鎌倉評論 (平井 嵩のページ)

市民の目から世界と日本と地域を見つめる

2017年    国家エゴイズムと闘争の時代の始まりか

2017-01-07 12:21:40 | 日記

謹賀新年

 

 トランプがアメリカの大統領になったというので世界の精神状態が突如荒立ってきた。トランプとは何者か。日本のマスコミは正月から是をめぐって騒がしい。当欄も歳の初めにこれについて論じてみたい。

トランプは明らかに大資本家であり、商業者だ。この大カネ持ちがアメリカ白人中間層、--それは今や没落して貧乏に追い詰められた労働者であるがーートランプはこの階級を再び豊かにしてやるとたぶらかし、権力の座を獲得した。

この貧乏白人たちは昔なら無産労働者といわれ、共産主義運動を行い、ロシアでは革命を起こした。自由主義国アメリカでは、社会主義がまったく肌に合わず社会主義を叫ぶわけにもいかない。それでも今度はハに―・サンダ―とかいう社会主義を言う候補が出た。貧乏は白人はこの社会主義者を選ぶべきだったと思う。

ところが彼らはトランプという成功成金、大資本家を救世主として選んでしまった。階級的にはまったく矛盾したことだ。トランプは口では「偉大なアメリカを再び」などとナショナリスティクなことを訴えているが、彼の閣僚の本質は大資本家をさらに金持ちにしてやることだ。格差をさらに広げることになるだろうし、労働者たちへのおこぼれは大したことはならないだろう。

トランプはもはや企業のメキシコ移転をやめろ、などと露骨な保護主義を実行しているが、グローバリズムへのあからさまな反抗である。企業が成長しようとすれば、賃金の安い途上国へ行き物を安く作るのが資本主義の鉄則である。これによって途上国も上昇してきた。それが資本主義のもつ天の配慮、アダムスミスの云う「神の手」のはずだが、それを人為的に阻もうとすると、弊害が出てくる。即ちインフレだ。資本主義で成長をしようとすれば、保護主義ではなく、グローバリズムを進めるしかないのだ。

今日、グローバリズムは貧乏労働者の不満によって、また難民という事情によって、欧州各国が保護主義にならざるを得なくなった結果、寛容の理念を投げ捨てて、エゴイズムになったのだ。

グローバリズムは人類史上昨日今日始まったことではなく、人類史の大潮流であり、やがて人類は一体化していくという方向に向かっての流れで、これを止めることはできないし、止めるべきではない。

グローバリズムはいつの時代でも決して美しい姿をもって行われることはなかった。モンゴルの世界進出、西洋の大航海時代、帝国主義時代など、人類は暴力的闘争によってグローバル化を進めてきた。

現代のグローバリズムは資本主義的商取引という形、また情報通信技術の進化という形で進んでいる。

トランプはTPPには反対し、露骨な保護主義をとり、経済人のくせにグローバリズムを全く理解していない。彼の頭には短期的で性急なエゴイズムしかない。要するに大局を見ないバカであり、さもなくばバカ(素人政治家)を装った二ヒリスト政治家かもしれない。二ヒリストだとはなはだ危険なことになる。

国際的には国家エゴイズムの勃興によって、暴力的争いの気配が高まる。つまり戦争の心配がおきてくる。人類がこれまで進めてきたEUのような国家融合、国連主義という世界政府への歩みがストップし、20世紀的混乱の気が高まる。日本の平和主義や和の精神が危機にさらされるだろう。しかしこうした闘争主義は一時的なものであるはずだ。

日本は近代が達成した民主、人権、平等といった政治理念、大戦の結果掴みとった平和主義を堅持し、それを世界に向かって叫び続けるべきだろう。

    

     今年また門松仰ぎ齢(よわい)知る 空青々なるも晴れぬものあり