はづきちさんのはまりもの

まだあったので日記帳になりました

はやのじ としのせの… (SS番外編)

2008-12-19 23:20:32 | SS 番外編
年度末というものはとにかく忙しいものだ
それはもちろん芸能界も同じ事が言える
どこもかしこも大慌て
師匠も走るで師走というぐらいだし

そんな忙しい季節
俺も打ち合わせのため千速と765プロにいた
いつもと同じで暇そうだとか思わないように

「まあ、私がどれだけ真面目ちゃんかは口なんかじゃ言い表せないからな」
学校での神童ぶりをアピールする千速
クイズ番組に出る自信があるかと聞いて出てきた答えだ
嘘くさいので、とりあえず先日手に入れた物を出す
「そういえば学校からなぜか俺宛にお前の成績表が届いた」
「うむ、それでは文字というはっきりとした伝達手段で
知性の泉が溢れっぱなしの私の頭を確認してみるといい」
少しは取り繕うために慌てると思ったんだが…
どちらかというとおつむのネジが緩みっぱなしのサイドテールを見て思う
「俺はもしかしたらお前はアホなんじゃないかと勘ぐってた」
「その目は節ホールか?こんな知的美人を目の前にして」
自信満々に無い胸を張る千速
「でもこれを見て自分の間違いに気が付いた」
「まあ間違いは誰にでもあるさ、
今後は私が眼鏡をずらす仕草で性的な気分になればいい」
千速の目の前で開いた成績表から飛び込んできたのは
殴り書くような担任の大きな血文字で書かれた
「勘弁してください」という切実な懇願だった
「お前は凄いアホだ」

「音楽と体育以外オール「頑張りましょう」って…」
しかも本来は5段階評価らしいのだが
備考欄に
「人と比べてたら比較対象が全部5になってしまうので一人だけ個人評価です」
と書かれてる
どこまで特別扱いなんだ、このアホの子は
「で、なんで俺のところに成績表が来る?」
「んー…進路希望の紙だしたからかな?」
進路希望とな
なるほど
アイドル活動中(一応)の千速だ
成績の事で所属事務所の担当者に文句が来るのも仕方が無いだろう
「すまなかったな…」
「へっ…なにが?」
謝った相手がソファで寝転びながらポテトチップスとか食べてるんだから
実に誤りがいの無い事この上ないが
忙しいアイドル活動のせいで勉強がおろそかになってしまってるというならば
俺の管理責任でもあると思う
「それに関しちゃ責任とってやるからな」
「マジでか!」
一緒に挟まっていた進路調査の紙を開きながら言うと
目を輝かせてこっちを見る
なんだ?
まあ勉強を見るぐらいなら俺にでも…

             如月千速進路希望調査

1、お嫁さん (プロデューサーの)
2、永久就職 就職先、プロデューサー
3、同棲の乱れた生活(この場合性活が正しいかもしれない)

「あほかぁ!」
思わず紙を放り投げながら叫ぶ
「責任取るって言ったんだから責任取れ!結婚しろ!」
「てめぇ!嘘でもアイドルって書けよ!お前は結婚願望の高い30台女性か!」
「誰も事務員の事なんて言ってねぇ!私の純粋な希望だ!」
言い争いの中
すっと現れる黒い影
そこには
…表情の無い30台事務員の姿が
「…私は二十チョメチョメ才です」
そう言い残し、紙を一枚置いていく小鳥さん
二人で覗き込んでみる

             音無小鳥 進路希望調査

1、お嫁さん(相手はプロデューサーさんでもいいです)
2、お母さん(やよいちゃんみたいな子供が欲しいです、千速ちゃんは勘弁です)
3、お婆さん(縁側で孫のために歌とか歌える幸せな老後です)

「…これは」
「既に進路というよりは人生設計…」
しかも「でも」のあたりに千速よりも真剣みを感じた

「この封筒も…俺宛?」
「うちの担任の先生からだ、なんだろうな?」
こうなるとろくな手紙じゃないと思うのだが…
仕方が無いので読んでみる
「ええっと…確かに千速ちゃんはバカです」
「なんだと!心外な!」
「落ち着け!手紙を読んでいるだけだ!」
しかしまだ心外と言い張るこいつが凄い
ここまでの事で完膚なきバカだという事はばれきってると言うのに
「続きを読むぞ、しかし彼女は愛らしい大事な私の教え子です」
なるほど、さすが教育者だ
生徒を単なるバカで切り捨てなかった
「ですから避妊はきちんと…ぁんだこりゃ!」
「2年待ってね!ハニー!って事か」
「てめぇ!学校で何のたまわってやがる!」
手紙の続きには
愛し合っている以上仕方が無いのかもしれません
ですが千速ちゃんはまだ15歳
せめて結婚できる年齢までは…とか書いてある
「凄い誤解だ!凄い誤認逮捕だ!」
「ぬっぽぬっぽ」
「気の抜けた顔で卑猥な擬音音読してるんじゃねぇ!」
ウーパールーパーみたいな顔でぬっぽ言ってた奴の口を
両端から引っ張るようにして吊り上げた
「いひゃい!いひゃい!」

