ICANまにらブログ~第二巻~

日本のNGOアイキャンまにら事務所の日記。

データからみえるブラアン族の子どものおかれた状況

2009年06月28日 | 先住民ブラアンの子どもたち
たくや@ミンダナオ

今日はアイキャンが活動するミンダナオ島ジェネラルサントス市の「2009年度小学1、2年生の栄養状況」のデータを、皆さんと一緒に見ていきたいと思います。

これはジェネラルサントス市にある64の小学校に通う1、2年生の体重を「平均以下」「平均」「平均以上」の三段階にその頭数を記した政府のデータです。ポイントを絞って以下に紹介します。


(バゴンシラン小学校の体重測定の様子)

◆ 町別に注目 ◆
ジェネラルサントス市は8つの町(ディストリクト)から構成されていますが、この内、体重が「平均以下」の子どもが最も多い上位3つの町は以下のとおりです。

<ジェネラルサントス市内における体重が「平均未満」の1、2年生の割合>
1、ファティマ町 ・・・ 35.4%
2、ブラ町    ・・・ 34.9%
3、ブアヤン町  ・・・ 34.8%

今年アイキャンが給食活動を展開している5校の内、4校がこの「ファティマ町」に位置し、1校は「ブヤアン町」に位置しています。

◆ バランガイ別に注目 ◆
さらにフィリピンの町は「バランガイ」と呼ばれる行政区分の最小単位に分かれます。日本で言う「村」に近いかもしれません。ファティマ町の場合、2つのバランガイ、「バランガイ・サンホセ」と「バランガイ・ファティマ」から構成されています。

<ファティマ町における体重が「平均未満」の1、2年生の割合>
1、バランガイ・サンホセの5校  ・・・ 54.2%
2、バランガイ・ファティマの5校 ・・・ 16.6%

2つ目のバランガイ・ファティマは主に平地で、ここに位置する5校はいわゆる「町の学校」と言われています。それに対してバランガイ・サンホセは丘陵地で、ここにある5校はいわゆる「山の学校」で、主に先住民族のブラアンが通う学校です。同じファティマ町の中でも、町のこどもと山の子どもの栄養状態に大きな差があることがわかります。

言うまでもなくアイキャンの給食校は全て山の学校です。

<ファティマ町における体重が「平均以上」の1、2年生の割合>
1、バランガイ・サンホセの5校  ・・・   0%
2、バランガイ・ファティマの5校 ・・・ 2.5%

さらに体重が「平均以上」の子どもに関して見てみましょう。町のバランガイ・ファティマの1、2年生もたった2.5%しかいませんが、山のバランガイ・サンホセに住む1、2年生には「平均以上」の子は1人もいません。


(ダタールサルバン小学校で給食のためのキッチン建築中)

アイキャンは、このような栄養状態にも関わらず、頑張って通学するブラアンの子どもたちが空腹を気にせず学校活動に専念できる環境を、地域の人々とともに少しずつ築き上げています。

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ミンダナオ島の子どもが幸せになれるように、ICANでは3つの事業を行っています。会員になっていただける方、ご寄附をしてくださる方を募集しています。

1、ブラアン族の子どもたち(特に募集中!)
http://www.ican.or.jp/gensan_feeding.html
2、紛争地の子どもたち(特に募集中!)
http://www.ican.or.jp/pikit.html
3、ジェネラルサントス市内の子どもたち
http://www.ican.or.jp/gensan.html

子どもたちの教育環境を向上させる「書き損じはがき」も募集中です。
http://www.ican.or.jp/kakisonji.html
その他、アイキャンに関する情報はアイキャンのHPへ
http://www.ican.or.jp/

先生たちの熱い想い

2009年06月25日 | 先住民ブラアンの子どもたち


(アスパン小学校の風景)

たくや@ミンダナオ

「お腹がすいて、勉強ができない。」

日本では、お腹がすいて、勉強ができない子どもを目にする機会はあまりないかと思います。しかし、フィリピンの山奥の先住民族の村においては、ある意味一般的な光景とも言えるかもしれません。その中で、「空腹を満たし、子どもたちが勉強できるようになる活動」があります。それが「学校給食」です。

一般的にフィリピンの公立小学校では、給食用の予算は割り当てられておらず、また保護者から給食費を徴収する仕組みもほとんどありません。ある地域では、お昼時間になると、家に帰って食べたり、持ってきたお弁当を食べたり、また学校近くで購入して食べる子もいます。

