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News Week 「ドイツの「脱原発」実験は成功するか」-海馬之玄関は「No」に80点!

2011年06月05日 22時55分00秒 | Weblog


Fukushima Shock を受けてドイツは原子力発電から撤退するとのこと。馬鹿げた選択だと思います。Fukushima を見定めて、例えば、サウジアラビアが大規模な原発建設に最終的に舵を取ったように、今まで五里霧中だった「原発リスク」なるものがより明確になった今こそ、人類史は原子力エネルギー開発の時代に突入することは必定。その過程で、それほど確たる科学的根拠の乏しかった「被曝許容値」なるものも大幅に引き上げられることもまた火を見るより明らかだと思いますから。

そういえば、観念的な人というのは観念の方に現実よりより強いリアリティーを感じるものなのですと、確か、京都大学の加藤新平先生か、網野善彦さんだったか、長尾龍一さんだったかに伺ったことがある。

蓋し、ドイツの選択は、喩えれば、地球が丸いことが明らかになりつつある時期に、「世界の果てで、ドイツの船舶が世界の谷底に落ちる危険を回避すべく、今後、新大陸に向かう民間航路はインド洋・太平洋を通る東側航路しか認めない」という法律を制定する愚に匹敵する。その馬鹿げた法律に、歓喜するドイツ国民とは何者なのか。蓋し、流石、「神聖」でも「ローマ」でもなく、まして、「帝国」ですらないと揶揄されながらも、800年以上の長きに亘って費用持ち出しでイタリアに駐留した神聖ローマ帝国の末裔ということか。

而して、地上には最早存在しない<ローマ帝国>の栄光に現実の国際関係よりも強いリアリティーを感じてきたドイツ人。所詮「この世に絶対の安全などなく、もし、あったとしても人間が社会的に生存していくためのコストにそれが見合わなければ、ほどほどに見積もったリスクと人類は添い寝していくしかない」という赤裸々な現実を看過して、人間が、よって、それが形成する国家権力が有限なる人間存在を超越する<自然>を制御できると考える<人間の万能感>や<権力の万能感>がいよいよ盛んなドイツの姿を見るにつけ私は、「観念的な人は、観念の方に現実よりより強いリアリティーを感じる」という命題の正しさを痛感せざるを得ません。

それとも、国際法の歴史の中でこれほど見事に「戦争責任」と「戦後責任」を果たした例はない日本とは違い、(冷戦の最前線に位置したという地政学的利点を奇貨として)第二次世界大戦の戦後処理を「ナチスドイツというならず者集団のユダヤ人に対する迫害」の一点豪華主義で済ましたことにしてきたドイツの偽善的なご都合主義とこれは通底しているのでしょうか。





畢竟、<自然>、就中、グローバル化の昂進著しい資本主義の拡大深化を前にしては脱原発政策などは塵に同じなのです。他方、福島どころか浜岡どころか、今後もし、一国を遥かに超える規模の原発事故が惹起した場合、現在の年間積算ベース1~100ミリシーベルトなる放射線被曝許容値など誰もどの国も守りようがない。

そのような事態においては、その数値にさしたる科学的根拠がない放射線被曝許容値は、忽ち、年間積算ベース2500ミリシーベルト程度に引き上げられることになるでしょうし、一国の国民の社会的生存を不可能にする戯けた年間積算ベース100ミリシーベルトなる数値を国際法も誰もその国と国民に強要できるはずもないのです。  
  
蓋し、20年後、30年後の甲状腺癌が発病する確率的な危険性などよりも、文字通り、今日明日の命をつなぐための水と食糧、国民国家としての社会的機能の維持の方が遥かに重要なことは間違いないでしょう。今、この瞬間にも10億を越える子供達が飢餓に瀕している世界の現状を想起するにつけ私にはそう思われる。而して、畢竟、化石燃料を補うものとして、原子力以外に当座有力なエネルギー源がないこともまた自明ではないでしょうか。

ならば、日本はドイツが脱原発の方に向かうこの隙に、いよいよ原発の推進に舵を取るべきである。と、そう私は考えています。尚、このイシューに関する私の基本的な考えについては下記拙稿をご一読いただければ嬉しいです。以下、ドイツの脱原発路線を俎上に載せたNews Weekの記事の転記紹介。

   
・放射線被曝の危険性論は霊感商法?
 -生き物たちも、そしてリスクたちも、できれば公正に扱ってあげたい
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/60504829.html

・事故を乗り越え福島とともに進む☆原発推進は日本の<天命>である
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/60450789.html

・社会現象として現れるであろうすべての将来の原発問題への序説
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/60454892.html

・魔女裁判としての放射線被曝危険論
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/60493326.html

・放射能の恐怖から解脱して内閣不信任案の可及的速やかな提出を!
 http://blogs.yahoo.co.jp/kabu2kaiba/60484515.html






物理学者でもあるドイツのアンゲラ・メルケル首相は、普通の政治家より原子力発電のリスクを冷静に判断している。福島第一原発の事故の前後で、ドイツ国内の原発17基の危険性が変わったわけではないと分かっている。

しかし政治家としては、原発のリスク判断を変えざるを得なかった。メルケルは5月30日、早急な原発廃止を求める国民の要求に応え、国内のすべての原発を2022年まに全廃すると発表した。ドイツはこれで、1986年のチェルノブイリ原発事故後に国内すべての原子炉を停止したイタリア以降、先進国としては初めて、脱原発に向かう国となる。

