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福島第1原発事故避難者千葉訴訟、国の責任否定、東電にのみ賠償命じる

2017-09-24 23:54:28 | 原発問題/一般
原発事故、国の責任認めず=前橋地裁と判断分かれる-避難者訴訟判決・千葉地裁(時事)

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 東京電力福島第1原発事故で、福島県から千葉県に避難した18世帯45人が、国と東電に慰謝料など約28億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が22日、千葉地裁であった。阪本勝裁判長は「国は大津波を予見できたが、事故を回避できなかった可能性がある」と述べ、国への請求を退けた。一方、東電に対しては、42人に約3億7600万円の賠償を命じた。

 全国に約30ある同種訴訟で2件目の判決。1件目の前橋地裁判決は国の責任を認めており、判断が分かれた形だ。10月10日には原告数が約3800人と最も多い福島地裁で判決が予定されており、判断が注目される。

 大津波を予見できたかが最大の争点だった。阪本裁判長は、政府機関が2002年に公表した津波の長期評価に基づき、「遅くとも06年までに敷地の高さを超える津波を予見できた」と述べた。

 しかし、非常用電源の高台設置などの対策を採ったとしても、時間的制約や津波被害の大きさから、事故を回避できなかった可能性があると指摘。「規制権限を行使しなかったことが著しく合理性を欠くとは認められない」と判断した。

 東電に対しても、大津波を予見できたと認定したが、「対策を完全に放置したとまでは評価できない」と言及。慰謝料を増額するような重大な過失があったとは言えないと述べた。その上で、過失の有無にかかわらず事業者が賠償責任を負うことを定めた原子力損害賠償法に基づき、請求の一部を認めた。

 原告側は事故で生活基盤を失ったなどとして、1人2000万円の「ふるさと喪失慰謝料」を求めていた。判決は「事故と因果関係のある精神的損害として対象にすべきだ」とし、一部の支払いを命じた。建物や家財道具など個別の損害も認めた。

 3月の前橋地裁判決は、「国は津波を予見でき、非常用電源の高台設置などで事故は防げた」と判断。国と東電の責任を認め、原告の約半数に当たる62人に総額3855万円を支払うよう命じた。(2017/09/22-18:17)
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全国各地の原発避難者訴訟で2件目となる福島原発千葉訴訟(9/22千葉地裁、阪本勝裁判長)は、(1)国には「予見可能性がなかった」として国への請求を棄却、(2)東電に対しては予見可能性を認めたものの、「津波は回避できなかった」として結果回避可能性を否定。ただし、原子力損害賠償法(原賠法)が電力会社の無過失責任を定めていることに立脚して賠償を認容――という内容だった。

3月の前橋地裁判決では国に予見可能性、結果回避可能性を認め、国、東電への賠償をいずれも認める内容だっただけに、国の責任を認めず、国への請求も棄却した今回の判決は前橋地裁判決から見て大幅な後退と評価せざるを得ない。特に、事故の予見可能性を認めながら結果回避可能性を否定したことは、「事故が起きるとわかっていても、何も対策を取らず傍観していてもよい」というのと同じことであり、東電の責任も免罪する不当判決である。ただ単に「もたらした結果が重大であるから賠償せよ」というものに過ぎない。原告団、弁護団ともに不当判決として即日控訴の方針を表明している。

一方、賠償面を見ると、前橋地裁判決が原告62人に対し賠償総額3,855万円(1人当たり622,000円)であったのに対し、今回の判決は42人の原告に対し3億7,600万円(1人当たり8,950,000円)と約14倍の賠償水準。1人1ヶ月当たりで見ても124,000円となり、避難指示対象者に支払われてきた「精神的賠償」(1人1ヶ月100,000円)を上回る水準となった。「自主」避難者に対しても、1世帯4人に対し1人当たり300,000円の賠償を認めたが、「自主」避難者への東電からの賠償は、過去、1回限り8万円の支給にとどまっており、不十分ながら従来の水準を大幅に上回っている。前橋判決の賠償水準があまりに低すぎたことを考慮しても大幅な前進であり、この点は一定の評価ができる。

この他、(1)原子力損害賠償紛争審査会(原賠審)の指針を「最低限の水準」に過ぎないとし、指針で認めていなかった「ふるさと喪失」について、長年住み慣れた住居や地域での生活を断念させられたことによる精神的苦痛は「現在の避難者賠償では補てんしきれない」として賠償額の上積みを認めたこと、(2)前橋に引き続き「自主」避難者にも賠償を認めたこと、(3)低線量被曝について「年間20mSvを下回る被曝が健康被害を与えると認めるのは困難」とする一方、「100mSv以下で健康被害のリスクがないという科学的証明もない」とした上で、「住民が放射線への不安や恐怖を感じることに合理性が認められる場合もある」と「自主」避難の合理性を認め、賠償に反映させたことは前進した点である。

全体を通してみると、大きく後退した面(国の責任を棄却)、大きく前進した面(賠償額の大幅アップ)があり、評価は難しい。原告団、弁護団がともに「不当判決」としていること、国の責任を司法に認めさせることがこの裁判の主目的であったことを考えるなら、この最も重要な部分で請求が棄却されたことは不当と言わざるを得ない。福島原発告訴団が行った告発を元に強制起訴が行われた勝俣恒久元東京電力会長らの刑事裁判にも悪影響があるかもしれない。ただ、賠償の大幅アップもあり、全体を不当判決として否定し、切り捨ててしまうことはどうやら私にはできそうにない。

再稼働を止め脱原発に結びつけていくためには、国の責任が認められてこそだという思いもある。しかし、国の責任が否定されても、電力会社に高額の賠償金を命じる裁判例を積み上げていくことで、電力会社に原発が高くつくと思い知らせることができれば、そこから脱原発に向けた突破口が切り開かれる可能性もある。

やはり基本に立ち返って、判決の不当な部分はきちんと批判し、前進した部分をきちんと評価して次につなげていくための闘いを組み立てることが必要だと思う。

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