決死の思いで受けたインターフェロンは、体内
にいれるとやはり辛かった。でも仕事を軽いも
のにかえたことで、辛いときは身体を休めなが
ら次の段階へと進むことができた。拒否反応が
少し減ったことも幸いしたようだ。
薬代は保険の高額医療の対象になったから、あ
とは生保の通院日額などで、費用の大部分は補
えたという。
彼はその後インタフェロンの規定回数を終え、
それ以来、毎年検査をしてきたが、一度も菌が
出たことはなかった。前回の検査を終えた時、
ドクターは、
「もう心配ないでしょう。今年で検査は終わり
にしてもいいですよ。」
と言った。
ほなさんには、彼がしたであろう安堵の顔が想
像できた。
しかし、どうなんだろう。
完全に安心したかといえば、そうはならない。
死の淵を覗き見た者は、懐疑的になることだろ
う。すぐ隣にあまりの堂々とした態度で知らん
顔してガンも死も、安息の場所にまぎれて存在
している事実を知ってしまえば、もう昔のよう
な気分になれないだろう。
彼は自営業者として、変電所の管理を任されて
いるという。24時間、365日、事が起これ
ば、いざ鎌倉とかけつけなくてはならない。だ
から旅行なんかは絶対いけないと苦笑したが、
彼の目は、生きてることは素晴らしいと語って
いた。
こんな大事な話を、見知らぬ私が聴いてしまって
良いものだろうか、そう思いながらショットと
パターを繰り返した。
その後、7,8,9ホールを周り、ほなさんは
帰ることにした。午前中に歩き出し、20分の
休憩だけで、今日は7時間ラウンドした。貧乏
性の私でさえも、これだけ周れば気は済んだ。
陽は堤防の淵に傾きつつあったが、あと1時間
はラウンドできそうだった。彼は、アイアンを
片手でぶらさげるように持つと、次のホールへ
軽やかにカートを引いて行った。
ほなさんが、
「また会えるといいですね。」
と彼の背中に言葉を投げると、顔だけ振り返っ
て、ニコっと笑った。
彼の向こうには、秋の夕日がゆっくりと傾き、
河川敷の人影も数えるほどになった。
にいれるとやはり辛かった。でも仕事を軽いも
のにかえたことで、辛いときは身体を休めなが
ら次の段階へと進むことができた。拒否反応が
少し減ったことも幸いしたようだ。
薬代は保険の高額医療の対象になったから、あ
とは生保の通院日額などで、費用の大部分は補
えたという。
彼はその後インタフェロンの規定回数を終え、
それ以来、毎年検査をしてきたが、一度も菌が
出たことはなかった。前回の検査を終えた時、
ドクターは、
「もう心配ないでしょう。今年で検査は終わり
にしてもいいですよ。」
と言った。
ほなさんには、彼がしたであろう安堵の顔が想
像できた。
しかし、どうなんだろう。
完全に安心したかといえば、そうはならない。
死の淵を覗き見た者は、懐疑的になることだろ
う。すぐ隣にあまりの堂々とした態度で知らん
顔してガンも死も、安息の場所にまぎれて存在
している事実を知ってしまえば、もう昔のよう
な気分になれないだろう。
彼は自営業者として、変電所の管理を任されて
いるという。24時間、365日、事が起これ
ば、いざ鎌倉とかけつけなくてはならない。だ
から旅行なんかは絶対いけないと苦笑したが、
彼の目は、生きてることは素晴らしいと語って
いた。
こんな大事な話を、見知らぬ私が聴いてしまって
良いものだろうか、そう思いながらショットと
パターを繰り返した。
その後、7,8,9ホールを周り、ほなさんは
帰ることにした。午前中に歩き出し、20分の
休憩だけで、今日は7時間ラウンドした。貧乏
性の私でさえも、これだけ周れば気は済んだ。
陽は堤防の淵に傾きつつあったが、あと1時間
はラウンドできそうだった。彼は、アイアンを
片手でぶらさげるように持つと、次のホールへ
軽やかにカートを引いて行った。
ほなさんが、
「また会えるといいですね。」
と彼の背中に言葉を投げると、顔だけ振り返っ
て、ニコっと笑った。
彼の向こうには、秋の夕日がゆっくりと傾き、
河川敷の人影も数えるほどになった。