ドイツでは現在、原子力が電力供給の約4分の1を占め、製造業が牽引する国の経済を支えてきた。その原発停止で失われる電力の大半は、風力や太陽光など再生可能エネルギーで代替していくという。

ドイツの試みは、クリーンエネルギーへの道を模索する世界にとって、極めて重要な「実験」になると専門家たちは指摘する。ドイツは既に、経済力を維持しながら「エコ国家」になることに成功している。そのペースについては激しい議論が行われてきたものの、クリーンエネルギーへの移行は政治的合意も取れている規定路線。国民の間でもクリーンエネルギーへの支持は大きく、原子力への不信感は昔から根強い。    





◆インドや中国のエネルギー政策への試金石

そういった素地が整っているドイツが脱原発に失敗すれば、世界に悪いメッセージが示されることになると、ドイツ外交政策協会研究所のマルセル・ビートル(エネルギー・環境問題専門)は言う。

「(原子力から再生可能エネルギーへの)移行は可能だという先例と、その方法を示す歴史的なチャンスだ」とビートルは言う。「国家としての競争力を損なわず、経済成長の妨げにならずに実現することは可能なのか? 堅調な成長を減速させたくないと考える中国やインドなどの新興国にとっては重要な問題だ。もしわれわれが失敗したら、誰が同じ道を進もうとするだろう。失敗すれば世界レベルで悪影響をもたらす」

ドイツ国民の多くも、今回の試みを「賭け」だと思っている。メルケルにとって脱原発を宣言することは、これまでの政策を180度転換させる「大きな挑戦」だ。メルケルは昨年、既存原発の稼動年数を平均12年延長する決定を下したばかりだった。

現在のドイツは電力供給の約23%を原子力に頼っており、再生可能エネルギーは17%、石炭火力は50%、天然ガス火力は13%だ。今後の目標は、2020年までに再生可能エネルギーの比率を35%に引き上げること。移行期の原発停止による不足分は、天然ガス火力を増やすことで補う考えだ。

5月30日、メルケルはこの計画を「エネルギー革命」だと絶賛した。これは未来の世代にとって「大きなチャンス」であり、ドイツを国際舞台の主役に押し上げるだろうと彼女は語った。

全体的としては、ドイツは今後10年間での自然エネルギーへの移行計画に前向きなようだ。メルケルにとっては脱原発への路線変更になるが、彼女の前任者ゲアハルト・シュレーダー首相(当時)が2000年に打ち出した段階的な原発廃止計画に立ち返っただけともいえる。

「現実的で、実現可能な計画だ」と、ドイツ経済調査研究所のエネルギー・交通・環境部門を率いるクラウディア・ケムフェルトは言う。「多くの企業が同意した(シュレーダー時代の)脱原発路線に戻ることになる」

とはいえ、この計画を実現させるには、電力網の拡大や、電力の需給を自律的に調整できる送電網「スマートグリッド」の導入といったインフラの抜本的な見直しを迅速に行う必要があると、専門家は指摘する。風力などの発電施設を大量に新設する際に予想される「うちの近所には作るな」という反発にも備えなければならない。

当然ながら、電気料金が上昇する可能性への懸念も浮上している。新たなインフラと火力発電所を整備するために、一定の値上げが必要なことは、政府も認めている。    





◆政治的動機に駆られた拙速な判断との批判も

問題は、電気料金の値上げがドイツ経済に与える影響だ。ドイツ経済は、自動車や機械といったドイツの代表的な工業製品を製造する巨大な工場に支えられており、膨大なエネルギーを必要としている。

政府はエネルギー需要の大きい業界に対し、電気代上昇の埋め合わせとして5億ユーロを拠出するとしているが、連立与党の一角をなす産業界寄りの自由民主党からはあまりに小規模な支援だと非難の声も上がっている。

自然エネルギーへの移行に長い時間と柔軟性を求めていた産業界は、2022年までに原発を全停止させるという杓子定規な計画に愕然としている。

ドイツ産業連盟のハンス・ペーター・カイテル会長は、政治的な都合で脱原発を急ぐ政府のやり方は、ドイツのエネルギー供給や温室効果ガスの削減目標、経済成長や雇用を危険にさらすと指摘する。「原子力利用の最終的かつ撤回不可能な終焉を、他に例を見ない拙速さで決めた背景に政治的な動機があるのは明らかだ。原発停止による電力の不足を石炭火力と天然火力の増加でまかなうため、地球温暖化防止の目標を達成することは一段と困難かつコスト高となる」

原子炉1基につき1日100万ユーロを稼ぎ出すドイツ国内の4つの電力会社にとっては、一連の流れは最悪の事態だ。彼らは政府に対する法的措置も検討している。

一方、脱原発の推進派は、自然エネルギーへの移行がドイツにとって大きなチャンスになる、という明るい未来を描いている。彼らに言わせれば、クリーンエネルギーこそ未来の姿であり、短期的なデメリットはあるとしても、早い時期に自然エネルギーに乗り換えるほうが経済的にプラスになるという。「リスクよりも経済的なチャンスのほうが大きい。今後10年間に行われる数千億ユーロ規模の投資がドイツに価値と雇用をもたらすからだ」と、ケムフェルトは言う。

ドイツ外交政策協会研究所のビートルも同じ意見だ。「ドイツ経済は新たな状況に適応しなければならないが、恐れる必要はない。新興企業が成功するかもしれないし、旧来の企業が形を変えて生まれ変わるかもしれないが、長い目で見れば産業界にプラスとなる決断だ」    

http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2011/06/post-2123.php?page=1




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