦争が、物語のベースになっています。


今日のニュースによると、イスラム国による邦人人質事件は、最悪の結末となった可能性がありますが、舞台『PLUTO』は、なぜ中東から、残忍なテロ事件が相次いで起こるのかという、あまりにタイムリーな疑問に、ストレートに向き合う内容でした。

イスラム国は、ISISと呼ばれ、これは「Islamic State in Iraq and al-Sham」の頭文字を取ったもので、「イラクとシリアのイスラム国」という意味です。

リーダーは謎の多い人物ですが、最近、ある海外メディアが報じたところによると、フセイン政権下で与党バース党に所属していたそうです。

ただ、もともとはイスラム過激派とは無縁の一般人だったけど、イラク戦争でアメリカ軍に捕えられ、一時期刑務所に入っていたとき、そこで筋金入りのテロリストたちと知り合い、テロを肯定する思想に染まっていった可能性があるとのことです。


アメリカを中心とする「有志連合」が始めたイラク戦争とその後の占領は、大量破壊兵器の開発保持を阻止し、さらに独裁者の圧政から市民を解放して、イラクと中東、そして世界に平和をもたらすことが目的の筈だった。

ところが、現実には、大量破壊兵器はなく、国家は統制を失い、多くの市民を巻き添えにする戦闘やテロが多発、暴力の連鎖の中、イラクはテロリズムの温床となってしまった感があります。

フセイン政権では、政府による弾圧はあったものの、無秩序なテロはなかったことを考えると、戦争前のイラクより、戦争後のイラクの方が、より深刻に、世界の脅威となってしまったと言わざるを得ません。

とくに、2011年、アメリカ軍が完全撤退した後、権力の空白が生じ、その間隙を縫うようにイスラム国が台頭して以降、テロリズムが国境を越えて、蔓延している印象がある。

イスラム国と袂を分かったと言われるアルカイダが、パリでの新聞社銃撃事件を引き起こすなど、イスラム過激派の動きが活発化、イラクだけでなく、どこにいても、テロに遭遇する危険があるような、騒然とした世界になりつつあり、その中で、イラクにおける邦人人質事件が起こってしまった。


イスラム国のリーダーと目される人物は、戦争によって引き起こされた悲惨な祖国の現実を目の当たりにして、刑務所で仕入れた過激な思想が、自身の中でどんどん膨張していき、それを実行に移すように変貌していったのかもしれない。

舞台『PLUTO』の中で、戦争で子どもを殺された親の話が何度も出てきます。

そういった憎しみが、PLUTOという怪物を生み出し、世界各地で暗殺事件を引き起す物語になっていて、イラク戦争が始まった2003年の作品ながら、現在のイスラム国によるテロを予見するかのようです。

原作者の洞察力に驚くと同時に、同じことを何度も繰り返す人間の虚しさを、自分の内面も含めて、えぐられている気分になります。


話の中心軸には、こういった深刻な悲劇が置かれてるけど、舞台『PLUTO』はシリアスな物語展開以外にも、見どころの多い作品でした。

まず、出演者の顔ぶれが豪華です。

アトム役は森山未來、お茶の水博士は吉見一豊、アトムの開発者である天馬博士を柄本明、主役級の活躍をする欧州の刑事ロボット、ゲジヒトに寺脇康文、アトムの妹ウランとゲジヒト妻の二役を永作博美、PLUTOを生み出す科学者アブラー博士が松重豊と、テレビ、映画に活躍している人気俳優がひしめいている。

私は、テレビ東京『孤独のグルメ』が好きで、生で松重豊さんを観るのを楽しみにしていたのですが、やっぱり、背が高かったです(笑)。


演出・振付は、シディ・ラビル・シェルカウィ氏、父親がモロッコ人、母親はベルギー人だそうで、モダンバレエを専門としており、パリオペラ座バレエ団に『ボレロ』を振り付けるなど、世界的に活躍されています。

