安全問題研究会~鉄道を中心に公共交通と安全を考える~(旧「人生チャレンジ20000km」)

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東北本線、東京~仙台間全通

2011-04-17 22:32:10 | 鉄道・公共交通/趣味の話題
東北線、東京から仙台まで接続…貨物も直通へ(読売新聞)

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東日本大震災で運転を見合わせていたJR東北線の黒磯―安積永盛駅間が17日、運転を再開した。

 これにより、東北線は東京から仙台までつながった。

 貨物列車も同日夜、宇都宮貨物ターミナル―仙台貨物ターミナル駅間の運転を再開。貨物列車はこれまで、首都圏から日本海側を経由して東北地方に向かっていたが、首都圏から仙台まで直接、物資を運べるようになる。
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物資不足が続いていた東北地方に、ようやく本来の輸送ルートが戻ってくる。大震災による猛烈な燃料不足を解消しようと、すでに石油輸送だけは、割きに全線復旧した磐越西線を使って、根岸精油所から上越~信越~磐越西線のルートで行われていたが、こうした迂回輸送も終了する。

迂回輸送の動画(dd51de10さん)

時には、こんな苦労もあったようだ。

磐越西線迂回貨物列車 救援ED10後部補機連結(dd51de10さん)
磐越西線迂回貨物列車 救援ED10後部補機連結後、立ち往生から出発(dd51de10さん)

いずれも、他の方の撮影なので埋め込みにせず、リンクとしている。

わずか1ヶ月限定だったが、この石油救援列車は、東日本大震災に絡む忘れられない1シーンとなるだろう。

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震度6弱~5弱の余震続く

2011-04-12 22:13:38 | 気象・地震
「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第35報)(4月11日、福島県浜通り沖の余震)

「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第36報)(4月12日、千葉県東方沖の余震)

「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第37報)(4月12日、福島県浜通り沖の余震)

ここ数日、大規模な余震が発生するペースが速く、当ブログ管理人の解説が全く追いつかないので、ここでまとめてコメントする。

1.4月11日、福島県浜通り沖の余震

発生日時:4月11日17時16分
発震機構:東北東-西南西方向に張力軸を持つ正断層型 (速報値)
地震の規模:M7.0(速報値)
場所および深さ:福島県浜通り(いわきの西南西、約30km付近)、深さ6km(暫定値)

震源深さが6kmときわめて浅いところで発生したため、揺れが大きくなったが、その分、揺れた範囲は小さかったと思われる。注目していただきたいのは発震機構だ。3月11日の東日本大震災は西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型だったから、圧力のかかる方向が逆になっている(逆断層型は活断層同士が内側へ押し合って発生するのに対し、正断層型は外向きに引っ張り合って発生する)。

3月11日の東日本大震災は、桁外れに大きな地震だったため、この地震自体が地殻の大きなずれやゆがみを発生させたと見られる。地震学者は、東日本大震災に伴って内側に押しつけられすぎてゆがんだ地殻が、そのストレスを発散させるために逆方向に動いたことが原因ではないかと指摘している。余震のひとつに違いないが、余震ひとつとっても3月11日の東日本大震災がいかに桁外れだったかを再認識させてくれる。

2.4月12日、千葉県東方沖の余震

発生日時:4月12日08時08分
発震機構:東北東-西南西に張力軸を持つ横ずれ断層型(速報値)
地震の規模:M6.4(暫定値)
場所および深さ:千葉県東方沖、深さ26km(暫定値)

震源深さは、やや浅め。横ずれ断層型というのは、地殻が上下方向でなく横方向にずれて発生する。日本近辺では余り発生例のないケースだが、東日本大震災で発生した新たな地殻のずれを解消するために起きたものかもしれない(圧力のかかる方向が、1の余震と同じ東北東-西南西であることにも注意してほしい)。

3.4月12日、福島県浜通り沖の余震

発生日時:4月12日14時07分頃
発震機構:北北東-南南西方向に張力軸を持つ型(速報値)
地震の規模:M6.3(速報値)
場所および深さ:福島県浜通り、深さ約10km(速報値)

