また終戦記念日がやってきた。今年は新聞もテレビも戦争回想の番組や記事が多いような気がする。しかもどれも戦争の悲惨を告発している。これも安倍内閣の安保法制論議のせいだろうか。この法案はだんだん廃案に追い詰められるような気がする。
鎌倉在住の作家、長嶋公栄氏が最近発表した小説作品はまさに敗戦時日本を回想し、痛恨の思いを後世に伝える記録文学だと思う。
題名は『国家売春命令の足跡』と言うが、戦争によって生活を追い詰められたうら若い女性が、切羽詰まった金策のために、戦後政府が進めた駐留軍向けの売春政策に応募し、いわゆるパンパンになっていく物語である。
国家売春命令とあるように、駐留軍向け慰安所設置は、獣欲に飢えた戦場帰りの米兵から、善良な日本婦女子を守る防波堤として、内閣の決定によって作られたものである。
この作品は単に一子女の身の上話以上に、こうした日本の戦後政治の裏面が詳しく描写されており、まさに敗戦日本のあわれにして屈辱的現実が描かれている。
この作品は戦後日本の裏面史を記録するものとして貴重であり、同時に女性という性ののもつ特有の悲しさがつづられている。
敗戦記念日にあたり、一読する価値のある作品である。
長嶋公栄氏は、鎌倉市会議員長嶋竜弘氏の御母堂である。長年創作活動を続けてこられ沢山の作品を発表されてきている。今回の作品が広く世に読まれ、氏の文名が上がることを願っている。
夾竹桃咲き誇る真昼の空の彼方
痛みに沈む逝きし時の思いに