近隣を散歩すると、キク科の植物をたいへんよく見かけます。塾では小学4年の理科で、春の野草について学習します。たとえば春の七草・・・セリ・ナズナ・ゴギョウ(ハハコグサ)・ハコベラ(ハコベ)・ホトケノザ(コオニタビラコ)・スズナ(カブ)・スズシロ(ダイコン)。またオオイヌノフグリ・シロツメクサ・カラスノエンドウ・タンポポ・スミレ・など、春に花を咲かせる野草を学習します。
授業の中で使用している四谷大塚の予習シリーズに、春の野草として出てくるハルジョオンと誤記されているハルジオンとヒメジョオンは、識別法を理解していないと、なかなか判別できません。今回のブログでは、その簡単な見分け方を、近隣で見かけた両者を画像で比較しながら、簡単に説明しましょう。
4月から5月になると、野原や河川敷などいたる所で見かけるキク科の植物が花を咲かせています。そのキク科の植物の一つが、下の画像の「ハルジオン」です。
ハルジオンは、キク科ムカシヨモギ属の植物です。「ハルジオン」を漢字に直すと「春紫菀」で、「春に咲く、キク科のシオン(紫菀)」という意味です。多年草で、背の高さが30~80cmくらいになり、根元には根出葉があり、花の時期にも残っています。茎はあまり枝分かれせずに伸び、先の方で何回か枝分かれして、花をつけます。花はヒメジョオンと同じく、細い舌状花を持つヒマワリのような花で、白とピンクのものがあります。
北アメリカ原産の帰化植物で、大正時代の中頃に観賞用として日本に入ったと言われています。現在ではほぼ日本全国に分布し、都会を中心に見られます。四谷大塚の小4の予習シリーズにも誤記されているように、ハルジオンは同類のヒメジョオンと混同しされて、ハルジョオンと呼ぶ間違いが見られます。
ハルジオンに少し遅れて、ほぼ同じような場所に生えているキク科の植物を見かけますが、それが下の画像の「ヒメジョオン」です。ヒメジョオンはキク科ムカシヨモギ属の植物で、同属のハルジオンと共に、道端でよく見かける雑草です。
ヒメジョオンの背の高さは、ハルジオンより少し高く、50~100cmほどになり、白い花を咲かせる一年草です。若い時期は、根本から長い柄のついた丸みを帯びた葉(根出葉)を付け、やがて茎が高く伸びると、根本の葉は無くなり、茎から出る細長い葉だけになります。ヒメジョオンの茎は初めは枝分かれせず、先の方で数回の枝分かれをして、白か薄紫の花を咲かせます。
花の時期は、ハルジオンの盛りが過ぎた頃、初夏から秋にかけてです。都会の公園や河川敷では、このハルジオンが最も目立つ頃、草刈が行われるところが多く、哀れにもハルジオンの多くが刈り取られてしまう運命にあるようです。その後に、選手が交代するように、6月に入るとヒメジョオンが目立ち始めるので、花が目立つ時期によって、両者を判別することが可能です。
北アメリカ原産の帰化植物で、日本には明治時代の初めに観葉植物として入ってきました。現在では、全国に広がり、山間部にも入り込んでいます。
「ヒメジョオン」は漢字に直すと「姫女菀」で、「姫」は「小さい」、「女菀」は「中国産の野草」を表します。ハルジオンとヒメジョオンを一見して比較すると、「ヒメ」が付いているヒメジョオンのほうが、ハルジオンより背丈も高く、男性的です。
(ハナムグリ・・・ハルジオンの花によく付いている昆虫
:甲虫目 カブトムシ亜目 コガネムシ科 ハナムグリ亜科)
科も属も同じヒメジョオンとハルジオンは、大変よく似ていて混同されています。
この二者を区別するには、以下の点に注意して観察することです。
(1)茎を折ると、ハルジオンの茎は中心部が空隙があり、それに対してヒメジョオンには空隙がない。
(2)ハルジオンの葉は、茎を巻くように付いていますが、ヒメジョオンの葉は、茎を巻くようには付いていない。
(3)比較すると、ハルジオンよりもヒメジョオンのほうが背丈が高い。
(1)から(3)までの3つの識別法で、慣れると間違いなく見分けることができます。
(ハルジオンの葉は、茎を巻くように付いている)
(ヒメジョオンの葉は、ハルジオンのように茎を巻くようには付いていない)
他に、若干分かりづらいのですが、以下の点においても二者には差異があります。
(4)ヒメジョオンの方が花は小さめで数が多い。
(5)ハルジオンの根元には葉があり、ヒメジョオンには根元に葉が無くすっきりとしている。
(6)花を付ける時期は、ハルジオンが早く、それに遅れてヒメジョオンが咲き始める。
(7)ハルジオンの蕾はうなだれるように下を向き、ヒメジョオンの蕾は上を向いている。
(ハルジオンの根元)
キク科(1300属21000種類)の植物は、ラン科(700属以上1500種)とマメ科(657属16400種類)などと並び、最も多い仲間をもつ植物です。
キク科の植物の最大の特徴は、小さな花(小花)がたくさん集まり、それが一個の花に見えることです。実際にタンポポの一枚の花びらを引き抜いて調べると、実は5枚の花びらがくっついた合弁花で、花びらと思ったものは、実は一つの花(小花:しょうか)であることが分かるでしょう。
また5本のおしべは、くっついた状態でめしべの周りを取り巻いて付いています。そして、全体の花を包むガク(萼)のように見える部分を、総苞(そうほう)と呼びます。
(タンポポ)
キク科の花は、頭状花序(頭花)をつくる小花の形状で、大きく二つの種類に区別します。一つは花びらの基部が細い筒となり、先端部が五つに割れて星形になったもので、これを筒状花(つつじょうか)といい、アザミなどがその仲間です。もう一つは、花びらの基部は細い筒ですが、その先は幅広い平坦な広がりを作るもので、これを舌状花(ぜつじょうか)といい、タンポポなどがそれにあたります。
ただ、ヒマワリや今回紹介したハルジオンやヒメジョオンなどのように、中心部に筒状花が密集し、周辺に舌状花が並んで飾りとなっているものも多数あります。キク科の仲間は、ヨモギ属・キク属・ゴボウ属・ムカシヨモギ属・ガーベラ属・ヒマワリ属・シカギク属・フキ属・セネキオ属・タンポポ属・・・・・。
身近に咲くキク科の植物名を覚え、
少しばかり注意して観察して識別できると、
とても楽しい散歩ができ、
また思わぬ発見があります。
(ハハコグサ・・・キク科の植物)