ICANまにらブログ~第二巻~

日本のNGOアイキャンまにら事務所の日記。

路上にいた子どもにとっての「子どもの権利」①

2008年07月10日 | 路上の子どもたち
ゆきよ@まにら。

6月末の日曜日、パヤタスのコミュニティケアセンターを利用して、ブストス事業地の子どもたちのワークショップを行いました。前夜の土曜日からブストスの子どもたち15人(10歳から18歳)がパヤタスに到着。その夜は、30人近くのパヤタスの子どもも一緒にセンターにお泊りして、交流の時間を持ちました。1年前の合宿で、ブストス事業地の子どもたちとパヤタス事業地の子どもたちは一緒にすごしたことがあります。それ以来、「また会いたいなー」という声が両事業地から大きくなっていたので、この日はみんなわくわくしていたようです。自己紹介セッションでは、恥ずかしくて恥ずかしくて頭をかいてばかりでなかなか自分の名前を言えない子も。。。





さて夜が明けて、みんなで屋上にあがりました。はじめてパヤタスを訪れた子どもたちの中には、目の前にそびえるごみ山について興味深々の子も。私たちが日々捨てるごみの行く末は、このような結果になることを、重みを持って感じ取った子もいたようでした。パヤタスの子どもたちが作ってくれた朝食のあとは、ワークショップ開始。今回の参加者はブストス事業地の子どもたちのみです。「また、みんなで一緒に参加するワークショップの機会はあるからね」ということで、パヤタスの子どもたちとの交流はおしまい。部屋を閉め切って、ワークショップに集中します。

今回のワークショップは、「子どもの権利」について学びながら、自分の過去と現在に向き合い、シェアしあうことが目的です。ICANの通学支援を受けている子どもたちを含んだ15人が、かつて路上にいたときの経験を自分の言葉で語りました。多くの子どもが「権利」という言葉をはじめから理解していたわけではなかったようでした。でも、経験上自分にとって「大切なもの」「必要なもの」を語ってくれました。



<教育の権利>
「ぼくは以前は勉強ができるのはお金持ちの子どもだけかと思っていたんだ。」大きな市場で廃品回収の仕事をしていたアレンくん(子どもの名前は以下すべて仮名)をはじめ、子どもたちは声をそろえて、「勉強する権利、教育をうける権利」をあげました。「(自分にとって大切なものとして勉強することをあげたのは、)親の生活が大変だから。ぼくがなんとか卒業して親を助けたいんだ。」「以前は親が病気でとても余裕がなくて勉強させてもらえなかった。学校に行かずにラグビー(シンナーのような覚醒症状を生じさせるもの。空腹も感じなくなる。)をするようになったんだ。」「母親が死んでから自分が母親役をせざるを得なくなった。学校には行けず、小さな妹を背負って高架鉄道の駅で物乞いをしていた。」路上で盗みを覚えて生き延びるためにすりをしていた子が言っていました。「何が間違いで何が正しいことかわかるようになるために、教育は必要だと思う。」



<住居を持つ権利>
「適切な住むところをもつ権利があると思う。どうしてかというと、以前の家はとても家と呼べるものでなかったから。ねずみの家みたいだった。人の住む家じゃない。みんな家族が快適に暮らせる場所が必要だと思う。」彼は、今ブストスの「子どもの家」で、素敵な寮のベッドを与えられて住んでいます。「でも自分の今の環境がよくなっても、ぼくはいつも以前の家を思い出すんだ。」

<医療を受ける権利>
薬を買ったり、治療を受けたりという医療を受ける権利を訴えた子どももいました。「ぼくのおばあちゃんは薬が買えなったせいですぐに死んでしまったんだ。だから。。。」

<人間らしく生きる権利>
「ちゃんとした人生を送りたいから。人間らしく、人間味あふれる生活をしたいから。」ケビンくんは以前は「ぼくは食べ物もなくて痩せて、汚くて、履物もはいていなくて、ただラグビーを吸って、まるでゴミみたいだった。」とかつての自分を描写します。だから「『ちゃんとした』子どもになること、神様の前に正しい子どもになることが大切だ」というのです。

子どもの権利条約でも、子どもの生きる権利、教育を受ける権利、健康である権利などがうたわれています。ごく当たり前に人間として子どもとしてもつべきものを、実際に与えられなかった子どもがこれらの「ケンリ」を語るとき、そのひとつひとつがズシリとした重みを持っていることを感じさせられます。子どもたちは、淡々とあるいはぼそぼそと、照れながらあるいは泣きながら語ります。これらの子どもたちの幼い語りのなかに、人間にとっての普遍的な大切なものがたくさん詰まっていることを実感したワークショップでした。




ほかにもいろんな権利が出てきましたが、それは次回に。。。

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2 コメント

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初めまして。 (まさえ)
2008-07-11 22:45:37
現在、大学の卒論でパヤタスについて研究している為、いつも興味深く拝見しています。今回の内容は特に心に響きました。
自分の複雑な過去と向き合い、「権利」という概念を自分の言葉で理解しようとする子供たちの姿に感動し、またそういった子供たちの力を引き出せるファシリテーターさんの力も素晴らしいと思いました。

これからもブログの更新を楽しみにしています☆頑張ってください☆
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ありがとうございます (ゆきよ@まにら)
2008-07-12 19:14:27
まさえさん、いつもこのブログを読んでくださっているとのこと、とてもうれしいです。今回のファシリテイションは、ソーシャルワーカーであるマニラ事務所スタッフが行いました。日ごろは控えめで静かな雰囲気の女性ですが、子ども関連の活動経験は豊富で、子どもの前に出ると別人のようにはきはきとしたファシリテイターとなります。まさえさんも卒論がんばってくださいね。
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