しかし山奥の学校に通う先住民族ブラアンの多くの子ども達は、学校と家がかなり離れているため、家に帰ることができません。また、そもそも家に食べるものがなかったり、食事を購入するお金がないのが現状です。こうして、子どもたちは「お腹がすいて、勉強ができない」状態に陥ります。


(ブラアン族の村の風景)

ICANミンダナオ・ジェネラルサントス事務所では、先住民族ブラアンの子どもたちが通う小学校で給食活動を展開しています。また、その給食活動が地域の人々の力によって、継続していけるように、学校菜園や飼育等様々な取組みをおこなっています。

この日は今年度(*)の給食活動を始めるにあたり、5つの小学校の校長先生と給食活動担当の先生にICANの事務所まで足を運んでいただき、ミーティングを行いました。新しく開始する学校もあるため、1つ1つ活動の実施方法を確認していきます。

(*フィリピンの学校は毎年6月頃開始、4月頃に終了します。)



ICANスタッフ:
みなさんのうち、3つの学校は町から車で行くことができない場所に位置していますが、食材の持ち運びはどうされますか?

バゴンシラン小学校校長先生:
私を含め、教師みんなで1週間分の食材をバイクに積んで毎週運びます。

ICANスタッフ:
サンホセ小学校以外の学校には電気が通っていませんが、肉や魚などの保存はどうしましょう?

ダタールサルバン小学校校長先生:
保存の利かない材料を必要とする料理は買出し日に提供し、豆など保存が利き、かつ栄養価の高い材料は、残りの日に提供します。

アスパン小学校担当教員:
私は町から通っているので、生モノは私の家の冷蔵庫に保存します。家族は活動の意義を理解してくれますので、大丈夫です。

フィリピンの、特に山間部の学校で給食活動を、学校や地域の力で実施、維持していくことは、とても大変です。ただでさえ給料も少なく、仕事量がとても多い先生たちは、さらに仕事が増えることを意味します。

それでも、先生たちが学校給食を望み、やり遂げようと力強く語る理由は、一人でも多くの子どもたちに教育を受けてほしいという熱い想いに他なりません。



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ミンダナオ島の子どもが幸せになれるように、ICANでは3つの事業を行っています。会員になっていただける方、ご寄附をしてくださる方を募集しています。

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ミンダナオの山奥、給食校への道のり

2009年06月23日 | 先住民ブラアンの子どもたち
たくや@ミンダナオ

ICANは1996年よりミンダナオ島ジェネラルサントス市郊外の先住民族の子どもたちが住む小学校で、学校給食の事業をおこなっています。

今年からは5校に拡大して事業をおこなっているのですが、この日は、ICANのミンダナオ・ジェネラルサントス事務所から、私とシーナの2名が新規校の1つであるバゴンシラン小学校へ向かいました。ここは、ジェネラルサントス市中心部から最も山奥に位置し、ICANの給食事業校の中でも、一番アクセスが困難と言われている学校です。もちろん電気はありません。



(上の表札の右下に書かれているのがバゴンシラン小学校。ここからでも30キロ、片道3時間以上の道のりです。)

校長先生と一緒に市内を早朝に出発し、舗装された道路を走るのもつかの間、バナナのプランテーションが見えてきます。この砂利とバナナと青空しか見えない道をひたすら走り、山のでこぼこ道に入ってきます。橋のない川を渡り、急斜面をバイクを押して歩くことを繰り返すうちに、途中馬に乗ったバゴンシラン村長とも会いました。













(上の写真で、真ん中の青い服を着ているのがICANスタッフシーナ、周りは先生や村の方々です。)

そして、ようやく4つ目の川と5つ目の丘を越えたところで、バゴンシラン小学校に到着です。町の人がこの村を訪れることはほとんどなく、村のみんなも歓迎してくれました。



このバゴンシラン小学校に通うのは主にブラアンと呼ばれる先住民族出身の子ども達で、そのほとんどの家庭が厳しい状態に置かれています。子どもたちは、朝ごはんに「キャッサバ」と呼ばれるお芋を食べ、1時間以上歩いて谷を越え、学校に通ってきます。家から昼食として持ってこれる食べ物がない日は、ひたすら空腹を我慢して授業を受けることになります。そのため、子どもたちは学校に通う意欲が保てず、休みがちになってしまったり、さらに幼い子どもは空腹に耐えることができないので、入学自体を断念してしまいます。