規模は1の余震よりマグニチュードでほぼ1小さいので、エネルギーは約30分の1程度だが、例によって浅いところで起きたため揺れが大きくなったと考えられる。福島県沖を震源とする地震は見たところどれも震源がきわめて浅く、それほどのエネルギーでなくても激しい揺れが伴うことが多い。今後も注意が必要だ。

圧力のかかる方向は1・2の余震とはまた別で、これも東日本大震災による地殻のずれを修正するための別の地震というところだろうか。

●1~3の余震を全体的に見て
地震学者が指摘するように、東日本大震災が桁外れであったため、地震それ自体が新たな地殻のずれやゆがみを発生させたのだとすれば、今後もこれを修正するための地震はかなり長い期間、起きると考えられる。場合によっては今後数年間はこうした「後処理」的地震の発生があるかもしれないが、そうした地震が発生した場合、地震学的に東日本大震災の余震活動かどうかを判定するのは時間が経過するほど困難を伴うだろう。

この地域はプレート境界近くにあるため、地殻の内部には移動するプレートによって常に巨大な力がかかり続けている。地殻のずれやゆがみは大きなものほど早く修正され、次第に小さなものへと及んでいく。つまり、余震活動は初め活発で、次第に衰えていく。地震の規模もそれに伴い、小さくなっていくに違いない。

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仏製ガイガーカウンター、2万円未満の安価で発売へ

2011-04-12 22:08:23 | 原発問題/一般
仏企業、放射線計測器を日本で発売 価格は2万円未満(日本経済新聞)

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 仏計測器メーカーのナノセンス社(ブーローニュ市、オリヴィエ・マルティモール社長)は11日、一般消費者向けの放射線計測器「ガイガーカウンター」を日本で発売すると発表した。

 東京電力の福島第1原子力発電所の事故を受け、身の回りの放射線を測定したいという需要に対応。装置の表示や説明書を日本語版に改めた。価格は2万円未満とし、数週間以内に出荷する。大手家電量販店などを通じて販売するとみられる。
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さすがは「原子力依存度世界一」のフランス、目ざとく素早い対応だが、こうしたものが必要になる時代に入ったということが悲しい。今後、一家に1台の時代が来るのだろう。

ネットの匿名掲示板では、民主党政権が「風評被害」ばかり気にして放射線の影響を意図的に小さく見せるため、食料品の出荷停止はアリバイ作り程度の小幅にとどまる、とする意見が多い。この場合、本当は出荷してはならないにもかかわらず出荷される周辺地域産の農産物は、「産地偽装して出荷」「他県産とブレンドして出荷」「産地を表示する義務のない外食産業、社員食堂、学校給食へ出荷」のいずれかになるのではないだろうか。本当に、今の政権のやっていることは救いがたい背信行為だ。

他県産とブレンドなど起こりうるのか、という向きもあるかもしれないが、現在の法律では使用比率が一定以下の食品添加物や原材料は表示する義務がないため、このような偽装はいつでも起こりうる。消費者庁などの行政に対し、食品添加物や原材料は使用量がわずかであってもきちんと表示させるなどの運動を起こさないと、いつどこでどんな「放射能入り食料」を食べさせられるかわからないと思う。

いずれにしても、放射性物質にまみれた「偽装食品」を見抜く上からもガイガーカウンターは今後、一家に1台の必需品となるだろう。だが、人体にとって最も有害な放射線であるα線が透過力が低いため計測できないなど、ガイガーカウンターもまた万能ではない。放射性物質の混入した食料品による被曝をどのように避けるか、重い課題も突きつけられている。

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隠し続けられてきた「原発奴隷」

2011-04-09 10:59:45 | 原発問題/一般
(この記事は、当サイト管理人が月刊発行の会報編集部より依頼を受け執筆した原稿をそのまま掲載したものです。)

 東日本大震災に伴って起こった福島原発事故によって、原発で奴隷的労働に従事していた作業員が大量被ばくさせられている。原発労働者の多くが下請けや派遣などの非正規労働者であることや、その非人間的な労働実態はこれまでひた隠しにされてきた。

 近づくのも困難な水準の強い放射能が漏れ続けているさなかにも、インターネットには福島原発作業員の求人広告が掲載されたままになっている。仕事内容は「原子力発電所内の定期検査・機械・電気・鍛冶溶接及び足場作業」、給与は日給で9,000~11,000円、応募資格、スキル・経験は不問。雇用形態は「正社員以外」とある。強い放射線を常時浴び続ける仕事なのに、日給だから休めば給与は1円も出ない。病気になればゴミのようにポイ捨てだ。これが奴隷でないならいったい何なのだろう。

