鎌倉評論 (平井 嵩のページ)

市民の目から世界と日本と地域を見つめる

鎌倉評論49号用論説    現代世界の潮流を読む

2016-10-18 16:45:39 | 日記

「鎌倉評論」49号用の論説を書いたのでアップする。新聞は11月末に発行予定。   


現代世界を荒らす3匹の悪党

     

意外に単純な国際政治混乱の原因

現代世界は不穏の度を強めている。中東のいつ果てるともない戦争、頻発する爆弾テロ、アフリカ崩壊国家、ヨーロッパへ押しかける難民、中国の侵略的態度、北朝鮮の原爆、アメリカの人種対立や乱射事件など、うかうか旅行もできない時代となっている。だがこれら騒乱はよくみると三匹の悪党が作りだしていることが分かる。複雑そうに見えて世界政治は意外に単純な構図であることを今回は解いてみたい。

 まず相手を悪党呼ばわりするのだから、こちらは正義の陣営であるという確信がなければならない。わが陣営の義とは、自由主義、個人主義(人権主義)、平等主義、政治的には民主主義、経済的には資本主義などの思想である。これらは必ずしも十分機能しているとは言えず、しかも貧富の格差、自然破壊が生じ、われわれ自身が悪党と化しているということもいえる。しかし今回はそれはさておく。

さてその3匹の悪党とは、1)イスラム原理主義、2)マルクスレーニン主義(スターリニズム)、3)排他的ナショナリズム、の三匹である。

1、イスラム原理主義 現世否定主義

 宗教を非難したくないがイスラム教はなぜか頑迷な一神教である。イスラムとは「すべてを預ける」という意味で、人間的自由も迷いも存在意義もすべてアラーの神に預け、人間はただ神の言葉(コーランやシャリーヤ)に従って生きる。どの宗教にも戒律というものはあるが仏教でもキリスト教でも坊さんだけがそれに従うのに、イスラム教ではすべての信者が戒律を守らねばならない。日本人は天台本格思想に見るように宗教的自由主義者で、イスラム的精神からもっとも遠い。日本に信者がいないわけである。

 イスラムには六信という信者になる条件があり、その一つは「天国」を信じることだ。死ねば天国に行けると信じること。とくにジハード(聖戦)で死ねば必ず天国に行ける。天国にはいくら飲んでも酔わない美酒ときれいな乙女が待っている。貧しく現世に悲観した純情な若者や寡婦が、この天国を信じて自爆していく。このような宗教幻想を餌にして若者を爆弾に仕立てる宗教は赦せない。

もう一つイスラムには「天命」という信者の信ずべき条件がある。この世の出来事や自分の運命はすべてアラーの神のしからしむるもので、人間には責任がないという考えだ。これは人間をして現世に無責任にさせる。イスラム原理主義(IS)がなぜ残酷で、反倫理的か考えると、彼らにとって現世などどうでもよいのであり、滅茶苦茶にぶち壊して、ただアラーの命じる世の中にすればいいのだ。ほんとの生活は天国に行ってから始まると考える。十字軍でアラブを蹂躙し、植民地化で自分たちを侮辱し、快楽と低俗に溺れる資本主義、その総本山たるアメリカ、ヨーロッパその他属国どもは不倶戴天の敵であり、奴らの掲げる自由主義だの民主主義だの人権主義だのクソにも値しない、人間に必要なことはアラーの言葉(コーラン)に従うことだけだ、と思っているのだ。

 イスラム教は最初からきわめて政治主義的宗教であった。教祖ムハンマドは7世紀アラビア半島の混迷する政治状況を嘆いてイスラム教を始めた。それは地上の王によって統合するのではなく、天上の神を王と仰ぎ、神の下に統合するというものだ。その考えはアラブ人に適していたとみえ、アラブ人はアラーの下に団結し、それまでの部族対立をやめ、たちまちイスラム宗教帝国を築きあげた。東ローマ帝国を潰し、イベリア半島まで占領する始末だ。天国とジハードを信じた彼らは勇敢な戦士になったとみえる。現代のISがイスラム帝国を築くと言っているのは、イスラム教の本来的性格からきている。

 この宗教では、近代化で自分が弱体化する中、西洋のように脱宗教化するという動きではなく、なぜか原理主義に戻ろうという動きが強かった。この宗教はそれほど人間に魅力的なのかもしれない。なぜ現代急に極端な原理主義が出現したのか。そこにはアメリカの横暴や西洋への恨みがあったのかもしれない。

2、マルクスレーニン主義(スターリニズム)

