ほなさんの汗かき日記

かくれ肥満の解消に50歳を超えてはじめた健康徒歩ゴルフ。登場する個人名、会社名、内容はフィクションである。

今年の暑い夜の話(続)

2007年09月17日 | 日記
地元に居る人間ですら驚くほど、阿波踊りは進
化してきた。
「踊る阿呆(あほう)に見る阿呆、
 同じ阿呆なら踊らなソンソン」
と受け継がれた歌詞通り、自分たちのエネルギ
ーの発露として、いわゆる「踊る」ことを第一
義にした「大型盆踊り」だったものが、洗練さ
れ県外からの観光客に喜んでもらえるものにな
ってきた。
踊りそのものも基本パターンを踏みつつ、多様
化の道をたどり、地元の人間ですら、見物にゆ
くと毎年新しい発見がある。

しかし、その中で一番発展してきたのは「おも
てなしの心」だろう。
ここ数年は見物側への配慮が加わってきた。商
業的にショーアップしたことより、それを支え
る「心」が磨かれてきたように思う。その結果
、リッパな舞台に行かずとも、いろんな場所で
、いろんな形で、お金を使わずとも阿波踊りと
徳島の暑い夏が楽しめるのだから阿波っ子とし
て、お勧めし自慢できる祭りになった。

そういう訳で、Mさんにも踊り見物を勧めた
のだが、見えないという障害がどれほどのも
のとなるか、とても不安があった。そこで、
踊り見物にゆくぞ!という気分になるために、
踊り子さんが着る半被を準備した。
目の見えない方は、見える人以上に着るもの、
スタイルに敏感なのだ。

女房が奥様にハッピを着せた。そしてどんな
柄なのか説明した。真っ赤のハッピの左右に
「徳島名物」
「阿波踊り」
そして背中に大きく
「踊り」
と染め抜かれているのよ、
と妻が言うと、顔がだんだん紅潮し、
「ありがとう、ありがとう。」
とうれしそうに何度も言った。子供のような
素直なしぐさが、喜びを物語っている。うれ
しさいっぱいの人を見ると、こちらはさらに
うれしい。

雑踏の中を歩き、4人は桟敷に着いた。徳島
でも一番大きな「桟敷」だ。それだけ有名「
連」が出る確率が高い。座ってしばらくする
と、徳島のお盆の最後の熱演が始まった。大
きな音の鳴り物が近づくと、自分の体も振動
するようだった。人の体も楽器なのだ。
奥様は音のする方を見ている。旦那は時折説
明しながら、デジカメを撮っている。

大太鼓の集団がやってきた。鼓膜にビンビン
響き、話し声さえ聴こえない。旦那はカメラ
に一生懸命、それに気付いた女房が、奥様の
耳元で、情景を細かく説明していた。

やっこ踊りがくる、かわいい子供の踊り子さ
んたち、ひょうきんな男踊り、女性ばかりの
いなせな「男踊り」、次から次へ飽くことな
い時間がすぎて行く。女房の横で奥様は、ウ
ンウン頷き、浮かれるしぐさが可愛いかった。
それをみて旦那も喜んでいた。

桟敷は川風がときおり吹き、意外と涼しかっ
た。興奮の2時間、持参したペットボトルは、
熱気にあてられ空になった。踊りおさめ「総
踊り」は、鳴り物をバックに、踊り子さんと
共に観客も参加し、今年「最後」の踊りを楽
しむ仕組みになっている。

Mさんとほなさん夫婦は、総踊りの流れに沿
って、もまれるように外に出た。出口付近で
は、流れる汗の踊り子さんらが、ひとりひと
りのお客さんへ「ありがとうございました。
またお越しください。」と声を掛けて、写真
のリクエストに応えていた。顔見知りの踊り
子もいた。みんなにこやかに、お客様を送り
出そうとしている。おもてなしの心が、表情
やしぐさに出て、それがお客さんに伝わり、
あたり一帯、温かい雰囲気に包まれた。

ホテルへゆく信号機の前で、Mさん夫妻と別
れた後、
「十分に楽しんでくれたみたいやね。」
とほなさんが言うと、
「奥さんは絶対また来るから、と喜んでいた
わ。」
と女房が返事した。

今日は何度も泣いた。Mさんの奥様の喜ぶさ
まをみて旦那さんも泣いていた。ほなさん夫
婦も泣いた。

見えないことは重大なことだ。
でも人に授けられた五感のうちのひとつに過
ぎない。たったひとつ足りなくても、残り四
感がさらに発達するのかもしれないなぁ、と
夫婦で話した。
「楽しむ」ということを、誰にだってできる
よう神は人間に与えてくれているのだね。

8月の終わりごろ、Mさんから電話があった。
「徳島から帰って、兄弟が集まったんですけ
ど、女房が阿波踊りが楽しかったいうて騒い
で騒いで。みんな喜びました。今日の夜、N
HKで阿波踊り特集があるさかい、女房が楽
しみしてるんですわ。ほなさん、ありがとう
。奥さんにもよろしく。」
そう伺って、また、ほなさん夫婦は泣きまし
た。

今夜、華奢な奥様は、赤のハッピを着て、T
Vの前で「よしこの」のリズムにあわせ、踊
りだすかもしれないなぁ。そう思うと、こち
らもうれしさ倍増。またポロリ、、、。

♪踊る阿呆に 見る阿呆、同じ阿呆なら踊ら
 なそんそん
♪エライヤッチャ、エライヤッチャ、ヨイヨ
 イヨイヨイ~
そこのみなさんも踊ってくださいな、
♪あ、ヤットサー、それ、ヤットサー
両手をあげて、前に歩けば阿波踊りー、遠慮
せずにどうぞ
♪いちかけ、にかけ、さんかけて、やっぱり
 踊りはやめられぬー、
 ヤットサー、ソレソレソレソレーー

           (終)

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2 コメント

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泣けました・・・。 (いっちゃん)
2007-09-18 22:48:27
素晴らしい出会い~経験をされていますね。

Mさん夫婦にとっても素晴らしい夏になったでしょうが、ほなさん(と、お呼びしても良いでしょうか?)夫婦にとっても、とても素敵で記憶に残る夏になったのではないでしょうか?

本文を読んでいて思わずホロッとしてしまいました。

来月はMさんとのゴルフぜひ楽しんできてください!

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いっちゃんさんへ (ほなさん)
2007-09-19 19:17:47
読んでくださってありがとうございます。
出会いってうれしいですね。
来月はがんばってきますわ。
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