 政府・電力資本に手なずけられ、権力へのチェックという役目をすっかり忘れて長い惰眠をむさぼり続ける日本メディアに代わって、海外メディアは優れた報道を残している。やや古いが「日本の原発奴隷」と題したスペインの新聞「エル・ムンド」(2003年6月8日付け)によれば、「失うものを何も持たない者達の仕事」として福島原発作業員の仕事がホームレスたちにあっせんされ、そして彼らは正社員が決して入ることのない、最も危険な業務へと送り込まれる。放射線測定器が振り切れているのに、彼らは計器の故障だとみずからに言い聞かせ、危険な作業を続けるのだ。

 原発作業員に最下層の人たちをあっせんする慣習は30年以上にわたって続けられ、現在に至っている。権力と電力資本に魂を売り渡さなかった数少ない原子力学者のひとり、藤田祐幸氏の調査によれば、その間に700人から1000人の下請け労働者が亡くなり、さらに何千人もがガンにかかったという。

 大量の労働者を破滅的な健康障害に追い込むことで初めて成り立ってきた科学技術が、今度は地域住民を大量被ばくに追い込んでいる。原発が人類を殺すのと、人類が原発を殺すのとどちらが先か突きつけられている。私たちはこの闘いに勝たねばならない。

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<東日本大震災>余震としては最大の震度6強が発生

2011-04-08 12:31:21 | 気象・地震
「平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震」について(第34報)(気象庁プレス)

昨夜、東日本大震災の余震としては最大の震度6強を記録した。避難所の人たちや被災地域の人たちは、3月11日の記憶がよみがえってきたに違いない。

ある地震が別の地震の余震であるかどうかを判断するためには、震央(震源)、震源深さのほか、発震機構(地震のメカニズム;揺れの方向及び正断層型、逆断層型、横ずれ断層型のいずれに該当するか)をみればいい。今回は、西北西-東南東方向に圧力軸を持つ逆断層型で、3月11日と全く同じである。震源深さが40kmと、3月11日より深いものの、余震と見ていいだろう。

地震の規模を表すマグニチュードは7.4(速報値)。M9.0だった3月11日の地震から見れば地震そのものが持つエネルギーは1000分の1程度だ。このエネルギーの小ささと震源の深さが幸いして、大きな津波に発展しなかった。

今回の東日本大震災は、海底が5メートル隆起したほか、24メートルにわたって地殻が移動するなど、これまでの地震とは桁外れである。震度6強~5強程度の余震は2~3ヶ月、それ以下の規模の余震なら1年近く続く可能性もある。

しかし、どんな大きな地震でも5~10年も余震が続くことはない。余震の規模・回数は2~3ヶ月後くらいから次第に減少が体感できるようになり、半年程度経てばはっきりと落ち着きが実感できるようになる。

ここが踏ん張りどころだと思う。明けない夜はないと信じるしかない。

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呆れた情報統制の実態~原発事故の真実を伝えることは「流言飛語」になるらしい

2011-04-07 23:34:24 | 原発問題/一般
東日本大震災に係るインターネット上の流言飛語への適切な対応に関する要請

もう、呆れてものが言えない。

そもそも、原発推進政策を変えたくないために安全でないものを根拠なく安全と強弁し、「安全」だとの主張を維持できなくなれば、「安全基準」のほうを操作して基準内に収まるように情報操作・統制してきたのは民主党政権と東京電力ではないのか(原発作業員の被曝限度引き上げなどは目くらましの最たる例だ)。

政府が正しい情報を発表しないから混乱も「風評被害」も起きているのだ。それに疑問を呈し、原発反対派の学者らがインターネットで正しい情報を発信すれば、「流言飛語」呼ばわりとは・・・。

