語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【佐藤優】トランプ大統領はなぜ平気でウソをつけるのか ~フェイク蔓延の米国社会~

2017年08月20日 | ●佐藤優
 (1)世界的に嘘が増えている。トランプ大統領に限らない。
 〈例〉米国の映画やドラマなんかでも、そう。陪審員が、黒人と白人がぴったり半分ずつだ。警官も黒人と白人でコンビを組んでいる。TVドラマの「セックス・アンド・ザ・シティ」にも、黒人とかラティーノとか、有色人種系が出てくる。これは建前だ。全体のバランスをとらなきゃいけないから。
 でも、その建前そのものがフェイクじゃないか。
 実際の米国を見れば、たとえば家のまわりに黒人が3人、うろうろしていたら、すぐ手を挙げろ、って話になる。警官の指示に従わないのが黒人だったら撃たれる確率が高くなる。それが米国の実態だ。フェイクはもう蔓延している。
 だからトランプも、「俺も対抗して嘘をついてもいいだろう」くらいに思って、政治をやっているわけだ。

 (2)2月にトランプが演説で、「昨夜、スウェーデンでテロがあった」の話。あれなんかは、黒い白鳥はいない、という話と一緒だ。黒い白鳥はいない、とどうしていえるのか。お前が探し足りないだけかもしれない、という。悪魔の証明だ。
 昨夜、スウェーデンでテロがなかった、とどうしていえるのか。もしかしたら、テロまがいのことや、未遂があったかもしれない。なにもなかった、と断言できるのか、という。
 それと、真実相当性、というのがある。仮に報道がフェイクであっても、報道する側がそれを真実だと思っていたら、法的な責任は追及されない。すると、世の中の情報のほとんどが、真実相当性なのだ。
 〈例〉仮に、岡山県岡山市で交通事故があって、横断歩道をふつうに渡っていた43歳の人に、右折車が突っ込んできた、という警察発表があったとする。事実かどうかはわからない。現場に行って、目撃者に直接聞いても、答が本当のことかは、結局は判断がつかない。
 そうやって考え始めると、世の中はフェイクだらけなのだ。確実に証明できることは、なかなかない。
 トランプのスウェーデンに関するテロ発言についていえば、今回はたまたまスウェーデンの首相が、真相を究明してくれ、と言った。
 これが、日本の総理だったら言うだろうか。トランプがもし、日本でテロがあった、と発言したとしても、日本との外交交渉で発言したことではないから、日本政府として反応することじゃないとかなんとか、あいまいな態度で、はっきり否定しない。多分、そんなもんだ。すると日本政府が公式に否定していないんだから、テロはあったんじゃないか、ということにされてしまう。そうなっても日本政府は、文句をつけないだろう。とくに首相がクレームをつけるとか、外交ルートで釈明を求めたりはせず、それはなにかのマチガイでしょう、わははは、で終わりだ。
 その点、スウェーデンは、そういうことをいい加減ではすませない国。自分の立場をはっきりさせる国なのだ。

 (3)そもそも、トランプが「昨夜、スウェーデンでテロが起きた」なんてことを、ひとりで発想するわけがない。なんであんなことをいったのか、といえば、トランプのまわりにはいい加減な情報を平気で囁(ささや)くヤツがいるということなのだ。
 そうすると、その程度しか国際問題に関心のなかった人間が、なんで大統領になろうと決心したのか、疑問に思えてくる。
 答は、神様に選ばれた、という使命感なのだ。
 そりゃ、最初は大統領になれるなんて考えていなかっただろう。ところが、ポンポンと事態が順調に進んでいく。すると、やはり俺は選ばれているんだ、と途中から神懸かりになっていった。そしたらオーラが差してきて、それでぐるぐるまわって大統領になったってことだろう。

□佐藤優・監修『地政学から読み解く米中露の戦略』の「第1章 地政学から読み解く米国の戦略」の「トランプ大統領はなぜ、平気でウソをつけるのか? ~フェイクが蔓延しているアメリカ社会~」
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 【参考】
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