『PLUTO』でも、随所に本格的なダンスが出てきて、単なる芝居ではなく、ダンスミュージカルと言っていいくらい、踊りを堪能出来ます。

また、アトム役の森山未來は、ダンサー出身の俳優で、感情を爆発させるシーンや戦闘シーンなど、要所要所でダンスを披露していきます。

とくに、アトムが空を飛ぶ表現を、バレエのリフトのようなフリで見せていたのが印象的でした。

物語ではイラク戦争をベースにする一方、演劇表現の根底にはバレエがあって、非常に斬新で、チャレンジングな劇だと感じました。


斬新というと、セットもよく工夫されていて、とくに大きな白いパネルを組み合わせて、さまざまな舞台装置を、その場で作り出していく演出には驚きました。

また、そのパネルにおそらくプロジェクターで画像を投影、コンピューターの画面にしたり、物語や登場人物を浦沢直樹氏のマンガで見せたりと、劇中、縦横無尽に使われていました。

部屋を表現するセットも、細かな小道具を排し、シンプルかつ抽象的に作っていて、それらが近未来SF的な独特の雰囲気を、舞台空間に与えていたと思います。

基本的にシリアスな悲劇なんですが、こういうリアル感のないセットが、観客を深刻にさせ過ぎない役目を果たしていて、巧妙な配慮なのかもしれません。


個人的に、出演者で一番インパクトを感じたのは、天馬博士を演じた柄本明です。

いわゆる「食えない奴」で、息子をひき逃げの交通事故で亡くすという過酷な体験をするうち、優しさや思いやり、愛と平和といった理想をいくら唱えても、結局、何も解決しないという徹底したリアリストになっている。

心が悲しみで一杯になると、人間は夢を信じない、シニカルな現実主義者になるようです。

そして、憎しみに対抗出来るのは、憎しみしかないのだと、怒りの感情を理解するロボットとして、一度死んだアトムを復活させる。

人間感情の表だけでなく、裏の部分にも踏み込んでいく様子は、圧巻の芝居で、柄本明の演技力をあらためて感じました。


かつて唯一人間を殺した経験のあるロボット、ブラウ1589の声も、柄本さんが担当しています。

自身の中に芽生えつつある怒りの感情を無視しようとするゲジヒトに対して、「君はもう分かっているのだろ」と、それと向き合うよう促すなど、ブラウも「本音」の部分に目を向けさせる役割になっている。

高山一実が出演した1月29日(木)のテレビ朝日『しくじり先生 俺みたいになるな!!』は、元大事MANブラザーズの立川俊之氏が講師で、平成ノブシコブシの吉村崇が「あんた天才だよ!」と絶賛するほど、猛烈に面白かったですが、やはり「本音」というのは、強い力を持っていると証明するようなトークでした。

作詞作曲した「それが大事」の大ヒットのあと、さまざまな経験を通して、「とは言ってもねえ」「歌で伝えたいことがない」など、本音と向き合話わざるを得なくなった立川さんは、天馬博士とちょっと似ているかも、などど芝居を観た後、考えてしまいました(笑)。


舞台『PLUTO』は、テンポ良く進む物語、圧巻の演技力、ハイレベルなダンス、工夫を凝らした舞台装置によって、見どころ満載に仕上がった作品で、上演時間は15分休憩の3時間という長丁場でしたが、それを感じさせないくらい、面白かった。

殺人事件を追う、謎解き的な要素も入っている筋立てで、読者を引き込む原作の魅力が、劇に上手く引き継がれていて、その上に、舞台独自の表現を加味したことで、厚みのある演劇になっていたと思います。

しかし、個人的に物足らないと感じた点が、二つあります。

一つは、テーマとして、色々なものを詰め込み過ぎて、焦点がぼやけている印象を受けたことです。


例えば「憎しみには憎しみでしか対抗出来ない」という主張の一方で、人の心には「憎しみの連鎖を断ち切る力がある」という話も出てくる。

で、結局、どちらが正しいと考えているのか、あるいは、その矛盾をどう受け止めるのか、監督の意図がちょっと見えにくい。

また、ロボットが憎しみや悲しみを理解するのは、壮大な知的テーマですが、本質的にそれは可能なのか、可能だとすれば、人間の心はプログラム的な集合体なのか、そういった部分での議論をもう少し観てみたいとも思いました。