自民党から民主党に政権交代して、自民党政権よりはっきりと後退した分野がある。それは「情報公開」である。私は格差を拡大し、弱者を放置した自民党政権を評価していないが、少なくとも何を情報公開し、何を公開すべきでないかの判断については自民党政権のほうがずっと適切だったと思う。自民党ホームページには与党時代、「デイリー自民」というコーナーがあり、政府提出法案の各部会での事前審査などについては経過概要が公表されていた。どの省庁所管のどの法案が党内の何部会で審議され、どのような意見が議員から出てどのように了承が取り付けられたかが国民にわかるように公表されていたのである。

対照的に、この期に及んでも「奥の院」で誰かが極秘に政策を決定し、それが党内手続きさえきちんと経ないまま突然発表されるという民主党政権の最悪の問題点はなにひとつ解決していない。まるで、ブレジネフ時代のソ連とクレムリン宮殿を見ているかのようだ。

今は原発事故に全力を注ぐべきであり、「菅降ろし」などすべきでないという主張がある。しかし、自分のことを棚に上げ、政府を批判する国民を愚民呼ばわりとは呆れた政権である。こんなことに使うエネルギーと暇があるなら、民主党議員は全員福島原発の放射能漏れを止めに今すぐ現地にでも行ってくればいい。

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現実となった「日本放射能大汚染」の危機~被災地から改めて脱原発を訴える

2011-04-04 22:52:12 | 原発問題/一般
(当エントリは、当ブログ管理人が月刊誌に発表した原稿をそのまま掲載しています。)

 2011年3月11日、その瞬間、筆者の福島県の自宅は、まるで容器に入れられ、左右に揺さぶられるように激しい横揺れが5分以上も続いた。左に右に揺さぶられるたびに何かが壊れるような音が聞こえた気がした。揺れが収まるまで10分近くかかったと思う。

●現実となった「原発危機」

 『東海大地震 浜岡原発爆発で首都崩壊』――『週刊現代』誌に、こんなショッキングな見出しで大地震による原発事故を想定したシミュレーション記事が掲載されたのは2006年6月のことだった。筆者が今も手元に保管してある記事は、次のような事態を想定したものだ。

 2006年6月某日、御前崎沖を震源とする東海大地震が、朝の通勤ラッシュの時間帯を襲う。最大震度7、地震の規模を示すマグニチュードは8。通勤途中の路上で動けなくなった人々の上に、破片となったビルのガラスが降り注ぐ。走行中の東海道新幹線が脱線し、ビルに激突して多くの死者を出す。木造家屋は跡形もなく焼け落ちる。沼津市ほか沿岸地域では5~10メートルの津波に襲われ、多くの沿岸住民が海に消える。

 電話もつながらない混乱の中、浜岡原発では地震の巨大な衝撃で建物が崩壊、冷却水の配管が破断。地震から約1時間後、ついに炉心溶融が起こる。大量に噴出した放射能は西から東への風に乗って、地震から6時間後の午後3時過ぎ、東京上空に到達。パニックで逃げまどう東京都民を「黒い雨」が襲った…。

 記事は、この地震と原発崩壊による静岡県内の死者を最終的に24万人、その後10年間、ガンや白血病で亡くなる人を191万人と見積もっている。

 あまりに衝撃的な地震・原発災害複合シミュレーションだが、東海大地震を宮城県沖地震、沼津市沿岸を三陸沿岸、浜岡原発を福島第1原発と置き換えれば、今、事態はこのシミュレーション通りに進行していることがわかる。被害の想定は放出される放射性物質の量や種類、風向き等の気象条件によって変わるから、現時点でどの地域の誰にどれだけの放射能被害が出るかを予測することは難しいが、原子力に詳しい識者は「妊婦・胎児、子どもたちはできるだけ福島第1原発から遠ざけるべきだ」と警鐘を発している。

●電力は不足などしていない

 2007年7月の新潟県中越沖地震による柏崎刈羽原発の被災に続き、今回の地震で福島第1、第2の各原発も発電停止となったことから、東京電力は、電力供給不足を理由に史上初の計画停電に踏み切った。どの地域がいつ何時間停電になるのかについて、東京電力の発表は二転三転、迷走し続けており、首都圏では早くも「無計画停電」などと囁かれているが、それはともかく、東京電力が宣伝するほど首都圏で、そして日本で電力は不足しているのか。

