(1)トランプ大統領には思想がある。それも強くある。長老派教会と訳しているが、スコットランドから米国へ来たプレスビテリアン(カルヴァン派の一派)の思想だ。
この教派の人たちは、生まれる前に、自分はすでに神様に選ばれている、と考えている。神様は、この人は救われる、この人は滅びる、と相手が生まれる前から決めている、と信じている。つまり、人間の運命は、生まれる前から全部決まっているんだ、と考えている。
で、選ばれた人間は、どんな試練にも耐え抜くことができる、と考えている。だから打たれ強い。そして勤勉だ。
20世紀以降に登場した米国大統領で、プレスビテリアンだった人はトランプを含めて3人しかいない。一人は、ウッドロー・ウィルソン。彼はみんながムリだと思った国際連盟の設立に固執した。それを正しい理想だと考えたからだ。
もう一人は、ドワイト・アイゼンハワー。彼はノルマンディー上陸作戦の指揮官だ。あれは誰もが無謀だと思ったが、アイゼンハワーはそれでも決行しなければならないと、第二戦線を開いた。
ムリだ、無謀だ。そう言われたことでも、自分が正しいと思ったらひるまないでいく。これが長老派の人たちの特徴だ。トランプにはその特徴がある。
(2)それと同時に、長老派の人は、清い生活をしていれば立派な人間になれる、という発想を持っていない。
そういう発想を持っているのは、メソジストだ。
〈例〉ブッシュJr大統領。ひどいアルコール依存症だったのだが、信仰に触れて自分の生活を改めた。リボーン、生まれ変わりだ。メソジストでは、そういうのが重要になる。
ところが、長老派ではそういうことを全く強調しない。生まれる前から神様に選ばれている。だからマルコ・ルビオ大統領候補とこんなやりとりをした。
共和党の候補者指名をめざすミシガン州デトロイトでの討論会で、ルビオ候補は
「あなたは身体は大きいけれど、それにくらべて手は小さいですね。世間で、手が小さい人のことをどういっているか知っていますか?」
と切り出した。それに対してトランプは、
「ああ、知っているよ。手が小せえ男は、逸物も小せえっていいたいんだろ。大丈夫、俺は人並みだ」
これが、米国大統領選挙の公式の論戦だったわけだ。米国の歴史の中で、ペニスの大きさが選挙の争点になった、などということは後にも先にもなかった。売り言葉に買い言葉、そんな下品なことはいわない。でも、トランプは違った。下品な奴は下品な対応でいいんだ、俺は大丈夫、神様に選ばれているから・・・・。そいう確信があるのだ。
(3)だから、トランプを読み解くカギのひとつは、長老派である、ということだ。長老派の人たちはよく働く。トランプもそうだ。彼は働き者だ。とんでもない時間のツイッターも、その時間も働いているということだ。これは長老派の特徴だ。
しかも、それでなおかつ、トランプは子育ても自分の部屋でやっている。子どもを近くに置いて、24時間、仕事をしている。これは、スコットランド系のお母さんの影響だ。スコットランドでは、ほとんどの人が長老派なのだ。それからトランプは、きかん坊だからということで、子どもの頃、ミリタリー・スクールに入れられている。そこで規律正しい生活と勤勉さを学んでいる。
そういうトランプだから打たれ強い。どんな状況でも這い上がってくる。それは、自分は必ず成功する、と信じているからだ。だから、よく言えば打たれ強いのだが、悪くいえば傲慢、となる。これが、あまり知られていないトランプの資質なのだ。
□佐藤優・監修『地政学から読み解く米中露の戦略』の「第1章 地政学から読み解く米国の戦略」の「トランプを理解するカギは、彼の信仰、カルヴァン派である ~過去の大統領ではトランプを含めてわずか3人~」
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【参考】
「【佐藤優】×宮家邦彦/北朝鮮の核問題、ICBM問題にどう向き合うか」
この教派の人たちは、生まれる前に、自分はすでに神様に選ばれている、と考えている。神様は、この人は救われる、この人は滅びる、と相手が生まれる前から決めている、と信じている。つまり、人間の運命は、生まれる前から全部決まっているんだ、と考えている。
で、選ばれた人間は、どんな試練にも耐え抜くことができる、と考えている。だから打たれ強い。そして勤勉だ。
20世紀以降に登場した米国大統領で、プレスビテリアンだった人はトランプを含めて3人しかいない。一人は、ウッドロー・ウィルソン。彼はみんながムリだと思った国際連盟の設立に固執した。それを正しい理想だと考えたからだ。
もう一人は、ドワイト・アイゼンハワー。彼はノルマンディー上陸作戦の指揮官だ。あれは誰もが無謀だと思ったが、アイゼンハワーはそれでも決行しなければならないと、第二戦線を開いた。
ムリだ、無謀だ。そう言われたことでも、自分が正しいと思ったらひるまないでいく。これが長老派の人たちの特徴だ。トランプにはその特徴がある。
(2)それと同時に、長老派の人は、清い生活をしていれば立派な人間になれる、という発想を持っていない。
そういう発想を持っているのは、メソジストだ。
〈例〉ブッシュJr大統領。ひどいアルコール依存症だったのだが、信仰に触れて自分の生活を改めた。リボーン、生まれ変わりだ。メソジストでは、そういうのが重要になる。
ところが、長老派ではそういうことを全く強調しない。生まれる前から神様に選ばれている。だからマルコ・ルビオ大統領候補とこんなやりとりをした。
共和党の候補者指名をめざすミシガン州デトロイトでの討論会で、ルビオ候補は
「あなたは身体は大きいけれど、それにくらべて手は小さいですね。世間で、手が小さい人のことをどういっているか知っていますか?」
と切り出した。それに対してトランプは、
「ああ、知っているよ。手が小せえ男は、逸物も小せえっていいたいんだろ。大丈夫、俺は人並みだ」
これが、米国大統領選挙の公式の論戦だったわけだ。米国の歴史の中で、ペニスの大きさが選挙の争点になった、などということは後にも先にもなかった。売り言葉に買い言葉、そんな下品なことはいわない。でも、トランプは違った。下品な奴は下品な対応でいいんだ、俺は大丈夫、神様に選ばれているから・・・・。そいう確信があるのだ。
(3)だから、トランプを読み解くカギのひとつは、長老派である、ということだ。長老派の人たちはよく働く。トランプもそうだ。彼は働き者だ。とんでもない時間のツイッターも、その時間も働いているということだ。これは長老派の特徴だ。
しかも、それでなおかつ、トランプは子育ても自分の部屋でやっている。子どもを近くに置いて、24時間、仕事をしている。これは、スコットランド系のお母さんの影響だ。スコットランドでは、ほとんどの人が長老派なのだ。それからトランプは、きかん坊だからということで、子どもの頃、ミリタリー・スクールに入れられている。そこで規律正しい生活と勤勉さを学んでいる。
そういうトランプだから打たれ強い。どんな状況でも這い上がってくる。それは、自分は必ず成功する、と信じているからだ。だから、よく言えば打たれ強いのだが、悪くいえば傲慢、となる。これが、あまり知られていないトランプの資質なのだ。
□佐藤優・監修『地政学から読み解く米中露の戦略』の「第1章 地政学から読み解く米国の戦略」の「トランプを理解するカギは、彼の信仰、カルヴァン派である ~過去の大統領ではトランプを含めてわずか3人~」
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【参考】
「【佐藤優】×宮家邦彦/北朝鮮の核問題、ICBM問題にどう向き合うか」