さいえんす徒然草

つれづれなるまゝに、日ぐらしキーボードに向かひて

アンティキセラ島の機械をレゴで作ってみた

2011-12-18 21:59:43 | 材料・技術
 「アンティキセラ島の機械」は紀元前一世紀頃に作られたとされる非常に精巧な歯車式機械。1901年にギリシャのアンティキセラ島の海域で見つかった沈没船から発見された。この機械の使用目的については諸説あるらしいが、なんでも天文運行の計算に関するものだそうで、日蝕などの日付を驚くほどの精度で予測することができるらしい。祭事の日取りなどに役立てていたと考えられる。

 


 こちらはその機械をレゴで再現したという動画。

Lego Antikythera Mechanism


 古代ギリシャ人って凄いな。今じゃあんな国になってしまったけど。。。

DNA折り紙を利用した新しいRNAハイブリダイゼーションアッセイ

2008-01-12 22:11:04 | 材料・技術
 相補的な一本鎖DNA(ssDNA)同士は溶液中で自然会合する性質がありますが、その性質を利用して長いssDNAと多数の短いssDNAを混ぜることでワンステップで複雑な形状の複合体を自己組織化させることができるようです。この技術はDNA折り紙(DNA-origami)と呼ばれているようですが、実際は折り紙よりもむしろ編み物の方に近そうです。カルフォルニア工科大学のRothemundはこのDNA折り紙を駆使して、星や円といった図形に編み込んだり、編みこまれたDNA平面の上に文字や絵を描くことに成功しています(1)。

 アリゾナ州立大学のHao YanらのグループはこのDNA折り紙を利用した標識化のいらないRNA検出技術を開発しました(2)。この方法では、足場(Scaffold)となるM13ウィルス由来の長いssDNAと、留め金(Helper)となる人工的に合成した200種類以上のオリゴヌクレオチドを混ぜ合わせて2次元の長方形(Tile)にDNAを編みこんだものを作っていますが、留め金DNAの内に部分的に足場と相補的ではない配列を含んだものが混ざっていて、自己組織化した後でその部分がタイルの外側に出るようになっています。この外側に突き出る配列は検出するためのRNA(Target)と相補的な配列、つまりプローブの役割を持っていて、ターゲットと会合した場合DNA-RNA2本鎖を形成します。分子間力顕微鏡(AFM)により“タイルの外に突き出た2本鎖”がいくつ形成されいているかを観察することにより、ターゲットを検出・定量することができるようです。各DNAタイルにはRothemund(1)がDNA折り紙上に絵を描いた用いた手法と同じ原理で、どの配列のプローブが付いているタイルであるかを示す目印(Index)もつけることができるため、一度に複数のターゲットを調べることも可能です。
 この方法では既存の技術と違い、標識化などといった手間を必要としません。また1分子レベルで検出しているため、原理的には非常に大幅なスケールダウンができると著者らは主張しています。

 網羅的解析という意味では今のところ既存のマイクロアレイ法に太刀打ちできるものではなさそうですが、いろいろと応用が期待できそうな気がしました。

参考:
1. Rothemund, P. W. K. , 2005, Folding DNA to create nanoscale shapes and patterns, Nature 440, 297-302
2.Ke,Y. et al., 2007, Self-Assembled Water-Soluble Nucleic Acid Probe Tiles for Label-Free RNA Hybridization Assays, Science 319, 180 - 183

フラーレンの抗アレルギー作用

2007-07-10 14:31:15 | 材料・技術
フラーレン(C60)は炭素原子60個からなるサッカーボール状のユニークな形をした分子ですが、形もさることながら様々な面白い性質が発見されており、材料分野などでの応用が期待されています。このC60には、生物に有害である活性酸素などのラジカル類を消去する作用があることも分かっていて、医薬品分野でも注目されているそうです。

 バージニア州を拠点とするナノテク関連企業 Luna Innovations の研究チームは 、C60 に特定の官能基を付加して親水性を上げることで抗アレルギー薬としての作用を向上させることができるとJournal of immunology(179:665-672)に発表したそうです。医薬品としての期待の一方で「C60は人体に対して何らかの有害性があるのではないか」という懸念があるそうですが、この改良版のフラーレンでは今のところ目に見える副作用はないそうです。

 この改良版のフラーレンを免疫応答に関わる人間のマスト細胞と一緒に培養し、いくつかのアレルゲンを与えたところ、フラーレンが無い対照区に比べヒスタミン(アレルギー反応の指標の一つ)の放出量が半減しました。またマウス個体による実験でもフラーレンの投与によりアレルゲンに対するヒスタミンの放出量がやはり激減し、アナフィラキシー反応に伴う体温の低下が抑えられたようです。

 ヒスタミン放出量だけでアレルギー反応が抑えらるかどうかは分からないという専門家の指摘もあるようですが、臨床試験の結果が非常に興味深いと期待されいてます。

 どのようなメカニズムでフラーレンがヒスタミン放出を抑えているかは今のところ分かっていません。ただ、活性酸素種の増加がヒスタミンの放出量が増加に関連しているということが知られているので、恐らくそれらの活性酸素種をフラーレンが消去することでヒスタミン放出を抑えているのではないかと研究チームは考えているようです。

<参考>
Buckyballs could help fight allergies(Nature@News)
有機化学美術館

盲牌ロボットも夢じゃない?

