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とても条件がシンプルな問題の為に、逆に生徒たちが解く手掛かりを見つけられずに、迷ってしまう問題があります。
今回の算数の問題は、先日小学6年生が解けずに質問に来たもので、このブログでもしばらく前に取り上げた、ある重要な基本事項に気づくかどうかが、成否の分かれ目となります。
問題の条件は、以下のようなものです。
まずは、答えを見る前に、ご覧の皆さん、チャレンジしてみてください!
この問題を解く条件は、公立小学6年生までに習ったものです。
【問題】
点Oを中心とする半径10cmの半円の円周上の点は、半円を6等分する点です。斜線の部分の面積を求めなさい。円周率は3.14とし、答えは小数第2位を四捨五入して小数第1位まで答えなさい。
ところで本題に入る前に、以上の条件で分度器を使わずコンパスと定規だけで、この問題を作図できますか。
その方法も大切なので、説明しておきましょう。
コンパスで半円を描き、そのコンパスの足の開きを変えずに、弧をコンパスで分けていくとちょうど3等分されます。
すると正三角形が3つ内接した図を描くことができます。
この描き方は、中学入試の正多角形の中で、出題率の高い正六角形を描く方法と同じです。
円を描いたら、コンパスの開きを変えずに、円周を分割するとちょうど6等分でき、その点を結ぶと正六角形を描くことができます。(コンパスがあったら、お子さんとやってみてください)
次に中心角60度の二等分線を描く要領で線を引き、円周と交わった点を決めると、半円の円周(弧)を6等分することができます。
さて、ご覧の皆さん、この問題を解けたでしょうか。
【解き方】
小学6年生が質問したこの問題を、中学3年生に出題すると、「円と角」「三平方」「等積変形」など、いろいろ浮かんできたキーワードを使うかどうか、私に確認してきます。
条件があまりに少ないので、どういった手法で解くのか、生徒は迷うからです。
最も勘違いしやすいのは、右下の図形を、半径6cmのおうぎ形と見てしまうことでしょうか。・・・もちろんそれは間違いで、おまけにそうだとしてもその中心角はどうやって求めるの?
こうした求積問題の解き方は、求める図形を「分けて考える」か、または求める図形を含む図形から「余分を引く」かの二通りがあります。
この問題は、求める図形を含む四分円から余分を引くことにより求めます。
四分円(中心角90度、4分の1円)の面積から、辺の長さが10cm・4cmの左の直角三角形と、右下の一見おうぎ形のような図形の面積を引けば、斜線部分の面積を求めることができます。
この考え方までは、多くの生徒が到達します。
ただ、右下のおうぎ形のような図形の面積を、どう求めたらよいか考えるうちに、この方法が間違っているのではないかと、あらぬ方向へ思考がずれてしまいます。
実は、最初に思いついた四分円から余分を引くという考え方で正解です。
では、右下のおうぎ形のような図形の面積の求め方を、教えましょう。
まず、上の図のように中心Oから円周上の点Pに半径を引きます。
今度は下の図をご覧ください。
右下の図形PQRの面積は、おうぎ形PORから三角形POQを引くことにより求めることができることが分かります。
さて、問題は三角形POQの底辺4cmは出ていますが、頂点Pから底辺に下ろした高さが出ていません。
しかし、三角形POQの高さを一辺とし、斜辺を半径10cmとする直角三角形の角度は30度・60度・90度となっていることに注目します。
三角定規の一つでもあるこの直角三角形の斜辺と、今回高さとした辺の長さの比は、2:1であることは、小4レベルの学習ですでに理解していなければなりません。
本格的な直角三角形の辺の比については、中学3年生の三平方の定理で学習しますが、今回の直角三角形の辺の比が、2:1であることは基本です。
このことから、高さは斜辺の半分の5cmであることが分かりますから、三角形POQの面積は、4×5÷2=10(平方センチメートル)となります。
この三角形の面積を、中心角30度のおうぎ形から引くことにより、右下の図形PQRの面積を求めることができます。
よって求める斜線部分の面積は、
(四分円の面積)-(底辺4cm・高さ10cmの直角三角形)-{(おうぎ形POR)-(三角形POQ)}
10×10×3.14×1/4-4×10÷2-(10×10×3.14×1/12-4×5÷2)
=10×10×3.14×(1/4-1/12)-20+10
=314×1/6-10
=52.3-10
=42.3(平方センチメートル)
中学生以上は、円周率πを用いて計算してかまいません。
10×10×π×1/4-4×10÷2-(10×10×π×1/12-4×5÷2)
=100π×(1/4-1/12)-10
=(100/6)π-10
=(50/3)π-10・・・分数表記ができないので( )を使用。
基本的な事柄を覚えていても、
それを使いこなせるようにしておかなければ、
真に覚えているとは言えません。
そこを「理解していなければなりません」とか「基本です」と言ってしまっては分からない生徒にとってはどれほどきつい言葉か分かりません。
そう言われた後は質問しづらくなるのです。
先生が述べていることはとてもためになるし、同意できることばかりですがここは少し引っ掛かりました。
実際の指導とは別であればいいのですが…。
算数も数学も、考える学問であることは自明でしょう。しかし、問題を考えていく過程で使う計算力や単位変換そして公式などは、まずしっかりと習得しておく必要があります。
今回の問題の質問をした生徒は、トップレベルの中学受験を目指す学力を持っていました。そういった生徒でさえ、基本的な事項が隠された問題を解くことが出来なかったことを示す内容でした。もっと言うと、中学で三平方を習った後でも、隠れた基本に気づくことがなかなか出来ないことを端的に示す出来事でした。大人もそして指導する立場の者さえ、そうしたことがあることでしょう。
2:1という比は、公立学校では小6で、塾でも小5で学習しますので、小4では出てきません。しかし、三角定規の30度・60度・90度三角形が、正三角形を左右対称に半分に切って作られることは、小4で学習します。したがって60度をはさむ辺の長さが、2と1の関係になっていることは、知っておく必要があります。
ましてや、中3に対して説明するとき、「知っておく必要がある事項」について、教える側は強調しておくべきでしょう。
このブログを読んでいる方、即ち私の前にいる方は、保護者の方であり、指導する側に立っている方で、小6受験生や中3の生徒ではありません。大谷さんがおっしゃっていることは、十分に理解できますが、「2:1」はたいへん難しい考え方ですねと言うより、「2:1」の関係は極めて基本事項ですが、それに気づくことが難しい!・・・そういった問題だと言うことを、そうした方に語りかけたかった内容です。
子どもに対して、塾での接し方と、公立学校での接し方が、私自身大きく異なるように、教える立場にあるものは、教える対象の生徒との関係や心情に充分な配慮をして、心して当たらなければならないことは充分に認識しています。
どうぞ、これからも気が付いたことについて、コメントをいただければ幸いです。