もう読むのもいやなんだが4枚目がある
というかまた封筒
封書という事はまた長い文章で
児ポ法違反者!とか先物買い野郎とか、青田買いとか、変わり者とか
そんな社会的にまずいレッテルを貼られてしまいそうだ
「まずい…まずいぞ」
「おい、てめー今、人のこと児童扱いしたりしたろ」
「うっさい72以下」
後ろでな、なななななじゅうにちゃうわ!はちじゅうろくあるわ!
とかいう寝言が聞こえたが無視
「おい、この封筒は?」
「あ、それは家の親から」
もうこうなるとどうせこいつの親からも
娘に卑猥な事するなとか
そうするなら正式なお付き合いとか言い出す気だろう
「まったく…俺はプロデューサーだってのに…」
マネージャーも兼ねている765プロの形式では
確かに担当アイドルと仲良い事が一番大事だ
お互いを信頼しあってこそいい仕事が出来るもの
だからといってそれが恋愛感情に繋がるかは別の話
確かに千速とはいいコンビだとは思うが…
そういう関係とはまた違う
ぶつくさ言いながら開いた封筒から出てきたものは

婚姻届

「んあんじゃこりゃぁぁぁ!」
「おっ!さすが母さん、わかってんな」
「わかってんなじゃねぇ!あ、付箋が」
そこにはとても綺麗な字で
「できれば婿に来ていただければ」と

「どこまで進んでんだよ!お前の家では!」
「母さんはお前用のセーター編んでる、息子に着て貰うんだって」
「もう息子!?俺、息子なの!?」
どうやら母親もこいつと同じような考え方の方なようだ
「父さんと弟はお前の事殺すって言ってた」
「なんでぇ!?」
そして父親と弟さんは正常な考え方するようだ
「大事な姉、娘が弄ばれてるんだから仕方ないだろ、男家族としては」
まるで他人事のように言ってくれる
いや、実際にはしてないし、できるはずがないので当然嘘なのだが
「してないじゃん!そんなことして無いじゃん!」
「うちの家族の前ではもう私、ハイライト無くなってるからね」
「なんだそりゃ?」
「レイプ目でブツブツと「私ハプロデューサーノモノナノ…」って繰り返す」
「酷い冤罪だ!痴漢の冤罪よりももっと酷い!」
「私の考えた遊びで身も心もって言う名前でな」
「名前なんて要るかぁ!」
「それをコタツで家族の団欒の時にな」
「タイミングまで最悪だぁ!」
「こうミカンを囲んで」
「おまえ、バカだろ!なぁ?バカだろ!」

全ての手紙…もとい最悪の種を読み終えて
コーヒーを一すすり一休み
ちなみにこのコーヒーは千速が入れてくれたものだ
こいつコーヒーだけは美味しく入れられるんだよな…
「なぁ、お前将来どうするんだ?」
少し先生みたいだけど、人生の先輩としても聞いてみたかった
ちょっと気になっている点ではあったし
「アイドルを続けるにしても学校には行った方がいいしさ」
「うーん…」
腕を組んで考え込む千速
「今の時点では深く悩む必要はないんだけどな
したい事、行きたい場所そんなのでいいんだ」
「じゃあここだ」
サッパリした答え
「お前がいて、歌が歌えて…ここ以上の場所なんて無いよ」
にっこりと笑って
堂々と言い切れる様なら間違いは無いと思う
「そっか…」
千速の頭に手をあてグシグシと撫でる
「第一希望は変わんないけど」
目を細め撫でられ続けてる15歳は
やっぱり千速だったけど












おまけ

「おい…この婚姻届、名前のところの漢字間違ってるぞ」
ふと先ほどの婚姻届に目を通していると
千速の名前の漢字が違っていた
その他にも既に実印が押されてたり、不思議が一杯ワンダーランドなのだが
「母さんめ!自分が結婚するつもりか!」
母親って…え?
「同じ名前なのか?」
「うん、漢字が違うだけ、父さんといつでもラブラブな癖に!」
「お前と同じようなお母さんなのか…」
想像してみる
2秒でギブアップだ
「いんや、どっちかってとおとなしいタイプかな、母さんは」
「まあ、お前だらけじゃ家庭が心配だ」
つい出た本音だが気にしなかったらしい
「母さんも歌が凄く上手いんだ、蒼い鳥なんか母さん一番の十八番!」
「へぇ…」
ちょっと気になったが他人の家庭の事
あまり突っ込んでも失礼だろう
「何時か聞いてみたいもんだな」
移動しながら無難に話を切り上げようとする
「じゃあ蒼い鳥を結婚式の余興で歌ってもらおーぜ」
「はいはい」

「じゃねぇ!」
「照れんな、照れんな!」
「照れてねぇー!」

しかし何時か本当に聞く事があるんだろうか?
親子二代の蒼い鳥を
それはそれで楽しみではあるけれど
そうなった時は俺はその人の義理の息子
つまり…

 

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