2006-06-10 19:03:26 | 材料・技術
 麻雀も達人の域に達すると”盲牌”といって指先だけで何の牌だかわかるようになるらしいですが、人間の指先の感覚というものは非常に感度のいいセンサーだといえます。このような人間の指先に匹敵するような触感センサーを開発できれば、非常にデリケートな作業をロボットなどに担わせることができます。

 ネブラスカリンカーン大学のVivek Maheshwariらは従来のものよりも50倍も高感度な新しい触感センサーの開発に成功しました。エレクトロルミネッセンス薄膜と呼ばれるこの装置は、圧力が加わると発光する仕組みになっていて、その発光パターンを画像データとして感知するようです。実験では1ペニー硬貨のリンカーン像もはっきりと認識できました。この仕組みならば複雑な形にも加工することが出来、なとえば手術用の内視鏡などに搭載することが期待されるようです。

参考:
New Sensor Feels Fine(ScienceNOW)
Robotics Sensor Images the Sense of Touch (Scientific American)

ラマの抗体でカフェイン測定

2006-05-14 17:15:30 | 材料・技術
1989年、ヒトコブラクダの免疫について研究していた科学者らは、この動物の血液中からH鎖のみで構成されている特殊な抗体を発見しました。このナノ抗体(nanobodies)と現在呼ばれている特殊な抗体はラクダと同じ仲間であるラマにも存在することが確認されていますが、その分子サイズの小ささやin vitroにおいて比較的に容易に合成できることもあり近年医療分野を中心に非常に大きな注目を集めています。

ワシントン大学医学部のJack Ladensonらのグループは、このラマの抗体を使ってホットコーヒー中のカフェインを検出することに成功しました。通常の動物の抗体では失活してしまう温度帯においても、構造が比較的単純なナノ抗体なら活性を維持できるというのがミソなのでしょう。研究者らは今後、妊娠検査薬のような一般人でも簡単に使えるような製品を開発したいと話しています。それを使えばコーヒーを飲む前に本当にそのコーヒーがデカフェなのか確認できるということです。

凄い技術なのでしょうが、果たして売れるのかは心配です。

参考:
Llamas help to spot fake decaf (News@Nature)

携帯電話を利用した降雨量モニタリング

2006-05-07 20:58:52 | 材料・技術
自然災害による被害が世界中で頻発している昨今、天気予報というもののありがたみが身に沁みて分かります。特にすぐに浸水するような地域に住んでいる人々にとっては、降水量などの情報を即座に手に入れることがそこで生活営むうえで極めて重要な事項になるのだろうと想像できます。

携帯電話の電波は降雨時に弱くなります。これは空気中の水滴が電波を減衰させるためで、水滴の大きさと影響を受ける電波の周波数との間には相関があるそうです。

イスラエルのテル・アビブ大学のHagit Messerらは、この携帯端末から基地局への電波(cellular backhaul)の減衰からその地域における降水量を正確に計算することが可能であることを示しました。現在降雨量のモニタリングは主に気象レーダーを用いて行われていますが、携帯端末を利用したこの方法を実用化すれば、より高密度で正確なモニタリングができると考えられます。

この方法の素晴らしいところは、新たな設備投資が必要ないことです。携帯電話事業者の協力さえあれば、非常に低コストで高密度・高精度の降雨量モニタリングが実現でということです。

参考;
Mobile-phone signals reveal rainfall (Nature@News)


トンボのメガネ

2006-04-30 15:18:19 | 材料・技術
小さいころ、万華鏡のような、覗くと視界がいくつもの六角形に分裂して、くるくる回すと気持ち悪くなってくるおもちゃで遊んだ記憶があります。トンボの目を模倣したつもりのものだと思いますが、本当に昆虫がそのような視界で世界を眺めているかどうか、幼いながらも疑問でした。

昆虫は「複眼」という特殊な眼を持っています。この複眼は小さな個眼という単位が無数に(たとえばミツバチでは数千個、トンボでは約三万個)集合した構造になっていますが、それぞれの個眼が微妙に異なる方向を向いていることによって非常に広範囲の視野を確保することができます。

このような昆虫の複眼を模倣したレンズの開発は、医療分野や産業、そして軍事的な応用として以前から注目されていたようです。カルフォルニア大学のLuke Leeらは針の先程の面積に8,700個の溝の開いた微小なレンズの"鋳型"と、紫外線によって硬化するエポキシ樹脂を用いて人工複眼の作成に成功しました(4月28日付けScience誌に掲載)。

彼らはまず樹脂表面に無数の隆起(レンズ)を作り、それぞれのレンズを通して光を集光させることで中の樹脂を「焼き」、レンズからの光を受容装置に導く通路(チャンネル)を形成させました。するとレンズ、チャンネル、光受容体というまるで昆虫の個眼のような構造が無数に配列された人工複眼を自動的に作成することに成功したそうです。このような形成過程は、本家本元の昆虫複眼がどのように作られるか?という問いに対しても新しい知見を付与するだろうと著者は主張しています。

ちなみにこの出来上がった新しいタイプのレンズは、今後超薄のカメラなどに使われることが期待されますが、今のところどのような画像処理装置にも接続しないようです。どう見えるのか気になります。

参考;
BBC News (http://news.bbc.co.uk/2/hi/science/nature/4946452.stm)
Scientific American ( http://www.sciam.com/article.cfm?chanID=sa003&articleID=0002BFB3-30C8-1451-B0C883414B7F0000&ref=rss
)