カメラの開発は、人間の眼の仕組みを理解するのに、役立ったという話がありますが、ロボットがどんな感情を持つかは、人間の心を解明するのに、大きなヒントになるかもしれない。

昨夜の舞台では、ロボットが人間らしい感情を持てることに、スポットが当てられていたけど、逆に、どうしても持てない感情があったとすれば、それは何で、なぜなのか、その辺を描けば、より深く人間を眺める視点になったんじゃないでしょうか。

浦沢直樹氏の『PLUTO』は、7年間に渡って連載された壮大な話なので、テーマが多岐に及ぶのはやむを得ないけど、それを3時間でまとめるのなら、集中的に掘り下げるテーマを絞り込んだ方が、もっと分かり易かった気がします。


テーマが多過ぎる以外で、もう一つ残念だったのは、「笑い」がほとんどなかったことです。

テレビ朝日「相棒」で、初代相棒である寺脇康文さんが刑事役なのだから、「右京さんには、負けますがね」なんて台詞を、ちょっと期待してました(笑)。

あるいは、松重豊がコーヒーを飲んで、「上手いな、ゴローちゃんに教えてあげなきゃ」とか言ってくれたら、個人的には、どっかんどっかん受けますね。

シリアスな劇で、しかも原作があるので、その世界観を壊すまいと、笑いは控えたのかもしれません。

しかし、3時間に渡って、深刻なステージが続くのは、観ている方としては、なかなか厳しい部分があって、出来れば、1時間に1回くらいでいいので(笑)、ちょっとした笑いを入れてくれれば、リフレッシュして、より芝居にのめり込めたかなという気がします。

原作のファンの方には、イメージがあると思うので、笑い成分抑えめは分かるし、著作権の問題があるので、『相棒』『孤独のグルメ』など、出演番組のネタは、使えないかもしれないけど、笑いゼロっていうのは、さすがに寂しいなと。


舞台『PLUTO』は、BUNKAMURAでの公演は今日が千秋楽で、3週間に渡る東京公演が幕を閉じます。

そして、2月6日(金)から大阪公演が、森ノ宮ピロティホールで6日間行なわれるようです。

昨日は、開場1時間前に、当日券を求める方がかなりの人数、50人は越えていたと思いますが、順番待ちの列を作っていて、立ち見席も用意されていました。

相当に人気のある劇のようで、確かに、1万円払っても、観て損はない内容だったと、私は思いました。


ただ、個人的には、同じく手塚治虫原作である、生田絵梨花主演『虹のプレリュード』が、自分が観た演劇の中では、数は少ないですが(笑)、No. 1だと思っています。

もちろん、乃木坂ファン、生田ファンとして、贔屓目はたっぷり入っていますが、ロシア軍の圧力がじわじわ高まっていく、あの迫力は尋常ではなかった。

他国を武力で占領するなんて、絶対にやっちゃいけないなと、大統領でもないのに、じみじみ思ったほどですから(笑)。


こうして考えてみると、手塚作品には、戦争の現実が背景にあるものが、少なくない気がします。

太平洋戦争が終わったのは、彼が16歳のとき、そして、その後の5年間、高校から大学時代は、GHQによる占領期と重なっている。

占領期間中、道ばたで出会った黒人兵に、とくに理由もなく殴られたというエピソードを聞いたことがあるけど、手塚治虫の心に、戦争は深い傷跡を残した可能性がある。

しかし、彼が素晴らしいのは、その苦い体験を、憎しみに変えるのではなく、平和を求める、さまざまな物語を生み出す方向に振り向けたことじゃないでしょうか。

もし、自身の戦争経験が数々の名作を生んだのだとすれば、手塚作品の存在こそが、憎しみの連鎖を断ち切る、人間精神の希望と言えるかもしれません。

「芸術は無力だ」というのは、『虹のプレリュード』での台詞ですが、本当に、ただ無力なだけなのか、手塚治虫の問いかけは、これからも、時代や国を越えて、繰り返し問われ続けていくのでしょう。


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# 記事中の青字部分は、テレビ番組、公式サイト、書籍、歌の歌詞などに、掲載されたものを、そのまま抜粋引用したことを表しています

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