教育を受けることができないと、将来さらに生活は困難な状況になり、空腹は続きます。この負の連鎖を断ち切るために、この日は1学期から始まる学校給食活動の計画の確認と、同時に開始する収入向上の活動について、地域の母親たちとミーティングを行いました。また、子どもたちからもいろいろなお話を聞かせてもらいました。



(村のこども(左)とわたし(右))

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ミンダナオ島の子どもが幸せになれるように、ICANでは3つの事業を行っています。会員になっていただける方、ご寄附をしてくださる方を募集しています。

1、ブラアン族の子どもたち(特に募集中!)
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3、ジェネラルサントス市内の子どもたち
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路上教育 シャワーを浴びましょう!

2009年06月17日 | 路上の子どもたち
さえ@まにら



ICANでは、現在マニラ首都圏の6地域で「路上教育」を行っています。路上の子どもたちのニーズを満たし、生きていく力をつけるための様々な教育セッションを行っており、今年度はさらに保健・医療の分野に力を入れています。

この日は、ミンダナオ通りの路上の子どもたちに「シャワーが大嫌い!」という絵本の読み聞かせによる、保健授業を行い、6才から17才の子どもたち、23人が参加しました。

ここミンダナオ通りで教育事業に参加している子どもたちの3分の1は、路上で寝起きしている子どもたち。3分の2は、家族がいて帰る家はあるが、家庭が経済的に苦しい環境に置かれているがゆえに、路上で働いている子どもたちです。ゴミの中からリサイクルできるものを集めて換金をしたり、車の駐車場への誘導、物乞いなどでお金を稼いでいます。

さて今日の絵本は、ポポンというシャワーを浴びるのが大嫌いな男の子のお話です。ソーシャルワーカーのジェンによる読み聞かせが始まりました。

「ポポンが、シャワーをずっと浴びないでいると、体中がかゆくなり、臭くなり、
そして友達が遊んでくれなくなりました。
ポポンは、とても、とても悲しくなりました。
友達みんながきれいなことに気づき、急いでゴシゴシ、ゴシゴシ体を洗いました。
そして、お父さんもお母さんも友達もポポンもハッピーになりました。」というお話。

とてもシンプルなお話ですが、子どもたちは、絵本に顔を近づけて吸い込まれそうなくらい真剣に話を聞いていました。



ソーシャルワーカーのジェンが、みんなに問いかけました。
ジェン :「みんなどれくらいの頻度で、シャワーを浴びているの?」
子どもたち:「1週間に2回とか、2週間に1回のときもあるよ。」
ジェン :「シャワーを浴びるというのは、体をキレイに保つことで、自分や 周りの人を気持よくするよね。そして何より病気の予防をするためにとても大切なことだよね。」
ジョイ(6歳の女の子):「でも水がないの。」

ジョイのお父さんは、トライシクルの運転手をしています。ジョイは普段、路上で物乞いにより1日に20ペソ(約40円)くらいを得ています。水は、4リットルが3ペソ(約6円)。しかし、家族の収入の多くは食費に消えてしまい、買える水の量は限られています。

路上で生活する子どもたちにとって、水を確保することは大変なことです。しかし、もし病気に一度なってしまうと治療を受けることが難しく、そのため、少しでも日頃から体を清潔に保ち病気を予防することが何より大切です。

路上の子どもたちの現実を変えていくことは一筋縄ではいきません。そこには大きな壁があります。それでも、毎日壁に固い石を打ちつけていると、いつの日かそこに穴をあくように、路上のセッションや通学支援、家族の収入向上の試みを続けていくことが、子どもたちの将来を築いていくのです。

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路上の子どもが幸せに成長できるように、会員になっていただける方を募集しています。
http://www.ican.or.jp/street.html

職業訓練コース修了式@サント・トーマス大学

2009年06月10日 | ごみ処分場の子どもたち
かず@まにら

 ICANでは、現在JICA草の根パートナー事業として、フィリピン最大のごみ処分場パヤタスにおいて、保健・医療、そして技術訓練を行っています。

 その技術訓練の一環で、ICANはマニラにあるセント・トーマス大学(University of Saint Thomas、通称UST)と特別な業務契約を締結し、薬剤師補助研修を行っています。

