語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【経済】軽減税率が突きつける諸問題(1) ~現存特例措置~

2016年01月07日 | ●野口悠紀雄
 (1)一般に制度の問題は特例措置によってもたらされることが多い。消費税もその例外ではない。
 消費税はきわめて巧妙につくられた制度だが、特例措置がそれを歪めている。消費税にはさまざまの特例がある。導入が決まった軽減税率もその一つだ。
 特例措置がもたらす歪みが、軽減税率によって拡大する場合もある。
 よって、現在の特例措置を見直す必要が生じる。
 にもかかわらず、今回の自民・公明両党の合意では、こうした問題がまったく考慮されていない。

 (2)現在ある特例は次のものだ。
  (a)免税業者制度・・・・年間売上高が1,000万円以下の零細事業者は、消費税の納税義務を課されない(消費税制度の枠外)。【特例措置であることが明記】【自民・公明両党の合意でも存続】
  (b)簡易課税制度・・・・消費税における前段階の税額控除は仕入れ額から計算することとされている。その年間売上高が5,000万円以下の業者については、前段階の税額を売上高から推計することが認められている。【特例措置であることが明記】【自民・公明両党の合意でも存続】
  (c)非課税制度・・・・いくつかの財やサービスの取引については消費税が課せられていない(消費税制度の枠外)。【特例措置であることが明記】
    ①金融取引に関するもの。
    ②社会政策的観点から非課税とされるもの。<例>社会保険診療、借家の家賃、etc.。
    ③輸出については、ゼロ税率の消費税が課せられる。これは特例措置というより、間接税の国境税調整措置として、全世界で共通に行われている措置。
  (d)インボイスなしに前段階の税額控除・・・・欧州の付加価値税が合理的な税と考えられるようになったのはインボイスが導入されたから。日本のインボイスを欠く消費税は、付加価値税と似て非なるもの。インボイスの不在こそ、日本の消費税の最大の特例措置だ。

 (3)特例措置が認められている理由はさまざまだ。
  (a)免税業者制度・・・・事務負担軽減。零細業者を価格競争上有利にする。
  (b)簡易課税制度・・・・中小企業の事務負担軽減。
  (c)非課税制度/軽減率制度・・・・消費税の負担軽減。

 (4)軽減税率との関係で、見直しが必要とされる理由 ~ポイント~
   ①軽減税率導入に伴い、現在ある制度との間で衝突が生じる。免税業者制度、簡易課税制度。
   ②現在の制度問題点を軽減税率制度によって改善することが可能だ。非課税制度。

□野口悠紀雄「軽減税率が突き付ける現存特例措置の諸問題 ~「超」整理日記No.789~」(「週刊ダイヤモンド」2016年1月9日号)
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