 筆者の手元にひとつのデータがある。柏崎刈羽原発の被災によって電力危機が起きた2007年、電気事業法106条3項の規定に基づき、経済産業省が電力の需給状況に関する資料提出を東京電力に求めたことがあるが、その報告によれば、東京電力管内の最大電力需要は6,430万キロワット(東京の最高気温が38度だった2001年7月24日の電力使用量)。これに対し、柏崎刈羽原発停止後も東京電力は6,254万キロワットの発電能力を維持していた。

 今回の東日本大震災により、東京電力の電気供給能力は3,350万キロワット(3月17日現在)と報道されている。事実であれば、先に示した東京電力管内の最大電力需要に対し、3000万キロワット余り不足することになる。需要の約半分しか電力をまかなえないわけで、この数字だけを見ると大変な事態が進行しているように思われる。

しかし別のデータもある。資源エネルギー庁が発表した「平成22年度の電力需給の見通し」によれば、全国電力10社合計で需要は最大でも1億6,965万キロワットであるのに対し、供給力は1億9,414万キロワット。「供給予備力」がさらに2,449万キロワットもある。需要との差は4,898万キロワットであり、首都圏での不足(供給力減少)を補って余りある。全国レベルでは電力は不足などしていないのだ。

●「計画停電」は電力失政のツケであり国民への脅しだ

 それでは、首都圏での電力不足はいかなる理由で引き起こされているのか。その大きな理由のひとつに周波数問題がある。周波数とは交流電気方式において、1秒間における電気振動の回数を示す数値である。たとえば60ヘルツの場合、1秒間に電気振動が60回であることを示す。

 日本の電力草創期、静岡県の富士川を境に東側はドイツの技術支援により50ヘルツ方式を採用する一方、西側は米国の技術支援により60ヘルツを採用。その後の電力の発展は東西別々となった。戦後の復興時が周波数統一の最初で最後のチャンスといわれたが、電力業界が目先の利益にとらわれて復興を優先したため、この唯一のチャンスを失い、周波数を統一しないまま現在に至ってしまったのである。

 電力10社のうち、周波数50ヘルツは北海道、東北、東京の3社のみ。残る7社(中部、関西、北陸、中国、四国、九州、沖縄の各電力会社)はすべて60ヘルツという状況の中で、東日本大震災では東北電力と東京電力管内に被害が集中した。中部以西7社からは、周波数を変換しない限り東北電力・東京電力の2社管内に給電できない…。

 首都圏での計画停電騒ぎは、こうして引き起こされたのである。電力は不足しているのではなく、単に偏在しているに過ぎず、その偏在は周波数統一を怠るという電力業界の怠慢が原因だ。

 政府と電力業界は、そうした怠慢、そしてそれを見逃してきた電力失政のツケを、「計画停電」によって国民に押しつけて危機を乗り切ろうとしている。そして、「計画停電」の背後からは、さらに醜悪な政府と電力業界の囁きが聞こえてくるのだ。「ほらご覧なさい。国民の皆さん、やっぱり私たちの言ったとおりでしょう。我が国には電力が足りません。だから、たとえどんな状況になっても原子力発電は必要なんです」と。

●いますぐ政府と業界の嘘を暴き、電力の改革を

 最後にもう一度まとめておこう。日本全国で見た場合、電力の供給能力は「供給予備力」も含めて2億1,863万キロワット。東日本大震災による供給力減少分3000万キロワットを差し引いたとしても1億8,863万キロワットであるのに対し、需要は最大でも1億6,965万キロワット。電力不足は嘘である。

 政府と電力業界は、こうした事実を隠したまま、破壊された原発の「再建」と新たな原発の建設を持ち出してくるだろう。だが今回、日本国民が経験した「フクシマ」はあのスリーマイル島事故をも越え、史上最悪といわれたチェルノブイリ事故に匹敵する規模になりつつある。もう原発は日本、いや地球上のどこにも要らない。

 偏在する電力を有効に活用するため、東西をつなぐ周波数変換設備の建設を進めるなどの改革を行うことが必要だ。電力の効率的利用のためには、電力10社体制を見直し、全国1社への統合や国有化も視野に入れなければならないだろう。原発推進派の「脱原発は非現実的」などという宣伝に乗せられることなく、業界改革を断行して、国民本位の電力への転換を進めなければならない。

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