Takekida's log

千里の道も一歩から

世界一小さい風船宇宙開発

2016-02-14 00:30:07 | Books
週末は天気も悪くやや予定変更することとなりそうです。
宇宙を撮りたい、風船で。
クリエーター情報なし
キノブックス


風船宇宙撮影で有名となった岩谷さんの本です。去年の情熱大陸でも取り上げられたり、ACの広告とかでも流れたりしましたがこの本は今までの経緯や挑戦をまとめた内容となっています。風船から地球を宇宙を写してみたらどうなるだろうという純粋な思いとそれに向かってのひたむきな挑戦と試行錯誤、そしてあきらめずに粘り強く挑戦してきた歴史と撮影に対する思いが記されています。

岩谷さんは北大在学時に留年した4年の夏に見つけた海外のサイトでのニュース記事で風船での撮影のことを知りました。街で買った安い材料でカメラを搭載する箱と風船が破裂した際の落下用パラシュートを作り、GPSを使って落ちた場所をひたすら探す…。こういった地道な作業で広大な北海道の地から打ち上げを続けてきたのですが実際は失敗に次ぐ失敗の連続。宇宙では温度がぐっと下がるためカメラが起動しなくなる、レンズが結露して映らない、箱の落下先が鬱蒼とした森の中でヒグマなどもいるため回収できない…。試行錯誤しながら少しずつ成功を積み重ねることでようやく上空3万メートル程度まで到達できる手法を生み出しています。また岩谷さんはこの知見は隠すことなく完全にオープンソースとしており実際に4組ほど同じ手法で撮影を成功させているようです。風船は上空に上がるのに従い圧力の差でどんどん膨張していきます。そして破裂したタイミングが撮影の限界点になるという仕組みです。破裂した後はパラシュートを開き落下して来ます。人工衛星のようにそもそもSpeedが出ていないので摩擦熱で燃えるような心配は無し。ただ宇宙は絶対零度に近い環境になるので低温でも撮影機材を動かすための工夫が必要で―60度まで動くバッテリーを開発したとのこと。3万メートル=30㎞に達するのは1時間30分後でそのあと30分で地上に戻ってきます。元の場所に戻ってくるのか心配なところですが車で回収できる範囲で収まるようです。

風船宇宙撮影はともすれば単なる技術開発のように思えるのですが撮影する作品には「何を撮りたいのか」「何を表現したいのか」というコンセプトが最も重要でそれに対する開発だということが書かれています。これは単純な技術の進歩だけで済ませてしまうこともあるあらゆる工業製品の開発に対して身につまされる話です。こういった観点から風船宇宙撮影は発明家、エンジニア、アーティストの要素があるということを述べています。

まずはやってみて粘り強く努力する人とのつながりを大事にするという出来そうでできないことを追求している姿は読んでいて痛快でした。
やらない理由、やれない理由を見つけることは簡単ですがまずやってみることの大切さを教えてくれる本だと思います。
学生の時代にも巡り合えてればよいと思えるような内容でした。

特に美しいと感じたのは宇宙からの日の出です。

ACジャパンテレビCM 宇宙を撮りたい、風船で。30秒版


BMPCC GOES TO SPACE FUSEN UCYU PROJECT 世界初、シネマカメラでの宇宙撮影
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