NPOふたば主催 ・関西大学協力 シンポジウム「自立のための教育-協働活動の意味-」(2012/03/10)
境界と限界を超えるホリスティック教育―協働の未来を探る―
東京学芸大学大学院教育学研究科
教育実践創成講座〔教職大学院〕
成田喜一郎
はじめに―本日の講師のこと-
○成田喜一郎(本業)、NARISEN/Mr.Narick(中学校教員時代のニックネーム)、寺澤満春(シンガーソングライター)
1 ホリスティック教育って何?
○あらゆるひと・もの・こととの/の「関係生」・「均衡生」・「包括生」・「持続継承生」の意味を探り、営む教育学のこと。
○「つながり/つながらない」「つりあい/つりあわない」「つつみこみ/つつみこめない」「つづける/つづかない」 成田(2012)
2 境界と限界の意味
○障がいとは何か―WHOの定義の変遷― 上田敏(2002)
○有る/無い、持っている/持っていない、抱えている/抱えていない、見舞われている/見舞われていない、
残っている/残っていない、共にある/共にない「障がい」
○WHO1980の「国際障害分類」(ICDH):疾患・変調が原因となって機能・形態障害が起こり、それから能力障害が生じ、それが社会的不利となる。
図1 http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n251/n251_01-01.html
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n251/img/251002g01-2.jpg
○WHO2001の「国際生活機能分類」(ICF): 機能障害でなく「心身機能・構造」、能力障害でなく「活動」、社会的不利でなく「参加」を用いる。これらが障害された状態はそれぞれ「機能・構造障害」、「活動制限」、「参加制約」である。
図2 http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n251/n251_01-01.html
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n251/img/251002g02-2.jpg
○エピソード1:ある福祉作業施設を訪問し、共に作業をした中学生(選択社会の実践1994)
「学習の最後にまとめた報告書の中で中学生たちは、この学習で得た結論として、「当たり前のことのようですが、『お互いが人間であること』ことでした。『お互いが人間であること』が当たり前であるといえる『社会』を実現するためには、次の四つが必要であると思いました。①精神障害者に対する正しい知識を学び、広めること。②精神障害者自身が誇りを持って活動すること。③積極的な交流を積み重ねていくこと。④差別や偏見に『NO!』と言える勇気を持つこと。今こそ、『強い者が下に、弱い者が上に』(スペイン・ベンポスタ子ども共和国の合い言葉の一部)世の中が求められているのではないでしょうか。」と結んだ。」成田(1998)
○境界と限界を超える意味:あなたは、? にどんな言葉を入れるか。
ポジティブ |
|||
客体 |
Ⅱ 同情
|
Ⅰ ?
|
主体 |
差別 Ⅲ |
排除 Ⅳ |
||
ネガティブ |
図3 「異質性に対処する技法」に関する座標平面 参考:奥村隆(1998)
? 〔 〕
3 自立/協働の意味
○自立と依存を超えて、自立と依存とを架橋すること。
○Post3.11「絆」の光(相互依存)と陰(くびき・しがらみ)→緩やかなつながりWeak ties(連結の自由/離脱の自由)
○エピソード:ある「児童自立支援施設」の寮長の話2012
4 シンポとその後へ
○社会関係資本Social Capital:信頼・互酬性・ネットワークの構築の重要性
○共感・共鳴・共振、反感・違和感・嫌悪感の受容、トレランスtolerance(寛容・耐性)
○省察reflectionの作法:「論理」、視点の重要性、5つのつけもの(位置づけ・価値づけ・方向づけ・関連づけ・意味づけ)
○観想contemplationの作法:直観・洞察・ひらめきの復権、「目前心後・離見の見」(世阿弥)
○知性・心性を包み込む身体性への視点(呼吸の重要性。Spiritの語源はspirare呼吸する)
むすびにかえて
○『ハチドリのひとしずく―いま、私にできること―』:物語を聴き、物語のつづきをつくることができるだろうか?
本講演に関する質問・意見など問い合わせ先
knarita@u-gakugei.ac.jp
【参考文献】
・成田喜一郎(1998)「子どもの内面に及ぶ『身近さ』を」『現代教育科学』NO.499、明治図書pp.77-78。
・奥村 隆(1998)『他者といる技法――コミュニケーションの社会学』日本評論社
・上田 敏(2002)「国際障害分類初版(ICIDH)から国際生活機能分類(ICF)へ―改定の経過・趣旨・内容・特徴―」 『月刊ノーマライぜーション』日本障害者リハビリテーション協会、2002年6月
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/prdl/jsrd/norma/n251/n251_01-01.html(2012/05/05取得)
・稲葉陽二(2011)『ソーシャル・キャピタル入門―孤立から絆へ―』中公新書
・成田喜一郎(2012)「境界と限界を超えるホリスティック教育―協働の未来を探る―」(本日の資料)
・辻信一監修(2005)『ハチドリのひとしずく―いま、私にできること―』光文社