四季・めぐりめぐりて

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埼玉県の砂防発祥の地「七重川砂防堰堤群」(埼玉県ときがわ町)

2021年09月28日 | 史跡・遺跡・文化財


ときがわ町大野にある『七重川砂防堰堤群』は、埼玉県の砂防発祥の地とされ、大正5年に着工さ
れた巨石空石積堰堤です。石積み技術は、岐阜県黒俣の職人を招いて技術指導を受けました。野面
石と蛇篭を使用した護岸を組み合わせた階段式床固工石積みです。
近接・連続した堰堤から成る流路工で大正・昭和初期当時の砂防工法を遺すということから、平成
19年度に日本土木学会の「選奨土木遺産」に認定されました。

名 称:七重川砂防堰堤群(ななえがわさぼうえんていぐん
形 態:巨石空石積堰堤(きょせきからいしづみえんてい)
渓流名:七重川【都幾川の支川)
工 期:大正5年(1916)~大正6年(1917)
認 定:公益社団法人日本土木学会 平成19年度土木学会選奨土木遺産
所在地:埼玉県比企郡ときがわ町大字大野(旧・都幾川村)

そんな『七重川砂防堰堤群』をときがわ町の山奥まで訪ねてみました。




『七重川砂防堰堤群』は、現在開催中の
 「比企歴史の丘巡回文化財展  比企のタイムカプセル20ー比企の近代遺産ー」

   橋と砂防~交通・土木の進歩~
の一つとして紹介されていたものです。本文には写真の掲載はありませんが、パンフレットの表紙
に写真があります(赤丸で囲んだもの)
橋と砂防~交通・土木の進歩~の中から、七重川砂防堰堤群に関する記述部分を引用転記してお
きます。
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 埼玉県において砂防事業が始まったのも明治時代に入ってからでした。明治30年(1897)に砂防法が制
定され、明治43年(1910)8月の県下一円に大洪水をもたらした大雨によって、秩父郡大椚村(現ときがわ
町)の都幾川流域で大規模な土砂災害が発生しました。山容が変るほどの被害であり、埼玉県の砂防事業
として大正から昭和にかけて約20箇所の石積みの砂防堰堤群がつくられました。特に大正5年(1916)か
ら大正6年(1917)にかけて施工された七重川砂防堰堤群(ときがわ町)は埼玉県で最初の砂防工事であり、
近接・連続した石積みの堰堤から成る流路工で、当時の砂防工法を今に伝えます。

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橋の上から七重川砂防堰堤群を見ています




この橋の名は「上川橋」




別名「百段の滝」 ともいわれる堰堤群を正面から




堰堤に下りてみました




石が敷き詰められているのがよくわかります




上川橋の下の模様




橋の下流も何段もの堰堤が続いています




大野東松山線(県道172号・旧秩父往還)を白石峠に向って行くと都幾川の支川である七重川に架
かる橋「七重橋」があります。
この写真の上の方にフェンスが写っていますが。そこの山道を約1.5㎞登った所に七重川砂防堰堤群
があります。
この写真は、白石峠側から撮ったものですが、この橋を渡る手前の左側に「砂防記念碑公園」があ
ります。




橋の手前左側にある「砂防記念碑公園」




「選奨土木遺産」の記念碑




「選奨土木遺産」銘板




「埼玉の砂防発祥地」と刻まれた 自然石の大きな石碑
碑の表面は黒ずんでしまっていて陰刻がはっきりしませんが

  埼玉の砂防発祥地
     埼玉県知事 土屋義彦

と刻まれています




「埼玉の砂防発祥地」碑 碑陰

 砂防法百年記念
  大正五年七重川
  砂防事業着工にちなむ

    平成八年十月吉日

なお、このときがわ町大野にある『七重川砂防堰堤群』が埼玉県の砂防発祥の地とされますが、秩父郡
小鹿野町の吉田川の支流である「栗尾沢」も、「埼玉の砂防発祥地」を名乗っていて、国道299号の
栗尾沢に架かる 勘定木槁側道槁(かんじょうきばしそくどうきょう)の東詰左側の道路脇に「埼玉の砂防発祥
地」の石碑が建っているとのことです。
「栗尾沢」の砂防工事も『七重川砂防堰堤群』と同時期に行われたことから双方が埼玉県の砂防発祥の
地を名乗っているもので、石碑についても砂防法百年記念で同じ年に建立され、碑文も【七重川】と
【栗尾沢】の違いがあるだけの同じもののようです。ただし、土木学会選奨土木遺産に認定されている
のは【七重川砂防堰堤群】の方だけです。


散策日:令和3年(2021)9月10日(金)