雨中の検査終了後の講評である。
講評というものは、その検査員によって、その現場によって、言ってくれることもあれば言ってくれないこともあり、内容も様々なのだが、今回の講評は私の心の中にいたく染み入る言葉だった。
いわく、
「発注者と受注者の壁を超えて、お互いが議論をする(ケンカをしろではない)。そうやっていいモノをつくっていってほしい」
「発注者の指示だからという理由でその通りにやるのではなく、どんどんと提案をしてほしい」
「同じことを繰り返すのではなく、次はこうしてやろう、今度はこうするというふうに毎回工夫をしながら工事をする。今までこうやってきたからに固執せず新しいことにチャレンジしてみる。そのほうがやっていても楽しいではないか」
淡々と語るその言葉に、かたわらで聴いていた私の胸の中を、こみ上げてくるものがあった。
そして検査員が帰ったそのあと、私がその講評に対する感想を若い技術屋さんに求めると、「まだまだやな、と思いました」とのこと。
確かにそれはそうかもしれない。そうかもしれないが、考えてみてほしい。
アナタたちがそのアドバイスを贈るに相応しくないならば、相手は余計なことは言わないのだ。まだまだ未熟ではあっても、そんなふうな素敵な言葉を贈るに値すると認めてくれたからこそ口をついて出たのだと、都合が良すぎる考えかもしれないが私はそう思っている。
現場では、楽しいことはごく一部で、起こることの大半は辛いかシンドイかである。まして発展途上となるとなおさらだ。しかし、辛いときでもシンドイときでもオープンマインドを忘れなければ、誰かが手を差し伸べてくれるものである。心が開かれてない人間には、いくら待ち焦がれていてもそれは届かない。
そういうものなのだ。