「マッキーのつれづれ日記」

進学教室の主宰が、豊富な経験を基に、教育や受験必勝法を伝授。また、時事問題・趣味の山登り・美術鑑賞などについて綴る。

マッキーの現代陶芸入門講座(19)…森陶岳と隠崎 隆一の備前焼

2008年09月12日 | 陶芸
今回のブログでは、現代備前焼の作家の中で特に人気のある、『森陶岳と隠崎 隆一』の2人を取り上げます。

備前焼についての入門解説は、私のブログ「入門講座(15)藤原雄」をご覧ください。


森陶岳と隠崎 隆一は、同じ備前焼でも作陶の方向性が大きく異なっています。

森陶岳は、古備前に執着し、その魅力に迫る焼き物を作るために、大窯主義とでも言う作陶方針を持って、エネルギッシュに活動している陶芸家です。

それに比べて、隠崎隆一は、現代的で彼独特のフォルムを追求した、造形的な備前焼を信条としています。


森陶岳

1985年、私が本格的に焼き物のコレクションを始めた年に、森陶岳は寒風の地に、室町様式で半地下直炎式の全長53メートルの大窯を築き焼成を始めました。



森陶岳ぐい呑み(86年・黒田陶苑)


箱書き


1969年森陶岳は、日本陶磁協会賞を受賞し、私もその力量を評価していました。
しかし、その当時私は、大窯でしか焼けない大きな壺を前にした喜色満面の森陶岳に対し、ちょっと違和感を持って見つめていました。

なんで大窯なのか? 寒風大窯(53メートル)の焼成以来、私はその大窯主義に疑問を持っていました。
焼き物の焼成は、その作家の力量と異なる、いわば神の御手によってなせる技ではないのか。
だとすると、そこを強調しすぎることは、焼成以前の陶芸家の果たす技術や努力を軽視してしまうことにならないのか。


森陶岳湯飲み


箱書き


しかし以前私は、彼の作品をかなりの数、所有していましたが、その作品の質の高さに改めてその力量を認めていました。

その後、森陶岳の大窯主義は、止まるところを知らず、ついには今年2008年8月、全長85メートルの直炎式登り窯「寒風(さぶかぜ)新大窯」を完成させ、火入れ式を行っています。



森陶岳湯飲み


徹底して古備前にこだわると、大窯の焼成が必要不可欠だという彼の信念は、やはり本当なのかも知れません。
彼の力量に加え、鬼に金棒とでも形容したらよいのか、この巨大登り窯によって、一体どういう焼き物がこれから出来るのでしょうか?


巨大登り窯による焼成は、様々な準備段階を経て2011年に行われるそうで、延べ900人を動員し、窯焚きに3カ月、10トントラックで400台分の薪を使って行われ、その窯の中には大小合わせ数千もの作品が入るそうです。

巨大大窯の完成によって、森陶岳は、備前の焼成過程からして、他の作家が追従出来ない、未踏の領域に足を踏み入れることになりました。
森陶岳は、もしかすると、空前絶後のスケールの陶芸家かも知れません。


『窯が焚きあがった時点で、窯には神が宿るので、どんな焚き方をしても本質は変わらないと私は思っています。窯では神の意思以外のものは現れません。結果は全て神の力によるものなのです。人間は相対的なものですが、窯は絶対的なものだと考えています。』

大窯による焼成を、森陶岳はこのように述べています。


【森陶岳履歴】
1937年、備前市伊部に、窯元六姓の家系・森秀次の長男として生まれる。
59年、岡山大学特設美術科を卒業。兵庫県の中学校で美術教師を務める。
62年、岡山に戻り陶芸の道に入る。
63年、日本伝統工芸展で初入選。
66年、日本工芸会正会員。
69年、日本陶磁協会賞を受賞。
96年、岡山県重要無形文化財保持者。
2002年、備前焼作家として初めて、日本陶磁協会金賞を受賞。
2006年、芸術文化やスポーツの分野での業績を評価する、紫綬褒章受賞。



隠崎隆一



隠崎隆一オブジェ


80年代後半から頭角を現し、あっという間にブレイクした備前陶芸家です。

フォルムが個性的なオブジェや花器は、実際に室内に飾ると、その現代的な作家の感性が伝わってきて、とても良い作品に仕上がっていると思います。



備前花入


しかし、ぐい呑みや徳利などは、その独特な形が災いしてか、またその主張が強すぎてか、使い勝手があまり良くありません。
備前特有の素朴な風合いを、その先鋭的なフォルムと融合できたら、この作家はもう一段飛躍できるでしょう。



ぐい呑み



四方皿


鉄製の枠に、四方皿(よほうざら)をくくりつけたオブジェを、三越本店での個展の時に購入しましたが、今は枠を処分して、大きく分厚い四方皿が10枚残っています。

この上に、にぎり寿司などのっけて食べたら、さぞ美味しかろうと思います。



箱書き



箱書き


【隠崎隆一履歴】
1950年、長崎県に生まれる。大阪芸術大学卒業。
75年、グラフィックデザイナーから転身し、岩本修一、伊勢崎淳に師事する。
85年、独立。
90年、日本工芸会正会員に。
88年、92年の茶の湯の造形展で大賞を受賞。
その他の受賞歴:日本陶磁協会賞、MOA岡田茂吉賞優秀賞、一水会陶芸展一水会賞ほか。




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1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
よろしくお願いします。 (備前焼後楽窯)
2008-09-22 17:47:01
私は岡山市内で備前焼頑張ってます。
是非見に来て下さい。
楽しみに待ってます。
今日から窯詰め始めました。
十一月始めに窯出し予定です。
手びねり体験などもできます。
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