 権力闘争の中から生まれた暴力主義独裁政治

ロシア共産主義革命は20世紀における人類の壮大な夢の実験であり、大失敗に終わったにも拘わらず、その夢の残骸ともいえる中国や北鮮にその政治態勢を残している。共産主義革命は資本主義の発達した先進国に起こるかと思いきや後進の専制国家ロシアに起こった。革命後労働者たちは、王政の不平等をやめて平等な民主主義を目ざしたことは当然だった。ところが、人間の悲しいいところで、労働者たちは権力闘争に血道をあげ、政府権力は安定しなかった。スターリン、トロツキー、ブハーリンといった連中が争った。スターリンはそこで権力を握るや、マルクスレーニン主義と称する労働者独裁(ボルシェヴィズム)をとなえ、「民主集中制」なる虚偽的手法によって独裁制を確立した。このスターリニズムこそ共産主義を虚偽と冷酷と教条主義に仕立て上げたものだった。これは資本主義分子を一掃するための一時的独裁として始めたものだったが常態化してしまった。スターリンは「粛清」と称して政敵を容赦なく殺し、罪なき国民をおおぜい流刑地送りにした。先般、化石共産国家北朝鮮で粛清という処刑のニュースがあったが、懐かしいというか、そのおぞましさに呆れるものがあった。

ロシアの気づきは人類の救いだった

 ロシアは革命先進国として、コミンテルンという世界の共産主義運動の司令塔でもあった。スターリニズムは自然世界中の共産主義の手法にもなった。このスターリニズムの共産主義はレーガン大統領をして悪の帝国と言わしめたほど、党幹部の独裁主義、タテマエ(理論)とホンネ(現実)がまるで違う虚偽的体質をつくり、その虚偽を守るための教条主義(タテマエ主義)、秘密主義、閉鎖主義、抑圧恐怖主義、言論弾圧、密告主義など、およそ人類の創った政治体制としては最悪最低のものになってしまった。こんな政治で共産主義の夢が実現するわけはないし、経済が発展するわけもなかった。ロシア人がやっとそれに気づき、反省し、共産主義体制をみずから捨てたのは人類の救いだったといえる。

アジアに残る奇形スターリニズム 中国

ところが現在もなおスターリニズムはいびつな形をして中国と北朝鮮に残っている。中国は毛沢東まで共産主義をとったが、登小平のとき経済政策だけ資本主義に転換した。中国人は聡明だし、富に飢えていた。わずか30年ほどで世界第2位の経済大国に成りあがった。日本の戦後復興が奇跡と言われた以上に奇跡的である。ところが、政治体制だけは共産党一党独裁という旧来のままで、タテマエは共産主義である。したがってスターリニズムは生きており悪の体質もそのままである。強圧的国民管理体制、不透明な政治体質、言論統制、官僚主義とその汚職、こう言った悪は昔の共産国ロシアと同じである。

中国はそれでも経済は自由化したため滅茶苦茶なことはできなくなった。資本主義的合理主義が働くからだ。毛沢東の頃は大躍進政策とか文化大革命といった、独裁者の意向を実現するためなら社会の合理性を考えずに滅茶苦茶なことをした。それが共産主義独裁国のやり方なのだ。

 しかし中国政治はまだその共産党独裁のスターリニズムのやり方を残している。うそつき体質、秘密主義、言論弾圧などで人民を苦しめているが、指導者が民主主義にしないのは、共産党の指導者つまり一握りの官僚が汚職などそのうまみを手放したくないからに違いない。中国は政治を民主化しなければ、世界にとってますます危険な国になっていくだろう。

化石的スターリニズム国家 北朝鮮

北朝鮮は人民を飢えさせ、奴隷状態におきながら、いまだ共産主義建設に向かっているそうだ。その虚偽政治は虚偽をとおり越して吐き気がするほどのウソで固まった政治だ。彼らにも選挙や議会があり、その国名も民主主義人民共和国である。しかしその実態は王朝化した独裁者と一握りの支配層が国民を奴隷化した政治である。国民の情報疎外(情報統制)、政治犯収容所、人権無視、国民の奴隷化など、かつてのソヴィエトロシアや東ドイツの政治そのままを行っている。それはスターリニズムが王朝的に歪んだ独裁国家である。国民の困窮をよそに原爆をつくったり軍事に熱中するのは、共産国特有の独裁者の合理性無視の考えによるのだ。