 このたび、第一期生としてパヤタス出身の青年たち14名が晴れて修了式を迎えました。彼ら・彼女らは、高校を卒業しつつも、経済的な理由で大学に進学ができず、就職もできなかった青年たちです。生徒たちは片道1時間以上かけてバスで通い、熱心に授業を受け、実習を終えた後、テストに合格しました。修了式でのみんなの充実感に溢れた表情が印象的でした。







ここで身につけた技術と経験を持って、これから就職活動が待っています。家族の生計を支えるために、みんな頑張っています。

ICANの活動に賛同してくださる方を募集しています。

ICANのパヤタス事業について
http://www.ican.or.jp/payatas.html

ミンダナオでの「地域マッピング」

2009年06月04日 | ジェネラルサントスの子どもたち
たくや@ミンダナオ

ICANミンダナオ第一事務所(ジェネラルサントス)は5月31日(日)に奨学生15人と「地域マッピング」というワークショップを実施しました。

この「地域マッピング」とは、子どもたちが自分の住む地域の地図を作ることにより、自分の地域について考え、地域の良さを再発見することを目的とするものです。



それぞれのグループが地図を完成させた後、互いに作成した地図を発表し合い、子どもたちは、砂浜、ショッピングモール、港、産業、祭など、このジェネラルサントスの「誇れるところ」を挙げていきました。地図作りを通して地域にあるものを再発見した直後なので、いくらでも挙がってきます。みんなこの街が大好きです。



ミンダナオ島ジェネラルサントスで描かれた地域の地図は、この後海を越えて日本へと届けられます。

これは「TULAY PROECT(トゥライプロジェクト)~フェ~ズ2~」と言い、フィリピンと日本の様々な場所で子どもたちが地域の地図を描き、海を越えて地域を紹介する大規模な国際交流事業です。ICANはこの事業を通して、子どもたちが自分の地域のいいところを再発見し、同時に国を越えた他の地域のことを学ぶことを期待しています。



子ども達たちの間で自分やお友達が住んでいる地域の素晴らしさが共有されるように、ICANは今年もTULAY PROJECT(トゥライプロジェクト)を子どもたちと「ともに」取組んでいます。

TULAY PROJECT(トゥライプロジェクト)~フェーズ1~
http://www.ican.or.jp/childrens_participation.html

新学期がスタート

2009年06月01日 | ひとりごと
ゆきよ@まにら。(写真は路上の子どもたちの活動のひとまく)

6月1日。フィリピンの公立学校は、今日から新学期がはじまりました。今日私は朝6時前に自宅を出ましたが、自宅前の道を、すぐ近くの公立小学校の制服を着た生徒がひとり早々と登校していました。朝礼が始まるのは6時半すぎからのはずなのに。。。新学期の初日に新しい文具などを揃えて学校に行くのが待ち切れず、家を早く出たのでしょうか。

ICANの事業地、ジェンサンやサンイシロや、また路上で働いていた子どもたちも、ICANの奨学生として今日から登校しています。サバイタヨ(青少年活動)に集まるパヤタスの子どもたちや、ジェンサンの山奥の給食校の子どもたちも今日から1年進級して、新たな気持ちで学校に通い始めました。

マニラ事務所ではしばらくブログ更新ができないでいましたが、この6月からの新学期を機に勉強をはじめた子どもたちに負けないように、私たちもがんばって継続更新していきたいと思っています。

ICANではここ2,3カ月で日本人フィリピン人両方のスタッフも増え、ますますパワーアップして事業を進めています。先月はICAN事業地の路上の子どものひとりが、ジープにひかれる悲しい出来事もありました。人懐っこい14歳の女の子でした。病院に運ばれた時には回復の見込みもなくほとんど治療もされず、はかなく亡くなってしまいました。以前もパヤタスの子どもにも死なれましたが、事業地の子どもたちもスタッフたちにも大きなショックでした。新たに「死」の危険ととても近いところに子どもたちがいることを感じています。ずっと悲しんでいても次の日は必ず来て、私たちは前に進んでいかなければなりません。この新学期から亡くなった子の妹がICANの奨学生となりました。みんなで痛みを乗り越えて、また新しく出発していきたいと思います。