犯罪被害者の法哲学

犯罪被害・刑罰・裁判員制度・いじめ・過労死などの問題について、法哲学(主に哲学)の視点から、考えたことを書いて参ります。

「※ただしイケメンに限る」

2009-11-25 20:51:31 | 実存・心理・宗教
ガジェット通信は、「ネット流行語大賞2009」を11月25日12時に発表。その結果、年間大賞金賞は「※ただしイケメンに限る」となり、銀賞は「どうしてこうなった」、銅賞は「裸になって何が悪い」となった。

「※ただしイケメンに限る」は、はてなキーワードによれば「どんな否定的な条件であろうと顔さえよければそれですべてが解決するという事実を表す言葉」と定義されており、アンサイクロペディアによれば「この世の不条理さを凝縮した名言」と解説されている。


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日本国憲法

第11条
 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる。ただしイケメンに限る。

第13条
 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。ただしイケメンに限る。

第14条
 すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。ただしイケメンに限る。

第25条
 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。ただしイケメンに限る。


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近代憲法の出発点は、アメリカの1776年の独立宣言、それを受けた1789年のフランス革命での人権宣言、そして1791年のフランス革命の最初の憲法である。近代憲法は、基本的人権の尊重、国民主権、権力分立、平和主義の保障を基本原理としている。アメリカ独立宣言、フランス革命の中の諸憲法で確認されてきたように、近代憲法の制定は、人民が持つ憲法制定権力の発動としてあらわれる。それを憲法の上に人民主権として定めており、立法権よりも重く、その上位に位置づけている。それを憲法学者は「組織された憲法制定権力」と呼んでいるが、憲法制定権力は人民自身が持つもので、それによって憲法を制定するのである・・・

こんなことばかり言っている憲法学者は、憲法制定権力の担い手であるはずの国民・市民・人民から「※ただしイケメンに限る」とのツッコミを受ければ、どうしようもなくなってしまうものと思います。どんなに自由だ平等だと叫んだところで、現在の日本社会では年間3万人を超える自殺者が生まれ、うつ病などの精神を病む人々が増大しています。そして、現実の世界の不自由、不平等の残酷さは、数十年前の判例の研究に余念がない憲法学者によって語られることはありません。学者の述べる国民・市民・人民というのは、それらの人々とは別の抽象的な集団だからです。

「※ただしイケメンに限る」という言葉は下品で大嫌いですが、下品なものほどイデオロギーの欺瞞を暴き出すという現実は認めざるを得ないところです。

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