これに対しわが陣営は経済圧力をかけようとしているが、中国が協力しないため効果がでないといわれる。ここでスターリニズム政治を残した中国に騙されてはならない。中国が協力して圧力をかけることは決してないのだ。なぜなら、北鮮がなくなれば、中国自身が民主化を迫られるからだ。中国は、韓国と国境を接するようになるのが嫌だからといわれているが、それ以上に彼ら自身の共産党独裁がなくなる恐れがあるのだ。中国にとって北鮮の存在維持は何より大事な政策なのだ。北鮮は今の体制を残すことが目的だといわれるが、彼らの経済が決して良くならないことを考えると、いずれゆすりたかりの外交を始める。日本の識者がこのことに言わないのは不思議だ。

3、排他的民族主義 頭をもたげる危険な相貌

 現代世界に不気味な気配をもたらしているのは、民族主義の台頭である。民族主義にも健全なものと不健全なものがある。自己民族を誇りに思うのは自然で健全なものだが、これが他民族からの優越を主張し、他を侮辱したりけなしたりする民族主義になると不健全かつ有害である。20世紀前半はこの不健全な民族主義思想が世界を席捲し、やれゲルマン民族至上だ、大和民族は神の国だ、などと云い合い、戦争に血道をあげた。その愚かさへの反省から戦後は民族主義は禁句になり、民族主義的言動は極力抑えられるようになった。

 ヨーロッパ共同体(EU)の試みは、現代世界に民族主義や国家主義を乗り越える夢を与えた。これが成功すれば人類積年の民族対立や国家主義が解消され、世界は一つ、人類はみな兄弟の夢が実現していくのではないかと期待させた。

 ところが、ここにきてヨーロッパに難民がなだれ込んだ影響で排他的民族主義が台頭してきた。イギリスがEUを離脱したのも難民や移民に嫌気がさしたからだ。

 日本人はイギリス人やヨーロッパ人の難民へのいや気が分からない。日本ほど難民移民を拒否している国はないからだ。その点日本がもっとも排他的民族主義なのだ。島国日本の民族主義は一旦何かあると強烈に噴きだす恐れがあるものだ。

 アメリカでは白黒の人種対立が貧富の対立と重なってはげしくなっている。トランプ大統領候補は国内の人種対立を象徴しているようだ。アメリカは移民国家で、人類の民族融和を実現しようとしている。近代的価値観を先導し、何をおいても日本の親分であり指導者だ。そのアメリカにも国内分裂するような人種対立が起きようとしているのは危険な兆候である。

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格差はつくられる (非人道国家アメリカ)
2016-10-21 02:22:50
人種対立を煽りながら、本質から目を逸らさせようとする大資産家(1%大富豪)と、彼らから賄賂で買われている政治家たち。

世界の問題の本質は「強欲・権力」と「格差」。

そのトップを走りながら富裕層による強欲のままに政治が行われているアメリカ。

レーガン政権中に行われたこと
■企業オーナー(富裕層)を優遇し、労働組合を弱体化、また潰した
■所得税減税政策により富裕層が益々金持ちとなった
■個人投資家と企業に減税恩恵がある減税制度を作り、投資を行わない中低所得者が貧困となる格差社会へ移行
■社会保障削減。医療給付費削除と民間企業への移行
(その結果、民間医療保険会社と医療機関(病院グループ)による市場独占、、価格カルテルによるぼったくり治療費、富裕層による投資により更に価格高騰、莫大な医療費負担が米国民にもたらされた。国民の破産原因の第一位は医療費)
■庶民の命綱である年金制度を企業年金負担に移行しながら公的年金の支給開始年齢の引上げを実施。また貧困者援助計画が廃止縮小された
(労働組合が潰れ企業年金が受給できず、年金受給年齢が上がったため格差が広がり、さらにインフレによって庶民の貧困は広がった)
■軍事費の拡大(国民の税金はこちらに振り向けられた)
■規制緩和によって政府規制緩和作業部会(議長:ブッシュ副大統領)を作り、自動車関係環境・安全規制の緩和、鉄鋼業の大気汚染規制緩和、放送事業の認可等に関する緩和、金利自由化、預金の許可等銀行業務拡大、航空運輸業の規制を担当する政府機関(CAB)を廃止。
環境汚染と超資本主義国家へ。規制緩和の結果、合理化が徹底的に行われ規制緩和された産業では例外無く労働者の首切りで総失業者は1,100万人、賃金引下げ、低賃金維持のための非組合員の雇用の拡大。そして寡占体質の再編成。市場モノポリー化が進み、金融引締め計画による中小企業の廃業また統合され、大企業が市場を独占し価格カルテルを推し進めた(富裕層による独占化)

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